18:心臓に悪い夜
「だめだねぇ。奥まで入り過ぎたね。今夜は野宿だね」
「ほんっとうにごめんなさい!」
命に関わる事なので、謝ってすむ事ではないが、謝るしかない。
クーとルーがいるので、道が分からなくても村へ帰る事は問題ない。ただし、山奥へ入り過ぎると帰るのに時間がかかる。
今はもう夕方だ。帰村できるか怪しい。ライトの魔法もある。それでも無理をして怪我をするより、洞窟で夜を明かした方が安全だ。
「気にしなさんな。アタシも、クーとルーに頼り過ぎて油断てしたんだ。優さんの責任ってだけじゃないよ」
クーとルーは張り切って勢子をしてくれたんだ。その分、山奥まで入るのを止められなかった。
冬の始まりとはいえ、冬山は怖い。より確実に帰れる方法をとるのは当たり前だ。
それに、馬達ももう疲れている。休ませてやらないと。
「クー、ルー。途中で崖の下に洞窟があったろ?そこまで案内してくれないかい?」
〘フェンリルママのおうちみたいなところ?〙
〘土の穴のおうち?〙
「そうだよ。お願いできるかい?」
◇
「これなら充分使えるね。今日はここで休んで、明日、明るくなってから帰るとしよう」
「はい」
「おう」
横になれる広さはないが、座って寝るなら、四人と二匹が暖を取りながら過ごす充分な広さがある。
みんな石を避けたり、寝る準備を手早く済ませる。
私は無限収納に使えそうな物がないか探って、湯たんぽ、毛布、チェアクッションを取り出す。もちろん、食料もだ。
「なんの野営準備もなく山に入って、これだけ揃ってりゃ充分だね」
「食料は旅の備蓄を入れたままにしてて、助かりました」
「ああ、本当にありがたい」
クーとルーの、ご飯の肉も入ってて助かった。
朝日が登ったら帰村するため、ご飯が終わったらすぐに寝る。
洞窟の入り口は結界を張ってあるし、クーとルーがいるのでみんな眠りに就く。
◇
うーん。寝付けない。さすがに座ったままでは寝られない。
冒険者三人は良くある事で慣れているのか、良く眠っている。
ごろりと体勢を変えて、何とか眠ろうとする。
「師匠、寝れない?」
小さな声で、ユリシーズさんの声がかかる。
「起こした?ごめんね。
座って寝るのは慣れてなくて……」
「普通は慣れてない寝方だからな」
ユリシーズさんに手招きされたので、少し近づく。
「大声出すなよ」
はて?何する……っ。
立ち上がったユリシーズさんに抱き上げられ、今度は座るとマントの中へ抱き込まれてしまっていた。いや、さすがに叫ぶかと思ったわ!
「岩肌にしろ土の洞窟にしろ、冷えるから。温まると寝やすい」
そんな事を言いながらマントから出ている足にショールをかけ、湯たんぽを渡し、マントの上から毛布を羽織って寝る準備をすませると、ユリシーズさんはそのまま寝てしまった。
驚いて緊張していたが、ユリシーズさんは寝ている。
そのうち体も温まり、ゆっくり瞼が下りてしまっても仕方ないと思う。
朝起きると、もう起きていたアカザさんとアカギさんにあわあわしてしまった。
だが、「ユリシーズはちゃんと、新人が寝れない時にする、奥の手の寝かし方を覚えていたようだね」の一言で終わった。
あれこれ言わなくて済んで助かったー。ふいー。
みんなの無限収納に入っていたお弁当を食べて朝ご飯を済ませ、私達は村へ帰った。
大きな猪二頭と鹿一頭、鳥類三羽の収穫は、村人に大変喜ばれたよ。
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