17:初雪
「わあ!優さま、雪だよ!」
御者台のカールくんが、嬉しそうな声を上げる。
お昼の下拵えのためキャンピングカーの中にいたのだが、窓から外を覗いてみる。
「本当だ、初雪だね!」
「冷える訳だ……」
私達はキナーラさん家族に別れを告げ、先へと進んだ。
海から離れ過ぎていない内陸の、冬でも過ごしやすくて住み心地の良い土地を探しているんだ。
キャンピングカーを止めてもらい、お湯をたくさん用意する。
お茶もするけど、目的はそれじゃない。
「湯たんぽ凄い!あったかーい。
優さま、ありがとう!」
「高価な、こんな大きな温かい加工のショールまで……。本当にありがとう」
「吹き曝しの馬上で座りっぱなしじゃ、体が冷える一方ですからね。
お湯が温くなったら、遠慮なく言って下さい。熱いのと替えます。
ショールは首にしっかり巻いて、肩にも広げて下さいね。首を温めるだけでも、体が温まります」
カールくんに、日本で買ったダウンベストを着せる。上からコートを着せ、ショールを巻いてあげて、手袋も着ける。
「どう?寒くない?」
「うん!あったかーい!」
カールくんは、嬉しそうにはしゃいでいる。
ショールや湯たんぽは、ダカルヤナさんの商会で見つけて買った物だ。用意しておいて良かった。
「それ、カールに着せたら師匠はどうすんの?」
「ほぼキャンピングカーの中にいるからほとんど着る機会もないし、ダウンベストは御者台に乗る人が着る事にするんだ」
一番年少のカールくんが、ダウンベストを着られるようにする方便だ。私は暑がりで、ちょっと動けば汗かくくらいすぐに体も温まる体質だし、なくても困らない。
お昼休憩の時、カールくんはとっても温かかったと、とても喜んでくれた。
◇
「ああ、この村。雰囲気が良くていいな」
「そうかい?良くある村だが、優さんが好きなら良いか」
初雪の降った日の、夕方も近くなった頃に着いた小さな村。
どこか懐かしさを感じさせるこの村を気に入り、村長さんに空き家を紹介して頂いて居を構えた。
玄関入った、正面奥にある窓。そこから見える風景が、祖父母の暮らしていた田舎を思わせる景色なんだ。なるほど。
その窓の前は、お気に入りの特等席となった。
◇
翌日、みんなで家とキャンピングカーの入念な掃除を終え、挨拶回りに持って行く料理を作った。
挨拶回りの文化がないのでとても驚かれたが、豚肉をたっぷり入れた豚汁、だし巻き玉子、タオルはとても喜ばれた。
で。村に住むにあたり、お願いをされた。害獣駆除だ。この地方も、春になかなか暖かくならなかったらしい。だが、害獣駆除が必要なほど、猪や鹿などが増えて困っているそうだ。
BランクパーティーとCランク冒険者を遊ばせておくのももったいないので、お引き受けした。
◇
「じゃあ行こうかね。ユリシーズ、優さんをきっちり守っとくれ」
「分かってる」
「すみません。宜しくお願いします」
アカザさん、アカギさん、ユリシーズさんに私と、クーとルーで偵察に山に入るのだ。
〘山〜?森みたいに生き物がいる?〙
〘いっぱい狩りする〜〙
とまあ、やっと拾った時の二倍くらいの体重にまで成長した二匹の運動欲求が凄いのだ。
散歩の時に山へ入ってしまうなら、いっそ一緒に行動した方が楽だという事になった。
ま、日帰りだしね。他の三人の足手まといにならないようにしようと思う。
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