14:ヤーン商会
賊に襲われていたダカルヤナさんのお嬢さん、キラーナさんを助けたところ。お父さんで商人であるダカルヤナさんの、ヤーン商会へお邪魔しているのだが……。
「宝の山!」
日本酒!みりん!酢!ポン酢!上新粉!白玉粉!
以上の物が、鎮座ましましている!
「いかがですか?
この粉類は、今回初めて取り扱います。『ワガシ』なるお菓子が作れると聞き及び、仕入れた物です」
「はい!日本と同じ種類のお米を見た事がないので、日本酒や酢などはないのだと思ってました。
日本酒三種類、買い占めても良いですか?」
三分の二はお父さんに送ろう。他のも送ろう。ふふふ、驚くかな?
「日本酒三種類、全部ですか?!」
ははは、さすがに驚いているね。
「日本酒はそのまま呑みますし、料理にも使いますから。沢山あっても、すぐなくなります」
個人的には冷酒をソルティードッグみたいにして呑むのが、一番呑みやすくて好きだ。おちょこの縁をレモン汁で少し湿らせ、そこに粗塩つけて冷酒を注ぎ入れ、後はレモン汁を好みで入れるだけの簡単レシピだ。
日本酒のカミカゼも好きだな。ウォッカのカミカゼはさすがにアルコールがキツくて、一度呑んでからはもう呑まなくなった。
長兄には「まだ子どもには、熱燗の旨さは分からないか」と言われたものだが、あの独特の匂いが馴染めないんだよなあ。
あ、ちなみに銃に詳しいのは、この長兄の影響だ。長兄はサバゲーを趣味としている。
「ほうほう。では、こちらの『麦焼酎』などはどうでしょう?」
う。芋はまったくダメだけど、麦焼酎はたまにちょっと飲むくらいだな。
「こちらは日本の産地なら、様々な使い方があるかも知れません。ただ、私は呑む以外は知らないです。
父に、二ダースくらい送るかな」
ちなみに焼酎は、次兄がビールの後に好んで呑むお酒だった。
◇
「はー、良い買い物ができました。ありがとうございました」
「こちらこそ、沢山お買い上げ頂きましてありがとうございます。
娘を助けて下さったお礼に、わずかばかりですがお安くいたしております」
「お安くして頂いて、こちらこそありがとうございます。
父に送る荷物の護衛の手配までして頂いて、恐縮です」
お父さんに届けてもらうのは、日本酒が三種類で合計十四樽。麦焼酎二ダース。溜まりしょう油、ポン酢など、かなりの量になっている。
そして日本酒などが入荷したら、お父さんに連絡して下さるようにお願いした。ここでしか入手できないからね。
削る前の鰹節の種類で、荒節なんかも仕入れのお願いができたのがとても有難い。
「はい、腕利きに依頼して、必ずお届けしますよ」
「宜しくお願いします」
どうか人も荷物も無事に届きますように。南無南無。
◇
「こちらが上新粉で作った和菓子、みたらし団子。で、こちらは白玉粉で作ったみたらし団子。
使う粉で食感が変わるので、食感の違いを堪能なさって下さい」
買い物なんかが終わると、キナーラさんに町を案内させましょうと言って下さったけどね。上新粉と白玉粉が手に入ったのだ。大好きなみたらし団子を作る事にした。
ダカルヤナさん、キナーラさん父娘がお菓子にもキャンピングカーにも興味津々なので、お招きして試食会となった。もちろん、ダカルヤナさんの奥さんもね!
「むむ!ほんのり甘い甘じょっぱいタレが美味い!」
「不思議な食感が、とても面白いお菓子ですね」
「同じお菓子なのに、本当に使った粉で柔らかさが違うなんて」
「団子なんかは『もちもち』と、食感を表現します」
「『モチモチ』とは、何とも可愛い表現ですね」
可愛いかどうかは分からないが、もちもちだ。
「タレの他に、きな粉や黒糖をつけて楽しんだりもします。人によっては、蜂蜜をつけるのも好まれると思いますよ」
ユリシーズさんやアカザさん達は外のテーブルで食べているが、美味しい美味しいって声が聞こえて来ている。
みたらし団子は、この国でも受け入れられそうだ。色んなバージョンが出ると良いなあ。
◇
「食べていらっしゃる間に『魚しゃぶ』を準備しますね」
テーブルに携帯コンロをセットし、特注した土鍋を火にかける。
昆布だしは最近いつも無限収納に入れてあるので、それを鍋に張る。
外のテーブルにも、同じ用意をする。
煮切った日本酒を、たっぷり入れるのも忘れてはいない。
ネギが手に入ったので、具は白髪ネギだけとかなりシンプルだが、野菜がどれも美味しい世界なので問題ないだろう。
あっても白菜とかの出汁が薄まる野菜は、鍋によっては入れない派だから。個人的には、白髪ネギだけでちょうど良い。
タレはポン酢、生姜しょう油にしてみた。
しょうがが必要なほど生臭いとは思えないが、こちらの人達にはその方が食べやすいかも知れないし。
「!これはっ」
「生臭さがなくて食べやすいわ」
「それに焼いた魚みたいに、ぱさぱさしてなくて美味しい!」
「日本酒が入っているから出る味です。こっちは切り身を、昆布だしでしゃぶしゃぶしただけの物です。食べ比べてみますか?」
「うっ。昆布だしだけの物はダメですね」
「そうでしょう?魚もですが、肉料理にも煮込み料理にもタレにも日本酒を使うので、本当になくなるのは早いです」
「それに、呑みますからね」
ダカルヤナさんは、冷酒のグラスを掲げておどけてみせる。
「呑みますからね」
私もグラスを掲げる。
こうして締めの雑炊まで食べる、和食っていう和食の晩ご飯をみんなで楽しんだ。
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