13:エアS&W M500
しばらく滞在したブル・マーリンを後にして、次の町を目指して海沿いの道をキャンピングカーさくら号は進んでいた。
のだが――……。
王都はもとより旧王都からも離れているからか、本当に治安が悪い事を実感。
つまり、またもや賊と遭遇だ。少し先で隊商が襲われている。
はあ。あんまり使いたくなかったなあ……。
「エアS&W M500」
小声で空気製の銃を作る呪文を唱え、銃を構える。構えるといっても、銃身も弾も全部が空気だ。目には見えない。
隊商の護衛さんが戦っているが、賊が良い装備らしく、刃は通っていないし、軽くあしらわれている。
女の子が連れ去られるのを、みすみす見過ごす心算もない。
襲われている隊商まで距離もあって、鞭でもとてもじゃないが攻撃が届かないとなるとな。
「師匠?」
◇
「う"ーっ、反動がエッグ」
御者台に座っていたそのままで三発発砲したので体が後ろに飛び、三回御者台にぶつかったのも痛い。それ以上に、ちゃんとした姿勢で発砲できなかったので、肘への反動がいつもよりエグい事になってしまった。
「あんたなあ!人を心配させないように行動できないのかよ!?」
アカザさんのパーティーメンバーのヒーラー、リラさんのヒーリングを受けていると、逃げ出した賊の追跡から戻って来たユリシーズさんの雷が落ちた。
旅に出てしばらくしてから、雷を落とすのはユリシーズさんの役となっている。
「それについてはごめん。
ただ、あっちのベッドルームにいる女の子が怖がるから、声は抑えて」
荷馬車が壊れて休む事もできないので、キャンピングカーで近くの町から衛兵さん達が到着するまで休んでもらっているのだ。
ユリシーズさんは一度大きく息を吸って吐き出すと、それで怒気を収めた。
「……、怪我は?」
「リラさんのヒーリングで、もうあらかた癒えたよ」
そうかと、頭をぽんぽん撫でられる。
「あの見えない武器?魔法?は、何だ?」
「私も聞きたい。私にもできるなら、戦闘が楽になるから」
リラさんも戦えるヒーラーとはいえ、魔法使いには及ばないもんね。気になったか。
「魔法で、雷の槍があるでしょ?あれを参考に風魔法で弾を作って、狙いが定めやすい機能を付けた、風の創造魔法だよ」
「創造魔法……」
「創造魔法かあ。ザンネン。それは真似できないわ」
何でも創造魔法は固有能力に分類されるらしく、他の人が真似る事はほとんど不可能なのだそうだ。
それを聞いて、何となくほっとした。
◇
「娘をお助け頂き、本当にありがとうございました。
どうか当家にお寄り下さい」
町に着き、聴き取りが終わると商人の娘さんのお父さん、ダカルヤナさんが外で待ち構えていた。
「当たり前の事をしただけですから、お気になさらず」
「お噂でお聞きしております通りのお方のようですな。
オオシロ方伯さまには貴族の義務であっても、私には可愛い娘を助けて下さった恩人!お礼をさせて頂けなければ気がすみません」
ここにも私の事は広がっているのか。
有名になるのも問題があるなあ。
「私をご存知でしたか。
もう本当に、貴族の義務と流して下さるのが一番有難いです」
「実は、当商会は海の向こうの大陸と、わずかですが交易がありましてね。
先日、その交易の船が着いたばかり。そのため、今はニホンショクに使う珍しい調味料や食材が豊富に揃っております。
ご覧になられませんか?」
はい、行きます!そりゃ行くよ!
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
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