11:パールより情報に価値あり
「…………ん」
「師匠? 気が付いた?」
〘優〙
ぺろっ、ぺろっ。
〘優〙
べろっ、べろっ。
「クー、ルー、ほっぺた取れる。ユリシーズさん、えーっと?」
体を起こそうとするが起き上がれず、ぼーっとする頭を回転させる。
「魔力切れ起こしたんだよ」
……いるかを助けるのに海嘯を連発して、くらっとしたのが魔力切れか。
「あ、ごめん。ここまで海から運んでくれたんだ? 重かったでしょ?
ありがとう」
焚火が焚かれ、体にタオルもかけられている。
「焚火とタオルもありがとう」
「いや、別に」
ユリシーズさんが温かな飲み物を入れると体を起こして支え、カップも支えて飲ませてくれる。
「甘くて美味しい」
体が温まり、ほっと一息つく。
うーん、困った。こんな調子じゃキャンピングカーまで戻れないな。
「女性人魚が、あの岩場で待ってるって」
キャンピングカーの前に岩場か。海に落ちそうで怖いな。
◇
「ユリシーズさん! 自分で歩く!」
「魔力切れ起こすと、半日はくらくらする。そんな人間を、岩場なんか歩かせるわけないだろ」
じゃ、せめておんぶっ。いわゆるお姫さま抱っこは恥ずかし過ぎるっ。
「ほら、着いた」
海に目をやると、女性人魚と男性人魚といるかが、泳いでこちらに近づいて来るのが目に入った。
「良かった。いるか、元気なんだ」
「人の子さん、さっきはこの子を助けてくれてありがとう」
「ありがとう。弱ってはいるが、怪我もなく無事だよ」
「どういたしまして。お力になれて良かったよ」
◇
「……絵画のエリザベス一世女王とか、マリー・アントワネットとか、写真なら、エリザベス・テイラーが身に付けてるのしか見た事がない……」
女性人魚さんからは長さ三センチ以上はありそうな、とびっきり大きなドロップ型パールがたくさんあしらわれたネックレスを。
男性人魚さんからは、白蝶貝から取れたバロックパールだろうか。長さが五センチはありそうな、とびっきり美しいブルーカラーのパールのブレスレットをお礼にと渡されて当惑なう。
「あの子は、私達人魚の国の大切な友人なの。パールならいくらでもあるから、私達にはありふれた物で申し訳ないのだけど……」
「どうかお礼に受け取って下さい。友を助けて頂いて、お礼もしないなんて非礼はできません」
しばし「パールはちょっと」「いえ、受け取って」とすったもんだの挙げ句、有難くちょうだいする事にした。
人前には出さないよ。いや、出せないが正解だ。
◇
「海底で異変ですか?」
パールよりこちらが重要で大切かもしれないので、何かあるなら教えてもらえたら有難い。
「海岸にたくさんアンバーが打ち上げられてるそうなので、地震とか津波とか大丈夫かなって」
「ああ、地震なら、向こうの大陸で三日前にあったよ」
「私達には陸の様子は詳しく分からないけど、大変みたい」
向こうの大陸で、三日前に地震はすでに起きていたのか……
「この辺は大丈夫、なんだよね?」
「回遊に出ていた友が戻って来たくらいだ。大丈夫だろう」
そっか、これで一安心だな。
「うふふ、人の子の番も仲良しなのね」
「ん?」×2
「だって、抱っこのまま離れないんですもの」
「これは師匠が魔力切れで、一人で歩かせられないからだ」
「降ろしてくれないだけだから」
二人で素で返したら、人魚のお二人に「そ、そうか」と怖がられてしまった。
◇
人魚さん達といるかと分かれ、キャンピングカーへ戻るのだが……
「ユリシーズさん! 町の中では降ろして!」
「自業自得だろ」
「おーろーせ〜ーっ」
「黙れ。目ぇ離したら何するか分かったもんじゃないし、大人しくしてろ」
アカザさんによれば、以前のユリシーズさんに戻りつつあるだけらしい。が、気楽にお願いできる、柔らかい雰囲気の人じゃないから気を使うんだよ。
おんぶは色々嫌だと、断固拒否された。
そういえば、女性人魚さんのチューブトップみたいな露出の多い水着は平気だったな。
私、キャミとハーフパンツで怒られたよね? 何でだー?
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