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捜査開始

 花城レンズ工芸株式会社本社ビル前に、宮下真奈美が到着するとそこではすでに山科警部が待機していた。


「遅くなってすみません。S.S.R.I宮下真奈美、本日より捜査に参加いたします」


 山科は真奈美の顔を見ると、ぶっきらぼうに言った。


「最近では堂々とS.S.R.Iを名乗るようになったんだな。以前は頑なにS.S.R.Iは存在しない、都市伝説だって言ってたくせに」


「あはは、そういえばそうでしたね。でも今回は私、サイキック能力を使う許可を取っていますので、事件解明に向けて全力を尽くします」


「頼りにしてるぜ。じゃあ行くか」


 ふたりは社屋の一階、開けっ広げな発送場から屋内に入り場内を歩き回った。この階にはまったく人気が無い。


「警部、なんだか閑散としていますね。休業中なのかしら」


「いや、社長が死んでからずっとこんな感じらしい。おまけに常務の井土も亡くなったから、腕の立つ職人が誰も居なくなったんだ。この会社ももう危ないかもしれんな」


「社長の花城さんが転落したとき、ここでは三上さんがひとりで作業していたんですよね。二階には松下さん、三階には井土常務と花城専務。屋上には社長ひとり。これが事故ではなく殺人だと仮定するなら、やはり怪しいのは井土さんと花城由紀恵さんということになります」


「それかインビジブルスーツを着た山口だな」


 真奈美にとっては残念ながら、やはりその線は外せないだろう。


「第二の転落死、井土さんのときには金田探偵と共に、花城専務、三上さん、松下さんの三人は二階の事務所に居た・・・」


「完璧なアリバイだな。つまりこっちのケースでも外部犯の可能性を除外するなら、怪しいのは山口肇だ。悔しいが金田の推理がいちばん理にかなっている」


 (どう転んでもその結論は揺るがないのだろうか?何か他にトリックがあるのでは)


「警部、もう反則使っちゃいましょう。残る三人の社員の心を読めば、すぐに事件は解決です」

「うーん、田村さんはあまりいい顔せんだろうがなあ。しかし許可は出ているんだから、やるか」


「はい、早速二階の事務所に行きましょう」


 ふたりは階段で二階に上った。


 二階の事務所では、専務のデスクに座った花城由紀恵と、デスク前に立つ松下真一が真剣な話し合いをしている最中のようであった。真奈美と山科が傍まで来ていることになかなか気づかない。


 (ああ、やはり。腕のいい職人ふたりが亡くなったことで、銀行筋から圧力がかかっているし、資金提供していた企業も手を引きたがっている・・・あ、このふたりは)


 真奈美は山科に小声で囁いた。


「このふたり、えーとつまりそういう関係みたいです」


「ん、男女の仲って意味だな。体の関係があるのか?」


「そんなこと私に聞かないでください。セクハラですよ」


 山科は警察手帳のバッジを見せながら大きな声を掛けた。


「忙しいところ失礼する。県警本部の山科だ、こっちは・・・」


「科学捜査研究所の宮下です」


 花城由紀恵と、松下真一が顔を上げてこちらを見た。由紀恵がうんざりした口調で言った。


「警察の方?ふたりの転落死は事故ということで終わったんじゃないのですか」


「まだだ。少なくとも俺は殺人の線で動いている」


「殺人?じゃあ犯人は?やはり金田先生の言うとおり山口君が・・」


「そこまではまだ断定できない。すまんが捜査にご協力願えるかね」


 由紀恵は小さくため息をついて答えた。


「ええどうぞ。どうせこんな有様ですからね、ご自由にお調べください」


「もうひとりの社員の方、三上さんはどこに居る」


「三上は工場の掃除をするって出かけましたね。工場はこの建物のすぐ裏手です。すぐに戻ってくるでしょう」


「わかった。宮下君、ちょっとこっちに来てくれ」


 そう言って山科は二階入り口あたりに移動する。後をついて来た真奈美に小声で尋ねた。


「何かわかったか?」


「ふたりとも恐ろしく複雑な問題について考えているので思考が読みにくいのですが、おそらくふたりとも犯人ではありません」


「そうか。では、容疑者は残すところ三上・・そして山口だけか」


「ただ事件に関係あるかどうかわかりませんが、このおふたりの話し合いは少々興味深いです。金田さんの供述書にも真奈美さんは井土さんとの結婚にあまり乗り気でないのではと書いてありましたが、どうやら社長もおふたりの関係に気づいてたようで、井土さんとの婚約は解消させて、松下さんと結婚させようと考えておられたみたいです。ああ、これやっぱりちゃんと質問したほうがいいですよね。少なくとも松下さんは井土さんから相当に恨まれたと思いますし」


「うんそうしよう。君の読心術を発揮するには少々雑音が多すぎるのかもしれんからな」


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