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御影探偵事務所

「ええと・・御影さん、ほんとうにお土産ってこれだけなんですか」


 都心部の高級オフィスビルの13階にある御影探偵事務所を訪ねた宮下真奈美が、御影純一から手渡されたスリランカ土産は、ざんばら髪に髭面、そしてぎょろ目の鬼のような木彫りの仮面だった。


「これはアンバランゴダの悪魔祓いの仮面だよ。田村君にはヌアラエリヤ産の紅茶を持って帰ってくれたまえ。おや、どうした宮下君、渋い顔をして」


「いえ、あの・・仮面も素敵なんですが、スリランカといえばほら綺麗な石が有名じゃないですか。ルビーとかサファイアとか、アレキサンドライトとか、スリランカ特産のシンハライトとかも・・」


「宮下君てアクセサリーを身に付けていないし、お洒落に興味無いように見せておいて意外に宝石に詳しいんだな。やはり君の地味なファッションは変装なんだね」


「宝石に興味が無い女性なんて居ませんよ」


「そうかもしれないが、君はふたつ間違っている。ひとつは男性からのギフトに期待することだ。男の土産物のセンスはたいていは女性の期待を裏切るものなのだよ。もうひとつは、宝石というものは恋人から貰うべきだ」


 (御影さんは意地悪だ・・・)

 真奈美は心の中で呟いた。

 (サトリの能力を持つ私に、恋人なんて出来るわけがないのに)


「いや、そうとは限らないさ。君にだってそのうち素敵な恋人が現れるよ」


 (はっ・・!)

 真奈美は赤面した。


「み・・御影さん!私の心を読みましたね」


「僕には君の心は読めないよ。これはコールドリーディングさ」


 御影はいつもそう言うが、真奈美は信じていない。


「それから君に恋人ができるだろうというのは、予知だ。あまり強くはないが、僕には軽い予知能力があるって前に話したことがあったよね」


 この言葉も話半分で聞いておいた方がよいと思われる。


「宮下さん、確かに所長のお土産センスに期待しちゃダメです。私が貰ったのなんかこれですよ」


 そう言って、とても雑に仕上げられた木のパペットを吊り上げて見せたのは、御影の秘書である穂積恵子だ。恵子は御影のことを所長と呼んでいる。


「君たちは完璧を求めすぎなんだ。いいかね、この最後の仕上げをすれば完璧になるところで作業を止める。あえて画竜点睛を欠く。この美学がわからないものかな」


 女性陣の攻勢に押されて、御影は詭弁に走り始めたようだ。


「あっ、田村所長から何かファイルが届きました。ああ、例の山科警部が調べていた事件ですね。『名探偵・金田耕一郎の冒険』ですよ、これ」


 それを聞いた御影は興味津々な顔になった。


「例の五角館で宮下君が凹ました名探偵だね。ダメだよサイキックはミステリには反則なんだから。でも面白そうだな、読ましてもらっていいかな」


「ええどうぞ。転送しますから、そのかわりご意見くださいね」


 御影は転送されて来たファイルを、自分のノートPCで開くと素早く斜め読みした。そして嬉々とした表情を浮かべている。


「後でちゃんと読み返すけど面白いな。なるほど、山科さんが上から要請があったようなこと言ってたというのは、このインビジブルスーツのせいだね。これがもし実在するのなら、国家機密レベルで管理しなきゃいけないもの。見えない兵隊が作れちゃうし、スパイ活動にも使えるし、犯罪への悪用もできる。テロ組織の手に渡ったら大変なことだし、かなり危険な発明だよ。山科さんは内閣情報調査室の鮫島さん*あたりから頼まれたのかもね。つまり、僕らサイキックチームを動かしてほしいということさ。穂積君、すまないが紅茶を用意してもらえないか。それと何か甘い物」


 *前作「サイキック」の登場人物。


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