特別試験 前々日談
俺は今、風呂場で土下座をしている。俺が土下座をしている相手は、フリューさんだ。何があったのかは、今から一時間前に遡って話そう。
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今日は、先生方の会議とやらが、あるらしく、授業は昼からとなっている。なので、俺とタクトは、部屋でしばらくゆっくりとした後、食堂で弁当を受け取り、学校で食べて授業開始を待つ予定だ。
「アルトー、ちょっとこれ見てみて」
そう言ってタクトが見せてきた紙には、この学校の今年の予定や、教育方針などが書かれていた。
ざっと目を通すと、とある項目に目が止まる。
「なぁ、タクト。この、特別試験って何だ?」
「うーん、何だろう? これには、ファースト、セカンドグレード時には、年三回以上、サードグレード時には、最終試験として、一回のみ、実施する。また、ファースト、セカンドグレード時には、進級試験の実施もあるって書かれてるね。内容は、特に乗ってないみたい」
「まぁ、何にせよ近々その特別試験があるってことだろう」
「まぁ、そう言う事だろうね。まぁ、まだ流石にないでしょ」
「いや、分からないぞ入学式の時みたいに、当日になっていきなり言われるかもしれないぞ」
「た、確かに、あるかも」
俺は部屋に立てかけられた魔刻計を見る。
時間はまだまだ余裕だ。俺は、ひさびさにあれをしようと思い、部屋のドアに手をかけた。
「タクト、俺ちょっと朝風呂に行ってくる」
「うん、わかったー」
俺は部屋を出て、階段を降りて、大浴場に入った。この寮の大浴場は、男女両方が利用する。なので、風呂の時間は決まっている。しかし、朝などは特に決まっていない。
「まぁ、どうせ誰もいないだろ」
俺は風呂場で服を脱ぎ、すぐに浴室に入った。しかし、その選択は間違っていた。
「あ…」
「え?」
俺が扉を開けると、目の前には、フリューさんが立っていた。
「あ、あ、ああ、アルファスさん?!」
フリューさんは戸惑っていた。当然だ、
俺はバックステップで距離を取り、土下座の体勢に入った。
「…すいませんでした、すいませんでした、すいませんでした…」
ただでさえ会話能力が低いので、謝り方など当然知らない。なので、土下座をして謝り続けた。
「あ、あの!そんなに謝らないでください!私は大丈夫ですから! 」
俺はそう言われ、頭を挙げた。
フリューさんは尚も正座をしている俺の顔を覗くようにして、
「アルファスさん、よかったら、背中、流しましょうか?」
と、悪戯っぽい笑みを浮かべて言ってきた
俺は不覚にも頬を赤らめて、
「け、結構です!」
「ふふっ、冗談ですよ、それじゃあ、先に
上がりますね、アルファスさん、今日も弁当を作ってお待ちしてますね」
そう言ってフリューさんは、浴室を後にした。
俺は、軽くシャワーを浴び、湯船に浸かった。昨日の夜も風呂に入ったが、なぜか昨日より癒された気がした。
俺は満足気に浴室を出て、部屋に戻った。
部屋に戻ると、タクトが学校へ行く準備を進めていた。
「あ、アルト!おかえりー」
「あぁ、今準備するから、ちょっとまっててくれ」
「うん!おっけー!」
俺はベットの横にかけられているローブを取り、羽織る。
「よし、待たせたな、行こう」
俺とタクトは部屋を出て、食堂へ足を運んだ。
「フリューさん、俺です。弁当を取りに来ました」
俺がフリューさんを呼ぶと、厨房の方からバスケットを持って出てきた。
「はい、出来てますよ、今日のは自信作です!」
「ありがとうございます、いただきます」
「はい!行ってらっしゃい!」
俺は一礼をし、食堂を後にした。玄関で、タクトが待っていてくれた。
「すまん、また待たせた」
俺とタクトは寮を出て、学校へと向かった。
学校へ入り、教室へ入った。
流石に、まだ二、三人ぐらいしかきていなかったので、好きな席に座ることが出来た。
俺とタクトは後ろの席に着き、揃って弁当を食べていた。
「アルトのお弁当って、僕たちのとは違うんだね」
「あぁ、ちょっと色々あって、食堂のとある人の新作料理の試作品の毒味を…」
そう言いかけた瞬間、寒気が走った。
「新作料理の試作品を食べさせてもらってるんだが、とても美味しい。うん、タクトにも食べさせたい」
俺はそう言い直した。何故か、フリューさんの視線を感じた。そして、「私の料理は、アルファスさんのためだけに作ってるんですよ!他の人にあげたら、めっ!ですよ!」
と言う、謎の幻聴も聞こえた。
弁当を食べ終わり、しばらくタクトと、雑談をしていると、ぞろぞろとクラスメイトが揃ってきた。気づけば、集合の時間の三分前だった。
そして、全員が席に着いた頃、ヴェルズ先生が入ってきた。
「全員揃ってるな、さて今日は、お前たちファーストグレードの生徒は、これからする重要連絡ののち、解散とする」
「ま、まじか!」
「え!もう帰れるの!」
「静粛に、早速重要連絡だが、お前たちは、明後日から、特別試験を受けて貰う」
なっ、朝タクトと話していたやつじゃないか、まさか、本当にもうやるとは。
「なんだ?それ?初めて聞いたぞ??」
当然、他のクラスメイトは戸惑っていた。
「お前たちが今回やる内容は、ダンジョンに5日間遠征し、モンスターを狩りまくることだ」
先生が短く告げた試験内容を聞き、クラスメイトたちは驚愕する
「い、5日?!嘘でしょ!?」
「喜べ、今回は例年より早い実施のため、2日前に告知した。これから配る細かい内容を良く見て、クラスで打ち合わせでもするといい」
そう言って、ヴェルズ先生はプリントを配布し、教室を後にした。
教室は、無音に包まれていた。無理もない、いきなりとんでもないことを告知されたのだから。
その無音の教室の静寂を破ったのは、い1人のクラスメイトだ。
「みんな、少し、俺の話を聞いてくれないか」
そう言って教卓の前に立ったのは、クラスメイトの、ランティア・テクロニクス。
「俺はこれからすぐに寮に戻り、このプリントに書いてあることをわかりやすくまとめようと思う。みんなも、まだ整理がついてないと思う。今日は、しっかりと気持ちを整えて、明日、談話室で打ち合わせをしようとおもう!ぜひ来てくれ。それじゃ」
そう言って、教室を後にした。
それに続いて、クラスメイトも続々と教室を後にした。
突如告知された特別試験不安と緊張の中、それが幕を開けようとしていた…
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「特別試験の告知、完了致しました。」
私は学校の地下のとある一室に入り、とある方に報告をしていた。
「ご苦労様です。ヴェルズ」
そのお方は、短く言う。そして、
「ゴウ、こちらへ来なさい」
「はい、お呼びですか」
ゴウ、と呼ばれた大柄の男が、私の前に現れるその方は、手招きで、ゴウを近づけさせると、なにかを耳打ちした。
「かしこまりました」と言って、ゴウは部屋を後にした
そのお方は、グラスにワインを入れ、
「今年は楽しみな子が多いから、早めに実施することにしたわ」
といって、ワインを一口。
「ふふ、あの子は、私からの届け物、どう使ってくれるかしら」
私は、何を言っているかわからなかった。しかし、そのお方が浮かべているその微笑みを見て、なんとなく察した。
誰かしら、そのお方が気に入った生徒がいて、その子に悪戯を仕掛けようとしている。そんなことを、考えた…
六話です
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