表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
授業はダンジョンの中で  作者: 片栗粉
4/7

夢の中の少女



【ミノタウロスJr.】との戦闘で魔力を使い果し、気絶した俺は、何時間眠っていたかわからない。だか、夢の中での懐かしい声が聞こえてきた。


「私は、信じています。必ず、助けに来てくれるって。ずっと、ずっと待っています。だから、立ち止まらないでください」


俺はその言葉で目が覚めた。

俺はダンジョンの地面ではなく、ベットのようなものに横たわっていた。

視界には、知らない天井がある。


「やぁやぁ、目が覚めたかい?」


俺は見知らぬ女性に声をかけられた。


俺は自分が横たわっていたベットから身を起こし、近くの椅子に座っていた女性を見た。


黒色の長髪に、黒い瞳、そして、白衣らしきものを見にまとっている。一体誰だろうか?


「あの、失礼ですが、あなたは?」


俺は質問する。


すると女性はニコッと微笑んで、


「私? 私はこの学校で一番の治癒魔法の使い手、ファーストグレード・チルドレン担当の養護教諭、ウイ・クロラルだよ〜」


養護教諭、ということは、ここは保健室なるところか、俺はあの後一体どうなったのだろうか、


「先生、一体俺はどうなっていたのですか?」


「んーとね、三組の君以外の子はみんな戻ってきてたのに、君だけ戻ってこないから、シーちゃんが心配して、ダンジョンに潜ったら、最奥地で、君が倒れてたから、慌てて、私のところに連れてきたんだよー。んで、私が調べたら、ただの魔力切れだって…ふふっ。君面白いなぁー」


俺は先生に笑われる。


「それで、俺はもう動いて大丈夫なんでしょうか」


「うん、一応治癒魔法かけといたし、魔力のポーションも飲ませておいたから」


「そうですか、ありがとうございます」


俺は立ち上がり、扉に手をかけた、すると、クロラル先生に声を掛けられた。


「アルファスくーん、また遊びにおいでよー」


「そうですね、またいずれお世話になるかもしれないので、その時は」


俺は、そう言い、保健室を後にした。

保健室を出ると、長い廊下があって、部屋がいくつか並んでいた。まだ、この学校の構造が、よくわからないので、どこに行けばいいのかわからず、その場をうろうろとしていると、後ろから声をかけられた。


「あら、アルファスさん、体の方は、大丈夫ですか?」


振り返ると、そこには俺たち三組の担任、リザリーラ先生が立っていた。


「ええ、クロラル先生に、治癒魔法をかけていただいたので」


すると、リザリーラ先生は微笑んで、


「そうですか、それは良かったですね。あ、そういえば、あなたをここまで運んできたのは、シスカだと聞きました。あとでお礼を言っておいてくださいね。 それでは、今日は安静にしてくださいね。明日からは、通常授業なので」


俺は頷き、


「はい、分かりました」


と、短く返事をした。ここで、俺は聞かなければいけない事を思い出した。


「先生、俺はこれからどうすればいいのですか?」


「ファーストグレードの生徒は、今日はもう寮で休んでいますよ。寮は、学校を出て、少し歩いたところにありますよ。部屋は、二人一部屋ですので、僚艦の方に聞いてください」


「ありがとうございます」


俺は礼を言い、寮を目指して歩き始めた。


学校を出て、少し歩いたところに、寮はあった。


ファーストグレード・チルドレンの生徒60人が滞在することになるこの寮は、五階建ての構造で、一階はミーティングルームや食堂、大浴場などと、設備が整っている。二階からは、生徒の部屋となっている。


俺は、自分の部屋を聞こうと、僚艦を訪ねる。


「すみません、自分の部屋はどこでしょうか?」


俺は、恐らく僚艦であろう、大柄の女性に尋ねる。


「あんた、名前は?」


「アルト・アルファスです」


「アンタは三階の右端の部屋、タクト・フォン・アメリールと一緒の部屋だ」


「ありがとうございます」


俺は感謝を述べ、階段へと向かった。

三階に着き、右端の部屋へと向かった。

部屋に着き、部屋の扉を開けて、中に入ろうとすると、中から声が聞こえてきた。


「うん、今日、ダンジョンに行ったよ。…いや、まだ、分からない。ううん、大丈夫。うん、それじゃあ、また」


声が聞こえなくなったので、俺は中に入った。


中に入り、タクトが俺に気づくと、すぐに俺の目の前に来た。


「アルトっ! 大丈夫なの?!」


「あぁ、心配かけて悪かったな」


タクトはホッと、胸をなでおろし、


「ううん、大丈夫、それより、疲れたでしょ、明日から授業だし、もう寝なよ」


「あぁ、そうさせてもらう」


俺は、部屋の奥にあるベットに横たわり、すぐに眠ろうとした。


しかし、なかなか眠れない。先程見た夢が、頭から離れないのだ。


なぜ、その声が、今夢で聞こえてきたのかわからない。


俺は、その声の主に何度も救われた。その声の主は、俺のたった一人の、大切な、家族だ。今は、いない、最愛の、妹。


俺は、必ず妹を救ってみせる、たとえ、この身が、滅んでも…


俺は、知らない間に、眠ってしまっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ファーストグレード・チルドレンの、実力テスト、終了いたしました」


「そうですか、ご苦労様でした、ヴェルズ」


私、シスカ・ヴェルズは今、学校の地下にいる、とあるお方に、本日行った実力試験の結果を報告している。


「…そして、三組では、リュカ・エメラルド、タクト・フォン・アメリールなどの生徒が優秀な成績をあげました」


「なるほど、ん? 」


パラパラと成績表を見ていたそのお方の手が、不意に止まった。


「あの、どうか、なさいましたか?」


「ヴェルズ、この、アルト・アルファスという生徒は?」


「はい、本日の試験、14階層の、最奥地にて、魔力切れを起こしておりました」


「ほう、ということは、上級魔法(ハイ・マジック)を?」


「はい、クロラルが、そう言っておりました」


「ヴェルズ、あなた、この子の結果を見て、何か気づく事はない?」


私は、渡されたアルファスの試験結果を見て、あることに気づいた。


「あっ!」


「気づいたようね、」


私が、気づいたこと、それは、モンスターとの戦闘時間だ。他の生徒が大して時間をかけずにできていた、ゴブリン討伐、しかし、彼は、それに一時間以上かかっていた。


しかし、逆に、他の生徒が最も苦戦した【ミノタウロスJr.】との戦い、それを、彼は、上級魔法(ハイ・マジック)一発で、それも、一度も攻撃を喰らわずに倒すことが出来ている。


「これは…面白い生徒が入ったようね、」


私も、思うところがあった。いきなりダンジョンに行くと言われ、混乱している生徒に対し、彼は、的確な質問をしてきた、それに、明らかにダンジョンについての知識が身に付いている。


「いい報告をありがとう、ヴェルズ、下がりなさい」


「はい、失礼します」


私は、礼をし、この場を後にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ヴェルズが、去ったあと、女は、グラスに入ったワインを飲む。そして、一言、


「アルト・アルファス、興味深いわね…私も、()()()()に、ここから出てみようかしら」


彼女は、そう言って微笑んだ。それは、まるで、悪戯をしようとしている、少女のような顔だった…

四話です。


ぜひ評価の方をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ