式の後は、ガイダンス…ではなくダンジョン!?
講堂の扉を開け、中に入ると、既に沢山の生徒が整列を終えていた。
俺とタクトは何処へ並べばいいか分からず、うろうろとしていると、金髪の若そうな女性に声をかけられた。
「君たち、新入生かな? 新入生はあっちの、右の列だよ。」
教員だろうか、その見た目からはあまり年の差はあまり感じられなかったが…
「そうなんですね、ありがとうございます」
俺とタクトは短く感謝を述べ、言われた通り、右の列に並んだ。
しばらくして、講堂が静まりかえり、ステージ上の雛壇に一人の老人が立った。
「えー、それでは、これより入学式を取り行う。私はこの学校の副校長のハバヤだ。本日は校長不在の為、伝言を、私が代読させてもらいます。」
副校長はメモ用紙を取り出し、読み始めた。
「えー、新入生諸君、入学おめでとう。この学校に入学したからには、是非、優秀な冒険者を目指して欲しい。だが、忘れないでほしい、冒険は、常に死と隣り合わせだ、そのことは、忘れないでほしい…以上が、校長の伝言でした。」
副校長は雛壇を降りた。そして、入れ違いに別の教師が雛壇に登り、
「それでは、セカンド、サードグレードの生徒は、これより通常授業に移る、新入生、改めファーストグレードの生徒はこれよりクラス発表に移る、それでは、各自移動開始。」
と、説明した。
この学校では、一番下の学年はファーストグレード・チルドレンと呼ばれる、真ん中は、セカンドグレード・チルドレン、そして最上級生は、サードグレード・チルドレンと呼ばれるそうだ。
上級生たちはぞろぞろと講堂を後にした。俺たち新入生は中央に集まり、クラス編成の発表を受けていた。
そして、クラス紹介が終わり、各クラス担任、副担任の先生から一言ずつコメントがあった。
俺は、三組になった。
「皆さん、ごきげんよう、このクラスの担任になりました。エリス・リザリーラです。私の目標はこのクラス全員が立派な冒険者になれるようにすることです。よろしくお願いします」
まず、コメントがあったのは先程の金髪の女性改め、担任のリザリーラ先生、俺はここであることに気づく、
(ん? リザリーラって…もしや…)
いや、気のせいだろう。続いてコメントがあったのは、副担任の先生だ。
「私がお前らの副担任の、シスカ・ウェルズだ。お前らの授業は主に私が担当する。私の授業でのルールは『死ぬな』だ。よろしく。」
ん? 授業で死ぬなとは?どういうことだ?
続けてウェルズ先生から説明があった。
「さて、これからお前達には、ダンジョンに行ってもらう。」
「なんだって!?」
「初日から?!うそでしょ??」
クラスメイトたちは動揺を隠せず、声を上げる。 もちろん俺も驚いた。
すると、ヴェルズ先生は、
「何をそんなに驚いている?この学校では、新入生の実力を図るために毎年ダンジョンに行かせている。」
すると、一人の生徒が挙手をし、
「先生、なぜ事前に連絡がなかったのですか?」
と聞いた。
ヴェルズ先生はフッ、と鼻で笑って、
「連絡? なぜ連絡する必要がある?」
「連絡があれば、我々新入生はここまで動揺する必要はありませんでしたし、何より準備だって…」
ヴェルズ先生は今度はハァ、とため息をつき、
「お前たち子供は本当に愚かだな。 いいか、お前たちが冒険者になった時、ギルドから緊急クエストが出たらどうする。それこそ、準備する時間もなく出発しなければいけないんじゃないか?甘ったれるなよ?」
ヴェルズ先生の言っていることは最もだ。しかし、
俺は手を挙げて質問した。
「先生、自分たちは装備なしでダンジョンに潜らなければいけないのでしょうか?」
「いい質問だな。 安心しろ、お前達の装備や武器は、こちらで用意してある。だが、強度は保証しかねない。その辺の駆け出し冒険者と同じぐらいの装備だ。」
「なるほど、ありがとうございます。」
「それでは、十分後に出発する、防具や武器は玄関に置いてある。各自自分に合ったものを選ぶように。では、一時解散」
クラスメイトたちは、急いで玄関にむかった、装備選びは大事だからな。
俺は、クラスメイトたちに遅れて、玄関に向かおうとした。すると、後ろから声を掛けられた。
「アルトっ!」
振り返ると、そこには薄紅色の髪をポニーテールにした少女のような外見の少年、タクトが立っていた。そういえば、タクトとは同じクラスだった。
「いやー大変だねぇ初日からダンジョンなんて。」
「そうだな、でも、タクトは他のみんなと違って、あまり驚いてないんだな。」
「そうだね、ダンジョンは何回か連れて行ってもらったことがあるし、先生も言ってたけど、自分の今の実力を試せるって思うと、ワクワクしてきたよ。」
冒険者の資格がないのに、どうやってダンジョンにはいったんだ?? タクトは?
いや、そんなことはどうでもいい、だって、俺も行ったことあるしな、ダンジョン。
「行くぞ、タクト、好きな装備が選べなくなる。」
「うん、そうだね、行こっか!」
俺とタクトは玄関へ向かった。
どうやら、この学校での生活は、一筋縄ではいかないようだな。
まぁ、仕方ない。ダンジョンでも、そんなに目立たずに、ゴブリンとかでも適当に狩ってればいいか。俺は、意地でも目立たない。『サラ』を救う、その日までは…
俺は腰につけた鞘に安物の剣を収めて、そう、誓った…
昨日に引き続き、第2話を投稿しました。
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