表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/63

情報交換

 

  俺たちは互いの固有スキルや能力値についての情報を交換する。



 桐生星華お姉さんは、〈スキルイーター〉と〈タイムアクセル〉を持っていた。


 〈スキルイーター〉は名前から言って、信用出来る相手以外には言えなさそうだと判断して申告しなかったらしい。


 確かにゲームでも、相手のスキルを強奪できる物議をかもしたチートスキルだ。

 しかし、それはスキルイーター術者が習得可能なもので、強奪できる条件も厳しい。習得可能と言うのは、魔法使いが弓兵のスキルは習得できないし、固有スキルに関しては不可能。


 尤も、勇者という全ての戦闘職の上位クラスであれば、どんなスキルでも強奪できる。つまり、勇者クラスで最強のスキルといっても過言ではない。

「流石にこれは王国側には言えないわよねー」

 ということで、話がついた。


 〈タイムアクセル〉は、その名の通り、加速した世界を作る。これは、周りより自分の時間を進めるもので、戦闘で使えば相手がより早く動くことになる。

 一見使い道が無い様に思えるが、詠唱時間の長い術式を、加速世界で構築することで相対的に短縮できるという使い方ができる。




 秋本紅葉は、回復職の高校生だ。〈アスピライト〉という最高位回復術式だけでなく、〈コントラクター〉を持っていた。スキル概要は、〈テイム〉の上位互換。神獣や天界族なんかの高位な存在とも契約できるスキルだ。



 次に綾小路詩音。

 ロリっ子お嬢様という属性てんこ盛りの彼女は、〈リアライズ〉と〈カレイドスコープ〉を有している。

 〈リアライズ〉は不明だ。俺も聞いたことのないスキル。名前から察するに、何かを具現化するスキルだろう。

 〈カレイドスコープ〉は、ゲームでもよく使われていた。魔法の万華鏡による砲台、略して、魔鏡砲。使い方は極めて簡単。魔法攻撃を複数に増幅させ、乱反射させるこの砲台を使って敵を殲滅する。欠点は、着弾点が予想できないし、自身の被弾率も高い。蘇生できるところで敵もろとも地上を穴凹にして殲滅し、後から蘇生してもらうという方法で使われていた。


 綾小路詩音お嬢様は、このスキルに随分とご立腹のようだ。これは封印するから誰にも言うなと俺たちは念押しされた。




 海崎澪緒は、〈アイサイト〉と〈テレパス〉。

 〈テレパス〉は下位互換に習得可能な念話があるが、こちらは声の届く範囲に限られる。〈テレパス〉は距離による制限がない上、至近距離でならイメージ共有ができる。この価値は正直言って無茶苦茶高い。

 ゲームでは“フレンドメール”を使えば離れてもフレンド相手にはメッセージが遅れたが、この世界にはフレンドメールがない。遠くにリアルタイムで情報を伝達できる手段の価値は計り知れないだろう。



 中二病患者のリュートは、〈スキルブレイカー〉と〈シャドウフォース〉。それから隠していたのは〈スケープゴート〉。これは自分とそっくりな分身を身代わりに作ることができる。このスキルがデコイ魔法や〈スケアクロウ〉などの他の分身術式などより優れている点は、攻撃を受けた後でもそのダメージそのものを身代わりに負わせて無かったことにできる。

 つまり、致命的な攻撃を受けても、一度だけなかったことにできるのだ。ゲームでは死んだ後でも発動できたが、それはプレイヤーがキャラクターとは別にいて操作できるからで、実際にこの世界で死んだらスキルが発動できるか不明で確認のしようもない。




 イケメンこと鈴木悠希は、〈オーバーキル〉の他に、〈ドレットノート〉と〈ネクサスマインド〉。

 〈ドレットノート〉は完璧な精神耐性と、格上との戦闘でステータスが上昇するパッシブスキルだ。

 〈ネクサスマインド〉は、近くにいる仲間の人数に応じて、自身と周囲のプレイヤーのステータスに補正を掛ける。...もういいよ、お前が主人公で。なんだこのキラッキラなリア充スキルの詰め合わせは。死ね。



 大原大智は自己申告したもの以外に隠し持っていたスキルはないようだ。

 〈ワールドガード〉と武術[豪]、〈マナプロテクト〉。王国側のリサ副団長の説明で合っているだろう。



 最後に俺こと一零(よこいちれい)は、〈ゲームエンジン〉一つ。スキル概要は不明だ。当然ゲームプレイヤーである詩音お嬢様も厨二患者(リュート)も聞き覚えがないという。






 互いの情報が揃って一息つく。


「これで一蓮托生ね!それにしても良かったわ、ちゃんと話し合えて」

 進行役の星華お姉さんが取り纏める。

「そうですね。スキルイーターという正体不明の名前から言って爆弾スキルを持ってることを悟られず、かと言って隠してることがバレた時にはスキルの凶悪性から追い詰められるのが確定ルートな星華さんにとっては、慎重に相手を見定めて話を持っていくことに気が気でないーー」

「ちょちょちょちょっとーーー?澪緒ちゃん?レディの心の内をひけらかすなんて感心しないわよ?乙女の体を晒したいわけ?そのスキル凶悪過ぎない⁉︎」

「心機一転の場を和ませるジョークでした。スキルは使ってません。適当に言いました。まさか星華さんがそんな心境だとは思いませんでした」


((な、なんという誘導尋問…。))

 星華姉さんが自爆した。


「それから、頃合いなのでネタ晴らしをしようと思います」

「ネタ晴らし?」


 話始めたのは海崎澪緒。


「〈アイサイト〉という固有スキルの鑑定を使って皆さんを見ましたが、実は名前と職業しか見えません」

「「え⁉」」

「心眼で心が読めると信じてくれているようですが、心眼では嘘を言ってるかどうかぐらいしか分かりません。心を読む程は分かりません」

「「え⁉」」

「それともう一つ、心眼で相手の悪意が分かると言いましたが嘘です。善悪や敵意は分かりません」

「「え⁉」」


 鳩が豆鉄砲を喰らったように俺たちは停止した。


 今俺たちが手の内となる固有スキルの情報を交換した。その根幹にある信頼の塊は、彼女が自分で手の内を明かしたという事実をベースにしている。その彼女は、心眼で相手の心を見抜く力を持っていると俺たちは認識している。

 つまり、彼女が自分から手の内を晒したと言うことは、彼女の心眼から見て信用できる人だという保証があるわけだった。


 しかし、その海崎澪緒が、その心眼に「人の心は読めません。悪意も害意も分かりません」と言われれば、この信用関係が根底から成立しないことになる。


「それはおかしい。君の心眼の能力で分かるから、僕らは手の内を見せ合えたんだ。もし分からなかったらこの状況は成立していない…。この状況でその発言は…信じることはできないよ」

 悠希イケメンは尤もな疑問を投げかける。



 確かに、今更「実は心は読めませんよ」というのは都合が良すぎる。


 ”本当は読めるけど、読めないことにしておこう”としている可能性もある。“心が読める”という認識をされているより、“読めない”と認識されている方が海崎澪緒にとって都合がいいという事実もある。悠希イケメンはそれを暗に示しているのだろう。


「本当ですよ。…説明お願いできますか…?」

「…」

 海崎澪緒の視線の先にいる俺に注目が集まる。

「…確かに…それを証明するには本人以外の方が説得力があるか」

「やはり気づいていましたか」

「馬鹿言え。今の今まで信じたわ。多少の違和感はあってもファンタジー世界だ。多少のことは目を瞑る」

「ど、どういうこと?」

「零くん説明お願いっ!」


 俺は、海崎の心眼が心を読めるようなものでなくても今の状況に至るだろう筋道を説明する。


「どこからかと言えば、おそらく俺に話しかけたのが最初でしょう。王様との会見で「固有スキルを持っている人は手を上げてください」と言われましたね」

「ああ」

「ええ」

「その時に、海崎さんは俺に「いいんですか?」と囁きした」

「いいんですか?ッスか…それがなんッスか?」

「あの状況下では、その言葉に主語を入れるとこうだ。「固有スキル持ってるのに、手を上げなくていいんですか?」ですね。」

 俺が補完して解釈した海崎の言葉を皆に伝える。

「ふむ。確かにあの状況ではその解釈と、それとは別に、「ここで手を上げていいのか?」という解釈にもなるな」

「流石厨ni…リュート君。そう。後者の場合は後々同じ“申告をさせずに隠匿した仲間”を確保できるメリットもあるし、それはそれで都合がいいんだろう。俺は前者で理解して、こう答えた」


「「能力を隠す俺カッコイイ!をやりたいから黙って起きます」と言ってましたね」

 ええぇぇえぇーーー…。


 唐突な海崎澪緒のキャラ崩壊に繋がる俺のモノマネ。内容もモノマネも衝撃過ぎて時が凍る。

「やめて、人に言われるとマジで死にたくなる」


「そうですか。私の解説を零さんに任せてしまっている手前、零さん役は私が努めようと」

「マジでやめて」

「ふふっ。ごめんなさい。続けて?」

 星華さんが思わず吹き出している。俺のSAN値が削られる姿を見てそんな楽しいか⁉


「そう。まあ要は、“特に隠す目的はないけど、個人的に隠したい幼稚な理由があるから黙ってて”。ということが伝わればよかったんですよ。」

「なるほど。君はそこで下手に隠すと、“申告しない怪しい奴”と思われてバラされるかも…と考えたということか。だから、あえてバカなフリを?」

「鈴木さん正解。でも、おそらく海崎さんはそもそも俺が固有スキルを持っているかどうかもその時は把握していなかった。それに、俺が申告するかしないかじゃなくて、どう反応するかが目的だった様ですね」

「そうだな。こいつに他人の固有スキルを知る能力が本当にないとしたら、あの時は知りようはない。囁きはブラフか」

 リュートの言葉に、海崎澪緒はコクコクと無言で頷いている。


「俺の返答に、海崎さんは2つの情報を得ることができ、俺に1つの嘘を信じさせましらた」

「ほぉ?」

「まず一つ目は、俺が固有スキルを持っているということ。もう一つは、俺が何かしらの理由で固有スキルを持っていることを隠しているということです」

「確かにそうなるわね…。嘘っていうのはなにかしら?」

「これがこれだけ引っ掛けまわされた要因の嘘の発端ですよ。海崎さんが”鑑定で持ってる固有スキルが分かる”っていう嘘」

「私としては完全な副産物ですが、信じていただいたようなので活用しました」

 澄ました顔でそう告げる海崎澪緒は、まるで信じたお前が馬鹿ですよ、と言わんばかりだ。

 殴りたい。

「ふぅん。でも分からんよ?なんでアンタが勝手に信じた嘘が全員信じることになったのよ」

 綾小路詩音(ロリ)が頭の上にハテナマークを浮かべている。


「簡単に言ってしまえば、感染したということですよ。彼女が自分から固有スキルを開示した時の言葉覚えてます?」

「えっと?確か「私たちが隠してる固有スキルを見せ合うべき。自分はなんとなく相手のことが分かるから不信感を抱くぐらいなら手の内を見せあおう」…よね?」

「そうです。まぁ重要なのは、その後ですね」

「その後?」

「俺の方を見て、不信感を募らす原因だと暗に指摘しました」

「ああ、確かに」

「それに乗っかったのが星華さんです」

「ええ。そうね」

「この時、海崎さんが持ってる情報は、俺が固有スキルを隠しているということと、桐生さんも固有スキルをスリーサイズの下りで暗に隠し持っているのを示しながら相手を伺ってるという状態でした」

「なるほど。それでお前を餌にOLを釣ったと」

「リュート君言い方言い方ぁ。まぁそんな感じだね。俺は海崎さんが先の件で俺に固有スキルがあることはバレてるし、他の人もてっきり把握していると思い込んでいる。そんな海崎さんにのスキルで、ここのメンバーは信頼できる相手であると言った。それを信じた俺がペラペラと語りだした。それを見たあなたたちが海崎さんの固有スキルは、本当に俺の固有スキルを知っていて、隠しても無駄だと判断した俺が語りだしたように見えた」

「ふ、複雑過ぎっス、途中から意味不明ッスよぉ」

「うーん、簡単に言うと、彼女の嘘を俺が信じて、その信じた俺を見たあなた達が信じたってことですね」

「ま。最初から海崎の手の上で哀れに踊らされていったってことね」

 綾小路詩音は、俺の方を見て背もたれに大きくもたれかかる。

「お言葉ですが、綾小路令嬢。あなたもその哀れな踊り子の一人ですよ」

「ふんっ、真っ先に自分から術中にハマるアンタと同じにしないでもらいたいわ」


 ぐっ…。ぐぬぬ…。


「しかし、澪緒ちゃんはよくそれでここまでもってきたわね」

「いえ、私の力ではありませんよ。状況が整っていましたし、私の固有スキルを過大評価している零さんのおかげです」

「なんだそれ…嫌味か?」

「…」

 俺も手玉に取られた腹いせに悪態をつく。それには反応せずに黙って立ち上がって静かに頭を下げた。

「ど、どうしの澪緒ちゃん?」

「何をしているのよアンタ。海崎が傷ついたじゃないの⁉」


 そう噛みつくな綾小路令嬢。俺に心当たりは…ない。…多分。


「皆さんに、騙すような真似をしたことと、零さんに何かと煽るような言動を取ってしまいました。その謝罪です。すみませんでした」


 頭を下げて下を向く海崎をおいて、俺たちは顔を見合わせた。

「気にすることはない。それもまた大いなる世界の意思だ」

「澪緒ちゃんのおかげで一蓮托生になれたわけだし、大手柄だよ~!」

「みんなのためにやってくれたんだ。感謝するよ」

「わ、私全然気にしてません!みんなとちゃんとお話することができましたし」

「自分も気にしてないっすよ」


「俺もーーー」

 気にしてないよ。と言おうとしたが、彼女のおかげでどれだけSAN値が減ったことか。謝罪の一言で許すには精神的なダメージが大きすぎる。もうちょっとで人間恐怖症に陥って一生他人と話せないレベルになったかもしれない。二度と俺相手に心眼を使わないと誓わせよう、うん、それがいい。


「俺は心にきずーーー」

「誰もそんなことちまちましたこと気にしてないわよ。何事かと思ったわよ。…なに?なんか言ったかしら?」

「…いえ、…なんでも…ありま…せん…」

 俺の声は綾小路詩音の声によってかき消された。彼女のドカンという効果音が付きそうな意見を覆しまで、俺の要求は通りそうもない。「は?何言ってんの」と綾小路令嬢に一蹴されて終わりだろう。



「さて。みんなとの距離が縮んだことだし、そろそろあの話題に触れないとね」

 シン…と空気が変わった気がする。誰もが真剣に考えるべき重大な問題だ。文字通り、命の選択と言える。


 俺たちはこれからの方針についての相談をすることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ