いつのまにか真っ黒に日焼けしていた
やはり桂林はすごい。私のイメージ通りの風景だ。石灰岩のタワーカルストがそびえ立っている。ちなみにタワーカルストについては日本に帰ってから検索した。当時は「ほえー、すげー」というアホっぽい感想しかなかった。桂林には鍾乳洞なんかもあるらしい。もちろん行っておらず、日本に帰ってから知った。
観光船の川下りを見つけ、早速乗り込む。100元かかるが川からの眺めも素晴らしいに違いない。船上は数組のお客さんしか乗っていないのでとても快適に過ごせそうだ。タワーカルストをより近くで見ることもできた。岸辺には水遊びをしている子供たちも見られる。私も泳ぐのは好きなので明日にでも泳いでみようかしら、などとボーッと景色を楽しむことができた。
なんだか私は桂林に勝手に馴染みを感じている。どこをほっつき歩いても居心地の悪さを感じない。公園でコロコロした寒天入りコーラを飲みながら、終始ボーッとしていたと思う。ホテルから出ない日もあり、そういう日の食事はカップラーメン、ポテトチップスなどを食べていた。合わせても10元程度と安く、そこそこ美味しいため怠惰に拍車がかかる。外に出る日は主に湖で寛ぐか、市場に顔を出す。市場では一個1元の見たことのない甘い果物を食べたり、バナナを1元分バラ売りしてもらい持ち帰った。バナナ屋のおばさんにもっとたくさん買えと言わんばかりに小さいバナナばかり渡されたこともあった。市場には肉、野菜、雑貨や衣類も売っていて、全く飽きることがなかった。
近郊に空港でもあるのかわからないが、航空券を売っている売店が多く並んでいる。私の中にふと「もう日本に帰ってもいいかな」という思いが湧いてきた。いつまでもダラダラしていてもしょうがないし、ここのところ日本でやり忘れていたことがどんどん私の脳内に積もっていくような感じがしていたのだ。無料の地図があったので、ひとまず現在地、近くの都市、日本との位置関係を明白にしなくてはならぬと一部もらった。私は久しぶりに「うーむ、困った」と唸ってしまった。杭州と桂林との距離が半端なく離れていたのだ。北京から上海も長距離移動してしまい行けなかった街があったが、またその過ちを犯してしまったようだ。バス代もぼったくられたと思っていたが、少し高いくらいだったのではないか。チケット屋のおっちゃん、一瞬でも恨んだ私を許しておくれ。
地図を見ていると日本に帰るという選択肢はすぐに消えていった。ワクワクしながら、すぐ西にある香港もいいなあと思ったが、通貨が変わるのは両替や計算も面倒くさいなあとわりかし早々に香港案は否決された。南の方に目を向けるとベトナムまで目と鼻の先であることに気付いた。どうせなら中国を縦断し切ってもいいのではないか。うーむ、悪くない。とてもキリがいい気がする。飛行機で行っても面白くない、列車でベトナムへ向かおう。次の目的地は桂林から少し南の都市南寧に向かうことにした。