だんだん中国語が分かってきたぞ
久しぶりのふかふかベッドで昼まで熟睡した私は部屋でカップラーメンをまた食べてチェックアウトした。昨日食べたカップラーメンもだが、特段まずくもなくこれと言った感想はない。次はバスに乗って次の街に行こうと思い、バスターミナルへ向かったものの、日本の新宿バスタのようなきれいなところではなく、とにかく土埃と人混みである。バスはひっきりなしに往来を繰り返し、並んでいる小屋からはおじさんが「ウチのチケットの方が安いぞ」と怒鳴り声を上げている。案の定、子犬のように怯えていた私はおじさんに捕まり、「どこに行きたいんだ。安く売ってやるぞ」と一つの小屋へ引き摺り込まれてしまった。
なんとか小屋から脱出できた私の手には桂林行きのチケットを握らされていた。そして、400元という大金が私の財布から消えている。絶対ぼったくられたと私は肩を落とした。普通なら色々な小屋を見て安いチケットを買うはずの私が、この土埃と人混みに完全に飲み込まれてしまった。しかし、次の目的地桂林へのワクワクもあった。桂林といえば私の頭の中には屹立した岩がまず思い浮かぶ、さらに私にとって中国=桂林の風景と言っても過言ではない。今回の中国旅行での数少ない私の見てみたかった風景の一つだった。
夜、またターミナルへ戻ってきて、目的のバスに乗り込むと車内は面白い様相を呈していた。まず席はなく、例えるなら二段ベッドが並んでいる感じだ。一つ一つの寝床が各々に振り分けられたスペースで、このバスは夜行専用のものであるようだった。自由席(席はないが)なので空いていた一番奥の寝床に潜り込み、飲み物やお菓子を並べて一息ついた。
臭い。とても臭い。なぜ奥の方が空いていたのか理解した。私の寝床の後ろがトイレだったのだ。私が隣のおじさんに「臭すぎる」と言うと、おじさんは困ったような顔をして少し笑った。「君はどこへ行くの」と言うから「桂林だ」と答えるも、桂林の発音が難しく伝わらない。私が日本人だと話しても信じてもらえない。何か長々と話されたが、私も困ったような顔をするだけなので、向こうもようやく私が外国人とわかったようだ。
道中、サービスエリアで晩ご飯を食べる。プレートに米、おかず数種類をベッ、ベッと乗せたような簡単なものだ。見た目通り味も悪い。バスに戻り、少しでも臭いから逃れるために薄いブランケットを顔に巻く。寝心地の悪さと格闘しながらもバスは桂林へ向かうのであった。