中国の紙幣は少し汚かった。
次の日、最寄りの駅にて張、周の二人にも一緒に私の次の目的地を考えてもらう。南に下るなら杭州がオススメらしい。特急列車で78元、約千円だ。ひとまず行き先も決め、ボーッと路線図を見ていると北京と上海の距離に驚いた。1,200キロ。日本の本州を縦断したようなものだ。もちろん中国が大きいのは知っていたが、来てみて改めて実感した。北京上海間にはそこそこな都市の天津、南京もある。うーむ、私は日本へいつ帰国するか決めていなので、聞いたことのある都市には行きたいと思っていたのだ。来た道を戻る気分でもないので、次の目的地は杭州で変わらず。ちなみに上海から日本への飛行機代は3万円。なるほど、帰りは上海まで別ルートで戻ってきて上海の中心地を観光して帰るのも悪くない。
寮に戻るがこの日は特に予定もないので、私は一人で寮の建物内を探検した。特段変わった設備もない。帰省していない人もちらほらいるようで見慣れない人がいるからなのか、はたまた中国人ではない外国人と気づいてなのか、やたらじろじろ見られる。私はそそくさと部屋へ退散した。部屋では張と周がネットゲームをしていたのでタバコを一本もらった。むせた。日本でもタバコを吸わない人間が中国のタバコを吸えるわけはないのである。銘柄にもよるだろうが、日本のものよりまずく感じた。
上海出発の朝。特急に乗るため上海駅へ向かう。上海駅一つ手前の駅で理由はわからないが電車が急停止してしまい動かなくなってしまった。5分経っても動く気配がない。周りの人も心配そうな顔をしている。いくら中国でもこのような遅延は普段ない様子だ。なんとか電車は動き出し上海駅まで到着したが、特急の出発時間ギリギリになっている。3人で目的の改札口までダッシュ、なんとか間に合いそうだ。しかしながら、張と周とのお別れは走りながら握手して「サンキュー!」「バイバーイ!」ととても簡単な挨拶しかできなかった。
車内は日本の新幹線のようにきれいで過ごしやすい。1時間ほどかかるので、少し荷物の整理をしようと思う。リュックの中には張と周に渡そうと思っていた袋もある。これは奢ってもらっていた食事代などを気持ち程度だが返そうと思って分けていたお金だ。結果的に同じ学生という立場でお金もないはずなのに、何日間も接待されてしまったのだ。うーむ、張の携帯の電話番号は教えてもらっていたので、日本に帰ったらもう一度お礼の電話をしようと思う。
一応私も携帯を持ってきていたが、ガラケーであり、使ってもいないのに既に充電も切れていたため何の役にも立ちそうになかった。その携帯がこの旅で一度だけ役に立ったのは、北京での万里の長城ツアーのとき、朝寝坊しないように目覚まし機能を使用したのが最初で最後である。せめて写真の一枚でも撮っておけよと今更ながら後悔している。