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北京は今日も曇り空

 朝、時間通りにホテルを出ると涼しくて気持ちがいい。日本のジトーとした湿気がここでは嘘のようだ。気分は爽快だが迎えの車が来ていない。うーむ、困った。急に不安になり目も一気に醒めた。いくらノープランの旅行といっても、このくらいは予定通り行ってもらわないと先行きが不安だ。地べたに座って、ぼーっとするしかなさそうだ。すると、狭い通りだが人の往来が少なくないことに気づいた。やはりみんな涼しい時間帯に動き出しているようだ。

 遠くからやたらでかいバスが走ってきた。路線バスが走るような道ではないのだ。嘘だろ。私が待っていたのは昨日のバンだ。私の願いは届かず、私の前に停車した。冷や汗が頬を伝った。私の思考回路は次のようになっていた。


昨日のバン → 少人数でのツアー → 他の方との交流 → 楽しい!

観光バス → 大人数でのツアー → 各々のグループで楽しむ → 一人孤立!寂しい!


 車内には7、8割くらいの人で埋まっていた。どこに座ろうか困っていると、ガイドらしき男性に「近くに座れ」と一番前の席に座らされた。ツアー中、私はこの彼に助けてもらいっぱなしになるのである。ちなみに彼はジャニーズの山Pに似ているイケメンである。彼は心もイケメンであったのだ。

 市街を出たバスは万里の長城ではなく、そこそこ大きい2階建ての建物に着いた。道中は山Pがちょこちょこ話しかけてきてくれて退屈することはなかったし、漢字で筆談するとカタコトの英語より通じることを発見した。ぞろぞろとツアー客の後ろについて行くと、なんだか宝石を展示している博物館である。うーむ、困った。朝から困ってばかりなのだが、やはり「うーむ、困った」なのである。わずか5分ですることがなくなってしまったが、最後に翡翠のお土産をもらったから、それで良しなのである。

 バスに戻ると山Pから水のペットボトルをもらった。ちょうど喉が渇いていたので、さらに彼が好きになった。山Pに今日の行程を確認すると次は万里の長城に行き、食事をして解散ということらしい。万里の長城はいいとしても食事で一人は寂しいなと思いながらバスに揺られていると到着した。辺りは山の中腹という感じで、まだ長城の全景は見えない。たくさんの観光バスが停まっていて、色々な人種がわらわら歩いている。山Pから「11時にはバスに戻ってきてね」と伝えられ、私もわらわらしている流れに加わった。

 長城はやはりデカかった、そして長かった。階段でみんな同じ部分を踏むからなのか、レンガひとつ分すり減ってしまっている。遠目で見ている分には壮大さなんかも感じたが、いざ歩いてみるとなんだか白けてしまった。空は曇っているし、ちょっとした落書きもあったりで汚い部分が見えすぎたようだ。行けるところまで行ってみたが帰りの時間もあるので途中で折り返した。そしてここでも「うーむ、困った」が出てしまう。私が乗っていたバスがどれか分からなくなってしまったのだ。うろうろ途方に暮れていると同じバスに乗っていた人を見つけ、なんとかバスへ戻れた。座席で一安心していると、どこからか山Pが戻ってきて一本のアイスを手渡してくれた。なんてこのイケメンは素晴らしい人なのだろうか。

 食事は日本のサービスエリアのような場所で大きな丸テーブルがいくつも並んでいて、大皿でたくさんの料理が用意されている。予想していた通り一人の私はまたしても「うーむ、困った」していると、同じバスのおばさんが笑顔で「一緒に食べよう」と誘ってくれ、楽しく食事をすることができた。ここでいくつか発見と衝撃があった。まず、日本にもある肉まんの形をした饅頭だが、かじってもかじっても具が出てこない。ハズレもあるのかと思ったが周りを見てみるとおかずと一緒に食べていて、これはお米のような役割なんだと気づく。もう一つ、焼き魚の骨はテーブルの下に吐き出すものらしい。とりあえず見習って私もやってみるがこれはあまり慣れたくない。

 解散場所に着き、おそらく北京市内だろうがどこかは分からない。山Pにお礼とお別れをし、ぼーっと座っていると同じバスだった家族連れがお菓子やジュースをくれた。こんなにも中国の人達に親切にされるとは思ってもみなかったのでとても驚き、日本にいた時の中国人のイメージは偏見であったと過去の自分を責めた。

 近くに地下鉄の駅があり、天安門へ行ってみる。想像以上の広場の大きさ、毛沢東の肖像画に圧倒された。壮大荘厳という言葉がぴったりだ。観光客が集まってきている場所があったので潜り込んでみると中国国旗の降納のイベントであった。旗を降ろし、軍人が十数人、手足揃った行進をして帰っていく。周りの観光客もおとなしく見守り、物々しい雰囲気である。これをずっと毎日2回行なっていると思うと私は「なんだかすごいなあ」と単純に感心した。

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