ごま団子はどの街でも安くて美味しい
18時桂林発の列車に乗り込むが、遅れに遅れ結局20時の出発となる。6人一つのコンパートメントと、私が一番好きなシチュエーションだ。北京上海の移動の際に周と出会えたように、長時間近い距離で過ごすといろいろな人と仲良くなれるのだ。親子連れ、カップルと幅広い世代が利用していて、みんな日本語の漢字に興味津々だ。中国は簡略化された簡体字を使っているので、お互いに漢字を教えあったりした。小さい女の子に数字の数え歌も教えてもらったが、残念ながら忘れてしまった。もったいない。
南寧に着いたのが、深夜1時半ということもあり、他の人は駅に迎えが来ていた。私ひとりポツンと深夜の駅に取り残された。うーむ、困った。周と出会ったときは、到着が昼だったということもあり、すんなり一緒にご飯に行けたが今回は無理であった。ひとまず今晩の宿だと駅の人に尋ねると近くにあるところを紹介してくれた。しかも80元、約千円とそこそこ安い。当たり前のことだが、安ければ汚いのは当然だ。ゴキブリが我が物顔で闊歩している。列車でもらったバナナとお菓子を食べて深夜3時、汚いブランケットに身を包んで寝る。
翌日は昼頃に目を覚まし、チェックアウト。とりあえず南に進めればどこへでもの精神でバスに飛び乗るが、気づくとぐんぐん北上していた。自分の適当さに思わず笑ってしまう。そのまま南寧郊外を暗くなるまでフラフラしていた。暗くなり宿を探そうと歩いていると夜市が開いている。夜ご飯を済まそうと屋台の席に着くと酔っ払いのおっさん達に絡まれる。ビールも飲ませてくれるし、ご飯もご馳走になる。あまり会話は噛み合わないが、これはこれで楽しい。いやはや酒飲みは平和だ。
おじさん達と別れ、何軒か宿をあたり50元の宿を見つける。酒も飲んでいたので、まずシャワーだと石鹸とタオルだけ持って共同のシャワー室へ。いつものように着ていた服もその場で手洗い。この頃には手洗いも慣れ、体を洗いながら服も洗っていた。そして、意気揚々と濡れた服を持って全裸で部屋に戻っていた。一応タオルで前は隠しながら。部屋に着き、ドアノブを回そうとするが硬くて回らない。ここで一気に血の気が引いた。受付の女性に鍵を渡された際、「部屋から出る時は鍵を持ち歩かないと閉め出されるよ」と注意されていたのをすっかり忘れていたのだ。
私が日々泊まっている宿は安いので、共同シャワー、共同トイレが基本。かつ、部屋に鍵なんて付いていないのが普通だった。このような状況は想定外だが、受付の女性に鍵を開けてもらうしかない。しぶしぶ濡れた服を着ようとしていると笑い声が聞こえてきた。通りがかりの宿泊客かと思いきや、受付の女性ではないか。私が何も言わないのに、スッと鍵を開けてくれた。私が困ったように「サンキュー」と言うと、女性は上を指差して行ってしまった。上を見ると監視カメラがついていて、私の行動は最初から彼女に丸見えだった訳である。つまり私のあらわな姿もバッチリとカメラに写っていたのだ。うーむ、なんと情けないことか。