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#003 Coin tower heaven and heaven

パーキングエリアで休憩することになって元気さんと唯と愛と舞と私はお土産を見て回ったり、食べ物を見て回ったりしたのだが、スカートに“足の扱いが上手ですよね”や“程よいエロが地球を救っています”と言ってあげるみたいに『運転お疲れさま。ありがとう』くらい言って欲しかったのに言ってくれず、フランクフルト一つもおごってはくれなかった。


褒められるのは苦手だが労いは欲しくて、“未来は未来の為にある”と書かれたTシャツも欲しくて、Tシャツの中にTシャツのイラストがあってその中にまたTシャツのイラストがあるっていうTシャツも欲しくて、とにかく何かを与えて欲しい。


「三人ともたこ焼き?三つ子みんなが同じものって仲いいな。俺はメロンパンかな」


「元気くん、一口頂戴?」


「私にも」


「じゃあ私にも」


一応私の車で、一応私がお金を全部出して買った車な訳で、車の中で食べていることは別にいいのだが、『抱き付きがいがあるよ』や『食べるのが好きな人に悪い人はいませんからね』と言われて嬉しいのはぽっちゃりさんを含めてもそれほど多くはないし、一人仲間外れ気味にされるプレイが好きな人なんてぽっちゃりさんを含めなくても少なくて、私は今の状況があまり好きではない。


「俺さ、今いいゲーム思い付いちゃったからやろうよ」


「何?」


「その名も『コインタワーヘブンアンドヘブン』さ。優希ちゃん、ちょっとボンネット借りて良い?」


自分のお金で買った黒い車のボンネットとコインタワーを掛け合わせてみても『傷』の一文字しか浮かんでこないし、元気さんの狂気を感じていて、回文の『痛みを見たい』みたいな感じの元気さんの異常な性癖を感じていた。


「ごめんなさい。それは、ちょっと」


「冗談だよ」


「元気くん?そのコインタワーヘブンアンドヘブンってどんなゲーム?」


「優希ちゃん運転疲れたと思うから次の運転手をゲームで決めようと思ってね。ルールは普通のコインタワーとあまり変わらないよ。小銭を順番に積み重ねていって倒した人が次の運転手になるんだけど、積み重ねた全部の小銭を運転手が貰えるってルールね。まあ小銭ではなくてもいいんだけどね」


「面白そうだね。あっシフトレバーの手前辺りが平らだからこことかどう?優希いいよね、ここで」


「うん、いいよ」


『僕はTシャツですけど、Tの形してます?』とプリントされたTシャツを作って着て、Tシャツは全然Tの形に見えないということをわざわざ世間に知らしめようとする人がいないように、車内でコインタワーをすることに乗り気ではない私が、わざわざこの気持ちをみんなに知らしめようとする気はない。


たとえお金が貰えても、また運転することもあるというモヤモヤが溢れていて、運転は好きな方で、私の愛車で乱暴な運転をされるよりは自分で運転したいけど、私がTシャツだったら『わたくしTシャツは、この人に着られています』とプリントして欲しいくらい変な私なので、とりあえず何でもいい。


「勝ったら天国、負けても天国だからね。いつもの順番でゲームスタート!」


「私、小銭あんまりないかも」


「積めるものなら何でもいいよ。じゃあ俺は1円玉で」


『あなたは様々な職業がピッタリ合いそうですね』みたいに褒められるのも嬉しいが、結局シンプルで在り来たりな「可愛いね」が無難で一番嬉しかったりするし、コインタワーも今、元気さんが置いたシンプルで在り来たりな『1円玉1枚』が結局一番無難で差し支えないしいい気がする。


「元気くんが1円玉1枚なら、私は1円玉5枚!ほいっ」


「うん、まだ大丈夫そうね」


1円玉を一度に5枚置いた唯や、1円玉を1枚置いた元気くんは、負けて運転手になる人にお金をあげたくないから少ない金額を積み上げているのか、一番小さいコインを下に置くことでバランスを悪くしてゲームの盛り上がりを演出しようとしているのかは分からないが『美女をより美しく映していただいてありがとうございます』とテレビに感謝しているオジサンと似たような気持ちを私が抱いているのは事実だ。


「愛?ちょっと待ってよ、本当に?」


「優希・・・・・・じゃなくて、運転手への感謝の気持ちだから」


「愛ちゃん、全然運転する気ないの?」


愛が私を運転手にさせようとしているということはたぶん有り得ないと思っているが、もし本当に運転手にさせようとしているなら、『世界を温厚に破滅することを誓いますTシャツ』や『助けてくださいTシャツ』を温泉旅行から帰った後に着ているかもしれない。


一番少ない金額の硬貨と千円札という普通ではない組み合わせで成り立っている異質なタワーを作り上げた私の前のプレーヤーの愛には度肝を抜かれていて、私の鞄に詰め込まれている美少女のイラストが中心に描かれたTシャツが『愛っ!』と叫んでいてもおかしくないほどで、Tシャツの中心で愛と叫ぶ少女の顔が思い浮かぶ。


「次は優希ちゃんの番さ」


遊ぶときに『ミドリのクマTシャツ』を着るということくらい無難な50円玉で行くか、『キス魔好き』という回文のように少しエキセントリックに1円玉で攻めるか、お賽銭の時のように『二重にご縁がありますように』と10円玉2枚と5円玉1枚の計25円にするのか悩んだが、結局100円を1枚置いた。


「グラグラはしてないけど、もう危ないよね」


「今、1106円か」


「千円とちょっとじゃ、運転はしたくないな。次は舞だよ」


「優希への謝礼金として、私はこれで」


舞が財布から出した外国の硬貨も気になったが、舞が口から出した『優希への謝礼金』という言葉がどうも引っ掛かっていて、私を陥れるための三つ子ぐるみの犯行ではないかと疑い始めた。


「舞ちゃん?どこの国のお金?」


「セントだよ。アメリカね」


たしか1セントは1円程度で、さっき愛が感謝の気持ちとして置いた『千円札』も、今、舞が置いた『セント』も同じ『セン』が付くが、格が違くて謝礼金にはなっていなくて、『出た、待ち伏せ!咽ぶチマタで』という回文くらい意味が理解しにくい。


元気さんの順番になり、元気さんは不敵な笑みを浮かべていて、瓶に入ったレモン汁が何らかの刺激によって割れて、回文の『レモンがん漏れ』みたいな感じになるような感じで、何か企んでいることががん漏れしていた。


「俺の番だな。俺は1銭だ。いやいや、売ったら10円くらいにはなるからね!」


回文は好きで他にも『侍!ラムさ』や『西から菓子に』などなど思い付いたが、意味はよく分からないしクオリティーはかなり低くて、もし元気さんが出した1銭が100倍の10円になるとしてそれが私への謝礼金だとしたなら、回文のクオリティー同様かなり低いと言わざるを得ない。


「よし、大丈夫だ」


「そろそろ危ないよね。次の唯が倒しちゃうんじゃない?」


「私、絶対勝つから。静かにしててよ」


「何、そのでっかいコインは?」


角煮がお皿の上などの食関係以外の場所にいたら少し見つめてから回文の『角煮の肉か?』を使うかもしれないが、今の私はコインタワーゲームに出てきた少し場違いなコインチョコに『コインチョコか!』と思っている。


たぶんチョコレートの糖分で運転手の頭の回転をよくさせようという心遣いなのだろうけど、私はチョコレートよりも『うどん』『そば』『きしめん』『スパゲッティ』『ラーメン』という5種のレンジ調理出来る冷凍麺がパックになったものや、沖縄そばつゆ缶みたいなものが欲しいので、チョコレートなんてどうでもいい。


「セーフ!」


不気味なタワーだなと思っていると、さらにタワーに不釣り合いなものを次の愛が手で持っていて、それは反時計回りの腕時計くらい私が要らないもので、要る要らないを考えている時点で私は負ける気になっているのかもと気付き、ため息をついた。


「よし、いくよ!」


愛が持っていたのはブラックの缶コーヒーで、ブラックコーヒーを甘くする器具やブラックコーヒーを飲んでもトイレが近くならないようになる器具があるのなら貰ってもいいなと考えていたが、愛がブラックコーヒーの缶を置いてすぐにタワーは倒れた。


「はい、じゃあ運転手は愛ちゃんね」


「愛!頑張ってね!」


愛なら愛車を運転させても大丈夫そうだし、負けた運転手に愛が眠気覚ましとしてあげようとしてたであろうブラックコーヒーを自分で飲んでもらい、私があったらいいなと思っている【包丁と火を使わず、切る焼く煮る蒸すが一つで出来る電子レンジ専用容器】みたいに万能で何でも出来る愛には、タワーのお金と食料を養分に頑張ってもらいたい。

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