体育祭
義理の妹、奈由と出会いその3日後、学校登校日だった。
「今日から学校か」
和人がそう呟くと後ろから、
「オッス!綾乃。春休み中元気だったかー?」
友人の原田竜馬が話しかけてきた。
「あれ?綾乃、前にいる娘誰?小学生の妹か?・・・でも、妹いなかったよな?」
そう、和人の前にいるのは義妹である奈由だった。今日から和人たちが通う西陵高校に転入することになっていた。
「一応、俺の妹だ。義理だけどな。あと、俺たちと同い年だ。」
「まじか!綾乃、お前の妹としてはもったいないな!」
笑いながら竜馬は言うと、
「クソ兄貴、早く行こ」
「はいはい。・・・竜馬、先に行ってるぞ」
竜馬は手を振りながら、
「おうー。行ってこいー」
そのあと、教室に入りホームルームが始まった。
「今日は転入生を紹介しまーす。さぁ入ってー」
担任の松井が言うと、扉が開き奈由が入ってきた。
「まさか、同じクラスになるとは」
独り言が聞こえたのか、すぐに竜馬に話しかけられた。
「綾乃!同じクラスになるとは思わなかったな!」
「そうだな」
前で、奈由が自己紹介すると、
「金髪碧眼じゃん!可愛いー!」
「だよねー!ハーフなのかな?」
「絶対ハーフだよ!!」
と、女子の声が聞こえて、
「美少女きたー!」
「めっちゃ可愛いな!付き合いてー!」
「いやいや、お前じゃ無理だろ!」
と、男子の声も聞こえクラス中が騒がしくなった。
「すごい人気だな。奈由ちゃん」
後ろから竜馬が話しかけて、
「そうだな。まぁ、美人だしな」
すると、横から女子の声がした。
「いやー、あの美少女和人くんの妹だなんてー」
そう言ったのは、和人の幼馴染である橋本瀬奈だった。
「瀬奈、いたのか」
「ちょっと酷くないー?和人くん」
「べつに酷くねぇだろ」
そして、先生が奈由の席を指名した。
「それじゃあ、奈由さん。綾乃くんの席の隣に座ってね」
「わかりました」
「・・・なんで、俺の横なんだよ」
和人は少しだけそう思った。
「さて、もう少しで体育祭があります。練習頑張ってください!」
担任が言った。
「体育祭かー」
「なんだー?綾乃。そんなに嫌かー?」
「当たり前だ、竜馬。運動は好きじゃねぇ」
-まぁ、頑張るか。
和人は、そう思いながらため息をついた。
次の日、ホームルームで出場する種目が書かれた紙が配られた。
「俺は、借り物競争と二人三脚か」
「綾乃、その種目は大事だから頑張れよ!」
「はいはい。二人三脚って、誰とペアなんだ?」
「綾乃、隣の人を見てみな」
「は?・・・まさか、奈由か?」
「・・・うん」
「綾乃、嫌だったか?」
「別にいいよ・・・奈由、放課後練習するぞ」
「・・・わかった」
和人と奈由は放課後、中庭に来た。
「さて、練習するか」
「・・・うん」
和人は奈由の左足と自分の右足をひもで結んだ。
「よし、やるか」
「ねぇ、クソ兄貴。・・・身長差激しくない?」
「まぁそうだな。でも、大丈夫だろ。俺らならできる」
「・・・うん」
「よし。せーので行くぞ。せーの」
そう言った途端、奈由がいきなりこけた。
「奈由!?大丈夫か!?」
「うー・・・もう嫌だー!」
「嫌って言うなよ。ほら、練習するぞ」
和人は奈由に手を伸ばした。そして、体育祭前日まで練習した。
体育祭当日。
生徒は体操服に着替え、運動場に集まっていた。
「とうとうこの日が来たか。奈由、練習の成果見せるぞ」
「クソ兄貴、それくらい当たり前だから」
そして、体育祭が始まり1種目目が徒競走、2種目目が綱引きを行っていった。
そして3種目目、二人三脚が始まった。
「綾乃、奈由ちゃん。2人とも頑張れよ!」
「頑張ってね!和人、奈由っち!」
竜馬と瀬奈は2人を応援して見送った。
2人はスタート位置についた。
「奈由、行くぞ」
「わかった」
「位置について、よーいドン!」
合図により、たくさんのペアがスタートした。しかし、ほとんどのペアがスタートの位置でコケていた。
「よし、いい調子だ。奈由」
「うん!」
そのまま独走して、ゴールした。
「練習してて良かったな」
「だよね」
2人は苦笑いしながら、クラスメイトのいる所に戻った。
「お疲れ様。綾乃、奈由ちゃん!」
「竜馬、運が良かっただけだ」
「そっか。次も綾乃の番だぞー」
「わかった。行ってくる」
次の種目は借り物競争だ。和人はスタート位置についた。
「それては、位置についてよーいドン!」
和人は一直線に紙が置いてある場所に行った。そして、紙をめくると、
大事な人
と、書かれていた。
「大事な人って・・・」
そのとき、ふと頭の中で奈由の顔が見えた。
「仕方ないな」
そして、和人は奈由のところに行った。
「奈由!一緒に来い!」
「え!?」
奈由の手を取り、走った。ゴールまであと半分ってところで、ペースが落ちた。
「奈由!?」
「だめ・・・もう走れない・・」
「仕方ねぇ」
和人は奈由を抱き抱え、お姫様抱っこをした。
「え!?ちょっ!?」
「じっとしてろよ」
和人はゴールまで一直線に走り、ゴールした。
「お兄ちゃんのばか・・・」
「ん?なにか言ったか?」
「うっさいばか!!早くおろせ!」
和人はゆっくりと奈由をおろした。奈由は瀬奈のところに行き、
「奈由っち、良かったね!」
「・・・うん!」
こうして、体育祭は幕を閉じた。