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レベル12

『信じられないことですが、まさか人間がわれわれの学び舎に侵入するというのですか?』

『あなたは?』

 と、アニーがなにやら聞いた。

『失礼しました。近衛の方。私はキア・クォンセット・ニューズ。この学び舎に通う学生のひとりです』

『あら。礼儀正しいことね。ミニーも見習いなさい』

『なんか、いけすかない感じです』

『こらっ』

『つーんです』

 ミニーはなんだかあまり気に入らないご様子。

 確かにちょっと視線がきついかなと思うが、そんなもんかね。

 わたしなんか、もうとんでもない美人ちゃんを目の前にして、テンションあがりまくりですよ。

 恥ずかしすぎて目を覆っちゃうくらい。

 アニーは続けて、なんか言ってる。

『私はアニー。こっちはミニー。そしてクインは知ってるわね』

『ええ、誇り高き我らが盟主のことを知らないはずがありません。その子のことはわかりませんけれども』

『この子はナイっていうの』

 アニーの言葉の前に、クインがいつものようにゆるやかな調子でわたしの名前を唱える。

 たぶん、紹介してくれているんだろうな。

 ここはわたしも、是非とも自分を売りこまなくては!

 エルフ友達。略して、エル友ゲットだぜ!

「ナイ! 名前ナイ!」

『この人間は……、言葉もまともに喋ることができないのですか?』

 あ、これは……。

 あかんやつや。

 なんというか、電車に乗っていると、なぜか隣に座っていた二十代くらいの清楚系お姉さんが突然席を立って、目の前に空いていた席に軽やかに移ったときくらい気まずい。

 べつに移らなくてもいいぢゃないの。どうしてそんなことするかなぁ。

 おっさん臭が……、おっさん臭が悪いんですかね。

 ううう。

「この子はわたしの子なの。できれば仲良くしてね」

『は? 人間がクイン様の子? 本気でおっしゃってるのですか?』

『いい加減にしろです。ナイを悪く言うやつは斬り潰しますですよ』

 明らかに怒った声なのはミニーだ。

 怒った顔もかわいいよなんていうけれど、ミニーの実力を知っているわたしからすれば、今の状況はこわい。

『人間の肩を持つというのですか?』

『ナイは人間だけど、おまえは、ナイをナイとして見るです』

『けがらわしい。人間は人間です。いついかなるときも世界の敵。その事実を忘れていいはずがありません。クイン様もお考え直しください』

『いいえ。この子は私の子よ。いついかなるときもね』

 芯の通ったクインの声。

 それが場を制したようだ。

 エルフちゃんは「くっ殺せ」とでも言いたげな表情で、押し黙っている。

『ま、仲良くね』

 アニーがなにやら言ってる。

 あ、ミニーが、べーってしてる。

 ここでも、同じ表現なんだなぁ。なにげに悪意の表現ってお初じゃないかな。

 脳内にめもめもっと。

 結局、うやむやになったせいで、彼女の名前を覚え損ねてしまったけれど、今はしかたない。

 わたしが学校に通うことになれば、必ずやチャンスはあるだろうし、できれば友達になりたいなと思う。

 べ、べつに下心なんてありませんよ。ええ、ありませんとも。

 わたしはイザベル・アジャーニのような大人の女性がうんぬん……。

 まあ、うん。

 友達になりたいです。

 エル友ゲットしたい。



 校舎の中はシンと静まりかえっている。

 幾人かの生徒たちはわたしたちの後をついてきているみたいだった。

 たぶん、純粋な好奇心だろう。

 さっきのエルフっ娘はどうもいないみたい。

 なんだか知らないけれど怒ってたもんなぁ。

『さっきの子。覚えがあるわ』

『アニー。知ってるの?』

『ええ、数年前に人間たちが森を越えてきたときがあったじゃない』

『冒険者たちでしたっけ』

『そうよ。ただ私たちにとっては侵入者でしかなかった。いくら悪意がなかったとしても、領域を侵犯してきている以上は戦わざるをえなかった』

『そんな……数人程度でしょ』

『数人でも、いや――ひとりでも同じことよ。もしそのひとりが王の命を狙う暗殺者だったら? 数が少ないことは言い訳にはならない。あいつらだってきっとそのことは知っていたはず』

『話し合いはできなかったの?』

『いえ。なぜかはわからないけれど、彼らは恐慌状態だったわ。たぶん森を抜けてきて、モンスターに襲われて、ようやく命が助かったと思ったら、そこはエルフが弓をもって待ち構えていて、たぶん怖かったんでしょうね。いきなり武器を向けられたらこちらとしても話しようがないわ』

『そう……』

『で、迎撃戦になったわけだけど、少なからずこちらにも被害がでたの』

『まさか』

『ええ、彼女の母親は殺されたのよ。人間に』

 クインの顔が悲しげに染まった。

 どうしてだろう。

 なにやら深刻そうな話をしていたのはわかるのだが、内容は読み取れなかった。

 もどかしい。

「クイン……どうしたの?」

 服の袖をひっぱって、わたしは聞いた。

 聞いても意味はわからないと思うけれど、わたしが心配していることは知ってほしかった。

『ありがとう。ナイはちっとも悪くないのよ。ただ、どうして人間と私たちは争わなければならないのかしら。きっと手をとりあえるはずなのに』

『まあ、ボクの刀で顔をぺちぺちすれば、すぐに誰とでも仲良くなれるですけど』

『あのねえ……ミニー。あなた自重しなさいってさっき言ったばかりでしょ。言っておくけど、キアに斬りかかるのは禁止します。いいわね』

『えー。なんだかそのままにしておくとナイがいじめられそうですよ?』

『それは……、ある程度はしかたないのよ』

『何がしかたないですか? ボクにとってはナイのほうが大事です。ナイが傷つけられたら守る。それのどこが悪いですか?』

『人間であるというだけで、キアはナイを許せないのよ。わかってあげろとは言わないけれど、その心情は理解できるわ』

『納得も理解もする必要ないです! ナイが泣いてたら、絶対に許さないです。ねー。ナイ』

「にうっ」

 いきなり抱きつかれたので、変な声がでてしまった。

 そのままだと歩きにくいことこの上ない。

「ミニーごめんなさい……」

『なぜ謝るですか……』

 申し訳ないけど、君を背負っていくことはできないのだ。

 というわけで、到着したのは、奥まったところにある部屋だ。

 たぶん、状況的には校長室とかそんな感じの場所だろう。

 つまり、この建物の主がいるに違いない。

 いちおう、入る前に自分の容姿チェック。

 ワンピ装備のわたしとしては、特にみなおすべき点もない。

 麦わら帽をかぶってないのが、なんというか不完全であるが、いたしかたなし。

『失礼します』

 あ、クインが普通にノックしてる。

 こっちでも、そういう文化やっぱりあるんだね。

『その声は姫様? いま開けますじゃ』

 ドアは向こう側から開いた。

 そこにいたのは、蛙だった。

 蛙が服着て、めがね装備している。蛙顔の人間とかそういうんじゃなくて。

 完全に蛙。

 わたしと同じぐらいの小さな身体だけれども、まごうことなき蛙だ。

 でも、しゃべってる。

 二足歩行してる。

 クインやアニーに比べたらちっちゃいが、わたしと背丈は同じくらいだ。

『げこげこ』

 びくっ。

 あごの下がぷくぷく膨らんでるんですが。

 た、食べられたりしませんよね。

 下手すると、まるのみ陵辱案件もありえそうなサイズなんですが。

『おお。姫様ではないですか。学び舎になんの御用ですかな』

『爺。姫様って呼ばない約束でしょう』

『そうは言ってもですなあ。わしのような老いぼれにとっては、昔の出来事のほうが印象深い。姫様がまだ幼かったあの頃がなつかしゅうて、たまらんのですじゃ』

『まあ、クインはかなりのお転婆だったから、印象に残るのもしょうがないわね』とアニー。

『んもう』

 クインが少し楽しげ。

 意味内容は例によってまったくわからないけれども、さっきの悪い空気が晴れたみたいでよかった。

『おお、わしとしたことがげこげこ。こんなところで立ち話をさせてしまうとは、年をとるといかんのう。ささ、皆様お部屋の中に入りなされ』

 部屋の中に通された。

 中はクインの家とさほど印象は変わらない。

 木造の落ち着いた感じの部屋。

 中には牛革と思われる重厚なソファと、ローテーブルが置かれてあって、部屋の奥にはちょっとサイズ小さめの事務机が置かれていた。

 たぶん、蛙さんはそこで事務作業をするのだろう。

 お、跳ねた。

 移動が若干跳ね気味なのは、まあ蛙だからね……。

 そうとしかいいようがないよ。

 みんなはソファに座った。

 クインとミニーが両隣に来る感じだが、ソファの横幅的にはギリギリだ。

 というか、クインが大きすぎて、実をいうとソファの半分くらいを占拠している。

 クインからニュアンスで膝の上にのるか、というような提案を受けたけれど、さすがに辞退した。

 みんながいる前ではさすがに恥ずかしいかな。

 それに、クインがわたしを必要以上に甘やかしていると思われたら、クインの評価が下がってしまう。

『水、そして着火』

 蛙さんが、知ってる言葉を使っている。

 あれは『水』と『着火』。対象は魔法瓶のような筒状の物体だ。

 どうやら、文字通りの意味での魔法瓶らしく、今の一瞬で、湯気が立ち上っていた。

 えーっと。

 やっぱり魔法は魔法なのかな。

 今の様子だと、手品でもない限り、いきなり筒の中にお湯が出現したように思えるんだけど。

 この世界の物理法則は元の世界と変わらないとすると、質量保存の法則も当然あるように思えるし、その物理法則が崩れたとすれば、それは物理以外のなんらかの法則が働いた結果としかいいようがない。

『ほほ、神言に興味がおありかな。人間のお嬢さん』

 蛙さんからなにやら言われた。

「?」

『この子、まだ言葉がよくわからないのよ』

 クインが『わからない』って言った。

 つまり、わたしが言葉を知らないことを説明してくれてるんだろう。

『ほほう。言葉がわからないのですか』

「ナイ。わからない。ごめんなさい」

『おや。姫様。この子喋っておりますがの』

『今朝おきて、今まででだいぶん覚えたようね』

『ふうむ。奇妙なこともありますのう。言うまでもないことじゃが、この大陸の言葉はたったひとつ。神の言葉と呼ばれるもののみですじゃ。それを知らないということは、言葉を知らぬ獣のもとで育ったか。それとも世界の理の外側から、来訪したかに限られますのう。ご存知のとおり大陸の外から異邦人が来ることはほとんど考えられませぬがゆえ、おそらくは異世界からの来訪者ということになるのじゃろうが、最近では周りの海に船が沈んだという話は聞かん。また大陸外の言葉も共通点が多く、片言であっても通じることが多い。となると……』

『爺。昔みたいに話が長くなるのはイヤよ』

『たいした話ではないのですがの。この子はおそらくは世界の理からはずれた者であろうと思われますじゃ』

『異世界からやってきたというの?』

『そうですじゃ。なぜなら、この子は神の言葉を"翻訳"してますからの』

『翻訳ってなに?』

『翻訳とは神の言葉においても、ただの概念操作と捉えられておりますがの。例えば、われわれの話している言語にも地方において微妙な差異が生じておりますじゃろ。西のほうでは、そうですの意味が"せやで"といわれたりもしとるわけです。そういった異なる言語どうしを自身の言葉に置換することを翻訳と申しますのじゃ。ただ、われわれの場合、使っている言語体系そのものは統一されとりますので、厳密な意味では翻訳とは呼ばないのかもしれませんがのう』

『それが翻訳……。つまり、ナイは異世界の言葉を知っている?』

『そうですじゃ。まったく言葉を知らない子どもが、概念や言葉の意味を知るには時間がかかる。赤ん坊が言葉を覚える過程は、頭の良し悪しにかかわらず、一定の熟練度のようなものを要するのですじゃ。要するに、概念や意味を知っているからこそ、わずかとはいえ、たった一日で言葉を覚えたのではありませんかな』

『そうなのね。ナイ。あなたはどこから来たの?』

 クインの言葉はわたしの答えを待っているようではないようだった。

 蛙さんとクインの言葉はかなり早くて、わたしにはよくわからない。

 ただ、蛙さんはどうもその言葉の調子から考えるに、すごく高尚なことを言っているよう思えた。

 わたし、邪魔しないように黙ってますよ。

 沈黙は金なんです。

 前世では沈黙しすぎて、海の底に沈んでいきましたけどね。

『まあ、ここで考えてもいたしかたないことですじゃ。ところで、姫様。今回、こちらにいらっっしゃったのは、この子のことですじゃろ?』

「ええ。そうよ。この子はナイっていうの。私の子として育てることにしたわ』

『ほっほ。そりゃまたすごいことを考えつかれますのう。げこげこ。どれ、私にもお嬢様のことをご紹介くだされ』

『ええ。ナイ。名前教えてあげて』

 おお。今度はちゃんと応えるのを求められているようだ。

 名前といってるから、自己紹介しろってことだよね。

「名前。ナイ」

『ほっほ。姫様に似て、かわいらしいお嬢様じゃのう。わしの名前はオベロンというのですじゃ』

「おべるん」

『オベロンじゃ』

「おべろんじゃ?」

『違う違う。オベロンじゃよ』

「ちがみゅちがみゅ。おべろんじゃよ」

 ひぃん。

 この人、名前がころころ変わるんですけどぉ。

『ナイ。この人。オベロンっていうの』

 おお、クインのナイスアシスト。

 名前だけ言われればさすがにわかる。

 オベロンね。

 発音難しいけど、ようやくわかったぞ。若干巻き舌で、オヴェロォンって感じね。

「オベロン。はい」

『なんともはや。姫様が五歳くらいだったときのころを思い出しますのう』

 いつのまにやら差し出されていた飲み物を飲み飲み。

 おお、これ紅茶だ。

 ということは、目の前の蛙顔したオベロンも紅茶を飲んでいるってことになるけれど。

 紅茶を飲む蛙とは、これまたシュールな光景だ。

『それで、どうなのかしら』

『姫様。人間を学び舎へ招くことにご懸念されてますかな』

『ええ。アニーにも言われた。でも、ナイは外に行きたがってた。だから、私がそれを止めるのはよくないと思ったの』

『なるほど。確かに学びの機会は誰にでも平等に訪れるべきものですじゃ。しかし、言葉も喋れぬ幼子がいきなり学び舎に来るというのも変な話ではないですかな』

『ダメだっていうの?』

『いやいや。そう、早急に捉えられては困りますじゃ。姫様の大事な御子を託されるのじゃ。姫様の考えを知っておかねばならん。そう思ったまでのことですじゃ』

『爺。私はできるだけナイが健やかに生きていければいいと思ってるの』

『学び舎にはさまざまな種族がおりますのう。例えば、人間を心の底から憎んでいる者もおりますじゃ。そういったものがおってもよいとお考えかな?』

『それは困るわ』

『困る。ほっほっほ。姫様。それではたちゆきませんぞ。人はそれぞれ己のなかに生じた信念と想いに縛られておりますじゃ。人間は悪であるとするのもまた信念。そうではないというのであれば、それもまた信念として、示さねばなりますまい。ナイお嬢様が示せるかという話でもありますがのう』

『いつかは、ナイ自身が立ち向かわなければならない問題よ』

『姫様は今でなくてもよいとお考えなのではないですかな』

『それは……』

『大方のところ、アニーにそそのかされでもしたのじゃろう』

『そそのかすなんて。失礼ね。まったくそのとおりだけど』

 アニーが少し楽しげに口を開く。

 ふうむ。

 様子見様子見。

 まだわたしは黙っていたほうがよいですよね。

 たぶんこれお受験の面接みたいなものだ。

 小学生の頃は、まだ両親とも生きていて、わたしも小学校お受験は受けたことがある。その末路として、底辺の中小企業の平社員なのだから、両親には申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが、しかし、今はその経験が生きている。

 お受験でのポイントは、騒がないことだ。

 できるだけお行儀よく、問題を起こさないおとなしい子を演じることだ。

 まあ、社会人になるときの、御社のため身を粉にして働きますという態度ではない分、気は楽である。

 わたし、いい子。

 わたし、いい粉。

 ふぃへへ。

『あ、ナイがなんだかわからないけど笑ってるです。かわいいです』

「ん」

 ミニーにわたしの不気味な笑いがこぼれていることを指摘されてしまった。

 とっさに両手で自分の口をふさぎ、沈黙体制を保持する所存である。

『ナイお嬢様。姫様の御子として、あなたはどうなのですかな。人間に対する偏見に立ち向かわれる勇気はおありかな?』

 おお、今度はオベロンになにか問われているぞ。

 やっぱり、口を開いていたのがまずかったのか。

 なにか言わないと、受け答えもできない馬鹿な子と思われてしまう。

 えーっと。うーんと。

 どうする?

 何を聞かれているかもわからないのに、答えようがない。

 しかし、こういった場合に『わかりません』は悪手だ。

 面接のときに、わからないと答えることも時には大事だけれども、わからないと答えるよりは、わかる努力をしているように見せたほうが得だ。

 コミュ障にはなかなか難しいことだけれども、わたしは努力だけは怠らなかった。

 そんなときのための準備を怠らなかったのだ。

 つまり――。

「ナイ。ここ好き」

 なんだかよくわからないけれど、感動系に持っていく作戦である。

 これをわたしは浪花節作戦と呼んでいた。

 いまどきの効率重視のクール系会社には通用しないかもしれないけれど、多くの場合、上司におさまっている人間はまだまだ義理や人情などを重んじる人も多いわけだし、誰だって好きと言われていやな気分はしない。あまりにも好き好き言い過ぎて嘘くさくなる危険性はあるけれども、面接みたいなある種の演劇のような場面では、むしろ嘘くさいくらいがいいんだ。

 結果は――、

『ふむ。ナイお嬢様は見た目以上に恐ろしく聡明らしいのう……』

『ナイ。あなたはすごいわね』

 クインに撫でられて、わたしも一安心です。

 すごく肯定されているのを感じます。

 どうやら間違ってなかったみたいだ。

『まあ、ナイお嬢様がここが好きであると、つまりここで学びたいというのであれば、とめはしますまい。ただ、これだけは最初に申しあげておきますがの。わしはナイお嬢様をほかの子と平等に学ばせるつもりですじゃ』

『特別扱いはしないってことなのね。それはもちろんそうしてちょうだい。私のときみたいに、ほかの子と遊ばさせてあげて』

『わかりましたですじゃ。さて、そうなれば、さっそく体験入学にいたしますかのう』

『え、今日から? ずいぶん早いわね。せめて一週間後くらいを考えていたのだけれど』

『早ければ早いほどいいですじゃ。ちょうどクラスも始まったばかりですしのう』

『あ、待って。オベロン教授』

 と、話にわりこんできたのはアニーだ。

『ん。なんですかな』

『実は、ナイだけでなくて私の子もいっしょに学ばせたいんだけれども』

『ほう』

『ほら、ミニー。挨拶しなさい。刀は禁止! いいわね刀は禁止!』

『さすがにわかってますよぅ。ミニーです。よろしくです』

『元気なお子さんじゃのう。もちろん、学ぶことに問題はないぞい』

『よかったわ。危険物禁止とかにならなくて』

『ここでは剣技とかも教えておるしの。アニーの子であれば、当然強いのじゃろ』

『まあ、そうね……いろいろと、問題はあるけど、強いのは強い……かしら』

『なら、その子が入ればほかの子の刺激にもなるじゃろう』

『刀で語り合うのは得意です!』

 なんだかよくわからないけれど、ミニーもいっしょにここに通うみたいだ。

 わたし、本当の意味で小学生になります!



 覚えた言葉

『ナイ』『クイン』『名前』『はい』『いや』『倒れる』『アニー』『どうしたの』『料理』『着火』『消火』『水』『おいしい』『好き』『ここ』『葉っぱ』『空』『お月様』『卵』『お日様』『あおむし』『おなか』『ぺこぺこ』『りんご』『梨』『すもも』『いちご』『さなぎ』『ちょうちょ』『タルサ』『ミニー』『ごめんなさい』『友達』『ありがとう』『わかる』『いっしょ』『オベロン』

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