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妹は眩しく、姉は陰る

知り合った姉妹との会話。

~いつものスザクの教室~



 兄弟とは、姉妹とは。

 目を閉じ考える。

 生まれた時から覆せない上下関係?。

 いや、俺の場合そんな堅苦しいものではなかった。

 絶対に言いたくないが、強い兄は憧れで、目標だった。

 兄も俺をかわいがってくれていたと思う。


 なら、目の前のこの二人は?

 純粋で才能あふれる妹と、明るさの影には自分を卑下し劣等感を感じている姉。

 姉はその気持ちを妹には見せず、妹には姉の気持ちは分からない。

 彼女たちの関係はパッと見、良好だ。

 なら、他人が口を出すのは余計なお世話か?

 触る事の方が間違いか?

 答えは……。



「ちょっと!聞いてるの?ダーリン!」

 

 妄言に反論するために、目を開ける。

 白い壁に、ガラスの窓、いつもの教室だ。

 そして二人の制服の女の子。


「どこの誰の事だよ」


 最近、とあるおせっかいを焼いてから彼女、ミライの妹、ユメは俺に懐いている。

 ストレートな好意は苦手ではない、寧ろ好きだ。

 

「ユメ、その呼び方じゃハツガ君困るよ」


 苦笑しながら、姉のミライがたしなめる。

 妹はというと、唇を尖らせ、不満がありそうだ。


「えー、いいじゃん。ハツガにぃとアタシの仲だし。お姉ちゃんヤキモチ?」


「ち、違うって!そんなことより、召喚の説明、聞いてなかったんだよね?」


 俺に視線が集まる。

 そんな話……、ああ、俺が召喚について質問したのが始まりだったか。

 こう、コミュニケーション的な軽い話のつもりだったが、長々と続き、気が付いたら、眠りそうだったと。


「確か、誰でも発動はできるけど、ほぼ応えてくれないとかそんな話だったろ?」


「もー、最初の最初じゃない!」


 と、ユメが両手を頭の上で振り回して、怒っている。

 いつもの落ち着きのない様子は無く、所謂お姉さんしているミライがフォローしてくれる。 


「ユメぐらい召喚の魔法が得意だと、向こうから助けがたまに来るんだよね?」


「そうそう!あの、野蛮男と喧嘩になった時、子供のドラゴンがハツガ兄を呼んできてくれたみたいにね!あの子にはホント感謝してる!」


 そうそう、子供のドラゴンを追いかけたら、彼女が地の守護者と口喧嘩してたな。

 魔法の撃ち合い寸前の状況だった。


「でも、なんでハツガ君のとこ行ったんだろね?」


「もちろんアタシとの運命!」


 元気に言い放つ無邪気な彼女を微笑ましく眺める。

 人の縁とは不思議な物ではあるが、運命と聞くと個人的に胡散臭さを感じる。

 だからと言って、彼女が喜んでいる姿に水を差すつもりはない。



「……あと、ちょーっとだけ関係するのは、ハツガ兄が竜殺しの特性持ってるからじゃない?」


 そっちがメインだろ。

 成る程な、自分にとっての天敵を強者と判断したか、大した勇気だ。


「うわー、ハツガ君がドラゴン倒した事あるって噂本当だったんだ」


 ミライが目を輝かせてこっちを見る。

 素直な瞳が眩しい。

 特に気にしていない様子で、ユメの説明が続く。


「で!基本的に召喚は、呼ぶ相手任せなんだよー。人なんて、下位の下位な存在だから、力を貸してー!ってお願いするの。それを認めてくれたら魔力をあげて、協力してもらえる感じ!」


 要するに物好きかお人よしの魔物に助けてもらうのか。

 普通の人だと、承認されない助力の申請でもなぜかユメは通りやすい。

 だから天才と言われているのだろうな。

 

「使いこなせる人が少ないから、研究が進んでないんだよね。何を呼べて何を呼べないか、なんてまだまだ分からないし。だからアタシは成長したドラゴンくらい召喚してみたいんだー」


 ユメが楽しそうに語る。

 この子は、可能性の塊なのが知り合って間もない俺でも分かる。

 ふと、ミライが悲しそうな表情が目に入る。

 声を掛けようと口を開いたが、ユメもいるこの場で何を言う事が正解か思いつかず、言葉が出ない。



 無邪気なユメが俺の視界に飛び込んできて話を続けてくれる。

 人差し指を立てここが重要なんだから!とかわいいものだ。



「一番大切なのは相性!相性がいい子は呼びやすさ、魔力の消費が段違い。ハツガ兄もお姉ちゃんも召喚使ってみる時は、自分と縁のある子から試してみるといいよ」


 自分と縁のあるヤツねぇ。

 何かを飼っていた記憶もないし、パッとは思いつかない。


「でも、できないよね。普通の人だとさ」


 ……。


「うおおおお!!!俺も召喚やってみてええ!!!!いやー、簡単に召喚できるなんて、流石ユメだな!」


 ミライの言葉にわずかながら、冷たさと棘を感じた。

 それをユメに感づかせないために大袈裟に言葉を付け足す。

 そんな俺の言葉も、ミライには逆効果だったようで、見るからに表情が曇る。

 な、何かミスったのだろうか。


 狼狽えている俺と、不機嫌そうなミライ。

 二人して黙ってしまっている空間で、ユメが不思議そうに俺達の顔を交互に見る。

 

 沈黙を破る様に、ガラッとドアが開き、黒髪の幼馴染サクラが教室に入ってきた。



「スザク先生が帰って来てないから、ここでは授業がないのにみんな勉強熱心……と思ったけどハツガがいるから、それはないか」


 オイ。

 確かに、この町に来てから勉強なんぞに参加しないでフラフラしているが、その扱いは。

 いやでも、微妙な空気だったから助かった。

 

「あら、ユメちゃん。このクラスに戻ってこれる様になったの?」


「あ、サクラちゃん!そうそう、あとはスザクせんせが戻ってきたら終わり!」


 入ってきたサクラを見るなり、飛びつくようにそっちに向かいながら、元気に言葉を返す。

 二人は知り合いだったのか。

 あんなに穏やかに人と接するサクラは、久しぶりに見た気がする。

 村で家族と話している時のそれに近いな。

 二人が仲良く話しているのを、ぼんやり眺める。

 まるで、姉妹……そういえば。

 本物の姉である、普段からは想像もできない、表情の暗いミライに向き直る。


「なーに、落ち込んでんだよ」


「……だって、サクラさんも……ハツガ君もユメとだと私なんかより、すぐ仲良くなって……」

 

「それで、自分は妹より不出来な人だーって、自分傷付けてんのか?」


「落ち込むくらい私の勝手でしょ。……ほっといてよ」


 そう言ってそっぽを向いてしまった。

 ったく、普段元気に振る舞っている友人が、負のオーラ撒き散らかしてるの放っておけるかっての。


「姉妹だからと言っても、別の人物だ。姉が優れている必要なんて全くない。それどころか、生まれる前から、お前はユメの味方だし、ユメは生まれた時からお前の味方だ。自分ができない事は助けてもらえばいいし、相手ができない事は助けてやればいい。味方なんだよ、とにかく」

 

「マジになりすぎでしょ、そんな正論ダサいよハツガ君」


 こっちを向く気配もなく即行でダメだしされる。

 はぁ、あんまり届いてないみたいだな、俺の言葉。

 真面目な話ではダメとなると、どうしたものか。

 とりあえず、趣旨を変えよう。


「落ち込んでいる顔はお前には、似合わない。というか、笑顔がいい。お前の笑顔は心に響く」


「ほ、ほんと!?」


 すごい勢いでこっちを向いたミライにたじろぐ。

 元気づけるため、大袈裟に言ったが嘘ではないはず。

 そして、一番言っておかないといけない事を伝える。


「ユメが地の守護者ガンテに、突っかかってた理由聞いてるか?」


 ううんと、首を横に振り、知らないと返される。


「姉貴を馬鹿にされたのが許せなかった。あいつは、お前が大好きなんだよ。少しでいいからその気持ちを汲んでやってくれ」



 この言葉を発した瞬間、ミライの返事を聞く間もなく、慌ただしく教室のドアが開けられる。

 可愛さを持った女性が年を取ったという感じか。

 ミライやユメの面影が見える小柄な女性が、息を切らして疲れた様子で入ってきた。


「お母さん!?」


 サクラとお喋りしていたユメが、驚いて女性の方へ向かう。

 二人の母親か。

 パッと見似ていると思ったが……母親ァ!?

 あの容姿で親なのか、世界は広いなぁ。


「ユメ!やっと見つけた。ここに居たのね」


「どうしたの?」


「どうしたの?って今日は、ザストルの村の神父さんが来る日でしょう?早く帰って来なさい」

 

「えー、つまんないからやだよ」


 ユメの反応からして、退屈な事をしているようだ。

 勉強やら、真面目な話でも長々と聞かされているのだろうか。


「ほら、わがまま言わないで。あなたの召喚魔法のためなんだから」


 ユメの顔は明らかに不機嫌そうだが、渋々と母親について行く。

 ドアへ向かいながらこちらには、満面の笑顔で手を振る。


「じゃあね、サクラちゃん、ハツガ兄、お姉ちゃん」


 俺も頬を緩め、彼女に応えるよう手を振る。

 母親の方は、俺の名前を聞くと、パッと振り返りバタバタとこっちに来る。

 ミライには目もくれないで、一直線に来たかと思えば、俺の手を握る。

 何かの花の匂いかは分からないが、強めの香水の匂いがする。


「ああ、貴方がユメを悪漢から守ってくれた方なのですね。本当に感謝しております。聞けば、死霊人も撃退なされたとか。これからも、ユメと仲良くしてやってくださいね」


 ハイと頷く。

 目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。

 俺を見つめる彼女の瞳からは、ユメを守ってほしいという打算的な物を強く感じた。

 パッと手を離すと、そのまま慌ただしく出て行ってしまった。


 そして、ミライとは一言も話さなかった。

 これは、ミライが妹に関して捻くれてしまうのも仕方ないのではないのだろうか。

 そんな風に少し思ってしまった。


 そのミライは気まずそうに、


「じゃ、じゃあ私も行くね」


 と、逃げる様に急いで出て行ってしまった。



「どう思う?」


 サクラと二人取り残されたので、あの姉妹についての意見を求める。

 サクラは、ユメとじゃれていた時、少し乱れた自分の制服少し直しながら、


「ユメちゃんを見るあなたの顔は、だらしないと思うわ」


 え?マジ?

 村でいた頃は、年下の子に懐かれるなんて事はなかったから、そんな事になってしまっているのか。

 

「アニーちゃんの時もそうだったじゃない。気づいてなかったの?」


 いやー、知らなかった。

 じゃなくて、ミライとユメの関係についてだよ。


「ふふ、スザクさんが言ってたけど、あなた本当におせっかいになったのね」


 足りていなかったコミュニケーション能力について、またしても突っ込まれる。

 生まれつきなんだから、仕方ないだろう人見知りは。

 サクラは嬉しそうに、


「成長したってことじゃない」


 と言ってくれる。

 そして、真剣な表情に切り替え、


「そうね、前までは、私も分からなかったから、ミライさんもあんまりそういった面を見せてなかったと思う。上手く抑え込んでいたんでしょうね」


 となると変化があったのは、最近の何かによってなのだろうか。

 二人に影響を与えた何か。

 悩んでいる俺を見つめ、サクラは溜め息一つ。


「二人に最近あった大きな出来事といえば、ミライさんは死霊人との戦いに参加する事になったわね。そして、ユメちゃんは地の守護者とぶつかった。この二つの出来事には共通点があるの、ここまで言えば、それくらい分かるわよね、ハツガ」



 サクラがズイっと顔を近づけてくる。

 来る速度に合わせて俺はのけ反る。

 それやめろって、ホント慣れないし恥ずかしいから。


 ……二つの出来事の共通点。

 思い当たったが、口に出したくない。

 それは、つまり……。


「あなたよ」


 思いっ切り指を刺され、サクラに言われてしまった。

 


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