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休みだから休もうぜ!

敵を撃退した後の日常?

~シュレ・アルクスの街~


 死霊人との戦いから、数日が経った。

 適当な道を歩きながら、街を眺める。

 南門とその周辺の被害はひどいが、門の立て直しが始まっている。

 被害が及んだ建物も修理の手が入っているようだ。

 

 以前と違い、魔法を使える学生達が積極的に、街の整備に取り組んでいる。

 襲撃があった事が彼ら、彼女らの心境を変えたのだろうか。


 すれ違う人達の挨拶に返事をしながら、ロウェルに指定された建物に辿り着く。

 

「おいおい、マジか」


 正面から見ただけでも、周りの民家数軒分くらいの大きさがある。

 奥行き含めたら面積は何倍になるのやら。


「お待ちしておりました。ハツガ様」


 いつもロウェルの側で控えているメイドさんだ。

 そういえば……、


「君、名前なんだっけ?聞いてないよな?」


 なぜか彼女は戸惑うように視線を外してから、


「……キャス。キャスと申します」


「キャスか、よろしくな。……ん?前髪長いな、ちょっと待ってろ」


 どうも彼女の目が隠れる長さの前髪が気になったので、近くへ買い物へ行きダッシュで戻る。

 

「ちょっとこれ、付けてみてくれない?」


 装飾の付いた髪留めを渡す。

 あっけにとられていた彼女が言われるがままに、髪を分け髪留めを付ける。


「おお!ちらっとしか見えてなかったが、やっぱり目が綺麗だ」


「何が目的なのでしょうか?」


「ちょっと収入があったから物を買いたい気分なんだ。気が向いた時にでも、それ付けてな。お願い」


「はい……?……では、ロウェル様の部屋に案内しますね」



 街の周りの建物と同じく石造りだが、広さは違う。

 それにメイドまで何人もいる、裕福な家庭なのだろう。

 広い部屋で、ロウェルは本を読んでいたようだったが、一応俺には反応してくれた。

 だが、こっちに目も向けないで喋りだす。


「来ましたか。胸の機械、調べさせてもらいますよ」


「ああ、今日は世話になる」

 

 ロウェルがキャスに視線を送った時、一瞬怪訝な表情を見せる。

 こちらに椅子を用意してくれるキャスに礼を述べつつ、ロウェルと向かい合う。


「では、服を脱いで上半身裸でお願いします」


「積極的だな」


「気持ち悪い事言わないでくださいよ、気が滅入りますって」


 服を脱いだ俺の胸に手が当てられる。

 行動をいちいち茶化してたら進まないので、真面目に。

 

「……そんなので、分かるのか?」


「ええ、構造把握は得意ですから」


 しばらく俺の体内を調べた後、ロウェルは渋い顔をこちらに向ける。


「無茶な動かし方、させ過ぎじゃないですか?相当ダメージ入ってますよ」


 まだ二回程度だと思うんだがなぁ。

 あまり好ましい状態でもないらしい。


「はぁ……恐ろしい機械ですね。こんな使われ方してまだ機能を保っています。これを作った人は間違いなく天才ですよ」


「で、どうにかできそう?」


 問いかけた相手は一回手を離し、腕を組みふんぞり返って、なぜか見下すような姿勢を取っている。

 なんだよ面倒くさい。


「言ってませんでしたけど、俺も天才ですから。メンテナンスに微調整、修理くらいならできますよ」


「タヨリニナルー」


 本当にありがたかったが、自然と言葉に心がこもらない。

 真面目で冷たいヤツかと思っていたが、それだけではないらしい。

 胸も中に魔力を感じながら、ふと疑問をぶつける。


「何でお前は兄貴のクラスなんだ?魔法の扱いが不得手というわけでもなさそうだが」


 魔力が跳ねる様な感覚に襲われ、動揺が伝わる。

 

「おっと、すまん。作業中にする話ではなかったな」


「……いえ、いいですよ。今までそれを他人に問われたら怒りしか湧きませんでしたが、君だとそれもない、不思議ですね」


 

 こっちも秘密を吐いた上に、共に戦った。

 付き合いが短い割には密度は濃い。

 そんなとこだろうが、この関係を言葉にするなら、


「友、いや……戦友だからだろ」


 ポカンとした表情で見つめられる。

 見たことのない生き物と遭遇したかのようだ。


「は、ははは。そんな関係の知り合い今までいませんでしたね。なるほど、興味深い……」



 無愛想なこいつには似合わない自然な笑顔の後、ポツリ、ポツリと話し出す。


「俺は一応、水属性を持っているんです。ですが、魔力の生成量も生成速度遅く、攻撃、治療を行えるはずの水属性なんですけど、有効に使えないんです。それで、最低クラス水の冥鎧(アーヘル)以下」


「ああ、だから事前に魔力を弾丸として用意してるわけか。厳しい言い方をすれば、戦いでは間に合わないから」


「悔しいですけど、その通りです。皮肉ですよね、自分の魔力強化をしたかったから研究を重ね、できる様になったのは他人の強化。まぁ、スザク先生に拾ってもらえなかったら、ここまでも辿り着けなかったんですけど」


 ロウェルは溜め息をつき、肩を落とす。

 

「今は戦える力が評価される時代です。機械を扱え、多少詳しいとしても俺の学校での評価は、落ちこぼれですよ。天才と言われる祖父を越えるために魔法を学びたかったんですけど」


 ははは、と乾いた笑いと共に、落ち込んでいく。

 うむ、間違いなく俺が切り出した話題が悪かった。

 ちょっと前は自称天才だったはずなのに自信を無くしてしまっている。


 いい事を思いついた。


「よし、改造しよう」


「作業終わりましたよ……はい?」


「俺の歯車に機能を付け足してくれ」


 呆れた表情というやつだな。

 お前はバカかとロウェルの目が伝えてくれる。


「いやいや歯車止まって死ぬ可能性だってあるのに、そんな事言ってるんですか?」


「ああ、お前なら大丈夫だ。面白いアイディア出てくるだろ?」


「そりゃあ、ありますけど……」


 説明では、血がつながっていると拒絶なく魔力を供給できる。

 そして、俺の胸の機械の一部に兄貴の魔力を保存しておく。

 それを、任意で解放できるように作れば、火属性を一回程度なら使えるんじゃないかと言う。

 元々、火属性だった俺だから、扱えるはずとのこと。

 

 面白い、面白いじゃないか。

 さっそくやろう。


「本気でやるんですか?」


「やるさ、面白い改造だ。失敗したら次に活かせばいいって」


「いや、心臓を歯車で代用している人なんてもう会いませんよ」


 笑いながら俺の胸に再び手を当てる。

 本当にいいんですね?と目が訴えかけてくる。

 真剣な目で応え頷く。

 そこで、俺の意識は途切れてしまった。





「ハツガ様、起きてください」



 浅い眠りの中、誰かの声が響く。

 この声は、そう、メイドさんメイドさん。

 キャスだ、確かそう名乗っていたはず。


「学校へ向かったロウェル様から伝言です。成功したのでスザク様に会う様にと」


  

 眠っていたのは一時間くらいか。

 体調は悪くない、寧ろ体に余裕がある気がする。

 こんなにすごい事をできる奴なのに何を自信無くしてるのやら。


 新しい機能でアイツの天才を証明できればいいのだが。


 



「へぇ!すごい機能じゃないか。よし分かった、協力しよう」



 学校にある自室にいたスザクは嬉しそうな声を上げつつ、喜んで協力してくれた。

 一応、ロウェルの先生でもあるスザクに、あいつが悩んでいるかもしれないとぼんやりと伝えておく。


「ロウェル君がねぇ。分かった、気にかけておくよ。でも、それ以上にお前がみんなとコミュニケーション取ってる事に驚きだよ。あの人見知りだったお前が」


「ほっとけ」


 ……気になる事を誰にも言えずにいたが、やはり相談するなら、兄貴だよな。

 死霊人がサクラの攻撃をくらった後に言っていた、木属性、そして……。

 しばらく黙っていたせいか、もしくは表情でばれてしまったのか、


「僕に話があるんだろ?ハツガ」


 と、向こうから話すきっかけをくれた。

 俺は、属性再編、死霊人の永遠の命、そして木属性への反応と、かいつまんで説明した。

 スザクは黙って聞いていたが、木属性についての話で表情が険しくなる。


「まだ一人の話による一つの事例だから、木、火、土、金、水、の属性が地、水、火、風になったという話、これはとりあえず置いておこう」


「サクラの攻撃が奴らに特段有効で、相手もサクラを危険と判断し、命を奪いに来ている。これは非常にまずいね」


 スザクの意見に頷き同意する。


「ああ、今回は一人の死霊人だったから良かったものの、連中が全員サクラを狙うなんて事態になれば洒落にならないな」


「木属性が有効だと、サクラ本人が知ればどうなると思う?」


「死霊人を倒す事に役に立てるのならって前線に出たがる」


「ハツガもそう思うか。……とりあえずこの話は僕ら二人で秘密にしておこう」


 他の事についても、各々調べてみて、情報は共有しようとなった。

 スザクは椅子にもたれ天を仰ぎ、俺は頭を抱え下を向いていた。


 そんな辛気臭いスザクの部屋に派手な音を立てながら、遠慮無しに一人の女性が入ってくる。


「スザク、準備できてるんだけど。あ、弟君、来てたの?」


 いつも通り美しい顔に美しい金髪そして絶壁の胸部。

 いつもより着飾ったリーミエだった。


「綺麗な服ですね。似合ってますよ。どこかへ出かけるんですか?」


「はいはい。今から出発しましょうかリーミエ様」 


 お世辞を言う俺と怠そうな兄貴。

 そんな二人を見比べつつ自由なお嬢様は、


「スザク、弟君に負けてるけど、何か一言ないのかしら?」


「無いです。ああ、ハツガしばらく護衛で町の外に出るから、クラスのみんな頼んだよ」


 適当に流すスザクに不機嫌そうな目が向けられているが、気にせず続ける。

 いや、頼むって簡単に言われても役割なんてあるのだろうか。

 それに、スザクが出て行って、戦力的に大丈夫なのか?


「そこは大丈夫じゃない?みんなあの襲撃以来、町の守りに真剣になっているしね。それに、そろそろ校長といっしょに属性のトップの学生四人が帰ってくると思う」



 各属性に実力でトップがいる。

 そういえばそんな話聞いたような聞いてないような。

 

 俺が考え込んでいると、いい加減待ちくたびれたリーミエが口を挟んでくる。


「守護者なんてどうでもいいわよ。話は終わった?スザク、行きましょう。弟君、行ってくるわね。」


「じゃあなハツガ、部屋は自由に使っていいから」


 

 騒がしく出て行く二人を、軽く手を振り見送る。

 さて、これからどうしたものやら。


 

 当てもなく学校を徘徊する。

 講義に実技と真剣に取り組んでいる学生もいれば、明らかにさぼっている学生もちらほら。

 ふと、廊下から教室の中を眺める。

 魔法の使用には論理があり、それを学び、学校で教わる手順で行えば魔力と適性があれば、魔法を扱える様になるらしい。

 俺は昔から感覚でやっているから、詳しくは分からない。

 ふと、俺に気付き廊下側の女の子が反応するが、奥の方に居るサクラに目を奪われる。


 背筋を伸ばした綺麗な姿勢だ、座っているだけでも、美しく感じる。

 隣に並んで講義を受け、戦いの事も考えず、平和に過ごす。

 何気ないことで共に喜び、喧嘩もし、笑い合う。

 日常か……。


「ん?」


 突然現れた水の泡が顔の前で破裂し、濡らされる。

 なんだ?

 視線を下ろすと、廊下側の女の子が機嫌悪そうにフンとそっぽを向いてしまった。

 ミライ、ミライじゃないか。

 知り合いが目の前に居て気が付かなかったのか。



 


 そんなこともありつつも時間は過ぎる。

 夕日がシュレ・アルクスの街並みを赤く染める。

 全ての講義が終わったのだろう学生が増える増える。

 人混みを避けながら、適当な場所でくつろぐ。

 そこから見える学校の門では人だかりができ、騒がしくなっていた。

 さほど気にせず退屈凌ぎに、サクラからもらった「初心者でも分かるキュートな魔導植物」とかいう訳の分からない本を眺める。

 植物にキュートもクールもパッションも何もないだろう普通。

 流し読みしつつ、前に世話になったヒトカゲサボテン、貴重な薬草ナガレボシスイレンなど、見知った物を見つけて少し楽しくなってくる。

 あの臭いがひどい赤い花の名前が気になり探していると、


「キュウゥゥ」


 何かの鳴き声か?

 顔を上げ、辺りを見回すと小さい子供のドラゴンが俺を見つめ、飛びながら何かをしている。

 あれは……、手招きでいいのか?

 近づいてみると素早く逃げ、距離を取り、また手招きをする。

 ついて来いってことか。

 初めて見た子供のドラゴンを追いかけ、学校の建物外まで誘導される。

 あんな生物この町にいたんだな。

 のん気に考えていると、学校の門付近の人だかり上空であいつは飛んでいた。

 中心辺りで俺をつぶらな瞳で見つめる。


 「しょうがねえなぁ」


 少し離れ、高い位置から見ると中心辺りは人がいない空間があり、二人だけが向かい合っている。

 あの二人のもめ事と後は野次馬といったところか。

 足に魔力を回し、助走そして跳躍!

 

 野次馬連中を一気に飛び越え、中心の空間で転がりながら受身を取る。

 突然の乱入者に場が静まり返る。

 中心の二人もこちらを見て、片方の大男はこちらを睨み、子供と言うには大きいが年下と思われる女の子は驚いている。

 一番近い学生に状況を尋ねる。


「いったいこれは何があった?」


「いやいやいや、君の方が何があったんだよ。いきなり飛んで来るとか」


「俺の事はいいから」


「地の守護者と女の子が言い合いになっちゃって、止めてもらうために他の守護者を待っているんだ」


「誰も自分で止めないのか?」


「無理だって!地属性のトップだよ!怪我じゃすまないよ!」


 ったく、何なんだこの状況。

 それに守護者とやらになるには人格は考慮されないのかよ。

 二人に歩み寄ると、大男が唸るような低い声で、


「何だぁ、おめえ」


「事情は知らないが、一旦お互い落ち着いて」


 臆せず仲介に入る人が現れ、どよめきが起こる。

 あの男を下がらせろだの守護者に任せろだのうるさい。


「この男が発言を取り消して謝ればいいのよ!」


 明るい茶髪の女の子が怒鳴る。

 

「事実を言っただけでうるせえんだよガキ。おめえの姉貴は出来損ない。ただの事実だろうが」


「お姉ちゃんを馬鹿にするな!」


 突撃しそうな勢いの女の子を抑える。

 この子の気持ちは分からんでもないが、こんなに大事にしなくても……。

 男の方も大人げないなぁ。


「ほらほら、君も落ち着いて。あんたも子供みたいな事言ってないで、ここは一つ謝罪して場を収めてくれないか?」



 何かが気に入らなかったのか、顔を真っ赤にして怒りが増しているのが分かる。


「この俺様が謝罪だと?地の守護者のガンテ様が!魔法で不利な性別の男でありながらで属性最強の座にまで上り詰めたこの俺様が!どの属性も中途半端な出来損ないの姉と天才だか何だか知らねえが調子に乗ってる妹、こんな奴らへの謝罪なんかねえよ!」


 ん?聞き覚えのある姉妹だ。


「もう限界、あったまきた、潰す。我が魔力を道標とし……」


「ハーッハハハ!攻撃する理由をくれてありがとよクソガキ!俺様の岩石で潰す!」 


 二人が詠唱を始める。

 子供の喧嘩みたいな言い争いをしていた二人だが、魔力量は一流のそれだ。

 簡単に言えば普通に危険。



「おい!下がれ!」  

 

 野次馬達に怒鳴る。

 悲鳴と共に人が走り出し、散り散りになる。

 

 人が逃げるのを確認し、振り返る。

 女の子の目の前には魔法陣が、ガンテとやらの頭上には岩が集まり巨大な岩石を形成していた。

 二人とも加減なしにぶっ飛ばせられれば手っ取り早いんだがなぁ!



 魔法陣に電撃が走っている。

 これは召喚か?

 何にせよ、迷っている時間は無い。

 魔法陣に飛び込み、打ち消すために槍を地面に突き刺す。


「え?何やってんのよ!」


「君は落ち着け」


 面食らっている内に魔力を込めた土で、手と足を拘束し、彼女自体をそっと横にする。

 

「ちょっと!何するのよ!こんなしょっぼい魔力じゃ、私を三分も抑えられないんだから!」



「そんなに長時間、必要ない」


 三分あれば一流のヒーローなら惑星一つ救えるだろう。

 喧嘩の仲裁くらいすぐに終わらせてみせる。


 巨大な岩に魔力を込め、ガンテは最高の威力でこちらを潰そうとしている。


「この程度の事に本気になるとは、理性を持っている人とは思えんな」


 挑発の言葉と共に、かかってこいよと手招きをする。

 興奮を抑えられず、憤怒の形相で魔法を発動させる。


「解放しなさいよ!あんたと死ぬなんてごめんなんだから!」


 後ろの女の子……誰かさんの妹がうるさい。


 降ってくる隕石が如き岩石を見据え、体を捻り右腕を背中に回し、溜めを作る。

 蒼炎解放、右腕強化。

 土の籠手で腕まで覆う。

 肘に火属性を留まらせる。


「もう!バカバカバカ!!!もう無理じゃない!」


 兄貴が死霊人の魔法を消し飛ばしたのを思い出す。

 なら、俺にもこいつくらい、それに……。



 巨大な岩石を拳で迎え撃つ!

 最初の接触で破壊への筋道を感じる。

 一段階目の攻撃。

 胸のギアが上がる。

 

破壊せし蒼の輝きブレイク・ブルー・ブライト!」

 

 肘に爆破の様な衝撃が走る!

 久しぶりの炎の感覚。

 二段階目の攻撃。

 蒼色の衝撃は、岩を塵一つ残さず消滅させた。



 これでよし。

 唖然とした表情で固まるガンテの懐に素早く飛び込む。


「このままでも事態は解決だが、友人への侮辱は聞き捨てられなくてな」


 気絶させられる程度の力で腹部に拳を叩き込む。

 ぐったりした大男を寝かせ、周りを見渡す。 


 ふと視線を感じ校舎の二階を見上げる。

 窓にへばりついている野次馬の中に見知った顔、ロウェルが目に入る。


 俺は胸を叩き、右手でグッと親指を立て、サムズアップする。

 ロウェルはバカみたいに真剣な顔のまま、サムズアップをしてきた。

 流石にそれは、普段のあいつからは予想外で笑みがこぼれてしまった。



 ふぅと息を吐きながら、振り返って女の子を見る。

 気が付けばどこかしら似た部分もあるな。


「君は、ミライの妹だな?」


 ぼんやりした雰囲気で彼女は俺を見つめる。

 拘束も解除しているが立ち上がる気配もなく座っている。


「おい、大丈夫か?」


 体に悪影響な事をしたつもりは無かったが不安になる。

 顔も心なしか赤い。

 ジッと見つめられた後、彼女は呟く。


「好き」


「は?」


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