俺と兄貴と幼馴染とよく分からない人
町、シュレ・アルクスで再会を果たす。
~スザクの執務室~
「「ハッハッハッハッハ!!!!」」
俺と兄のスザクは、今回の事の顛末を確認し、顔を見合わせお互い爆笑していた。
「笑い事じゃありません!まったく……一つ間違えてたらハツガさんが死んでたんですよ」
合流したサクラに二人して怒られる。俺達は昔から幼馴染に敵わない。
「守るべき生徒が、危険に陥っていると思ったとはいえ、いきなり切りかかってすまなかったな、ハツガ」
兄貴は真面目な表情で俺に頭を下げる。
「別にいいよ、終わった事終わった事。俺ももっとあの子を上手く往なせていれれば、穏便に片付いたかなぁ。力不足だった」
属性を使い分ける珍しい能力を持った彼女を思い出す。
早とちりとはいえ、正義感のあるいい子だと思った。
そんな風に兄貴に話すと、ちょっと困ったような顔をし、
「正義感か……あるとは思うがそれが全部ではないかな。彼女、ミライ君は四属性を扱える珍しい能力を持った子なんだけど、どの属性にもいる一流と言われている人達には及ばず、陰で二流だの中途半端だの言われていたり、ある種天才の妹がいて、劣等感ゆえに評価される事をかなり求めている子なんだよ」
サクラも難しい顔をしている、知り合いなのだろうか。
悪い子じゃないんだ許してやってくれ、という兄の言葉に頷きつつ俺も彼女に謝らなければと考える。
「あの後、周囲の方々に事情を話すために家を周ったのだが、お前に感謝している人が多くてな。修理とかいろいろやってくれたらしいな。僕のいない間に、ありがとうな」
兄弟間で真面目なやり取りなんて、照れくさいから顔を見ず、手を軽く挙げ応える。
ふと、原因となった絶壁美人……リーミエ様だったか、二人に知らないか尋ねてみると、片手を眉間にやり兄貴は呆れた表情を、サクラはああ、なるほどと一人で納得しているようだった。
彼女は、と兄貴が説明しようとしたその時、遠慮無しにドアが開きにこやか手を振りながら話題に上げた女性、リーミエが入ってきた。
「スザク、私の話してた?立ち聞きなんて、してないしてない。なんとなく分かるって知ってるでしょ?」
自由奔放な彼女は、俺の方に向きじゃれてくる様に絡みついてくる。
どことは言わないが硬い……。
「君、スザクの弟だったんだ。うんうん、だから興味が湧いた?でも顔はあんまり似てない……?弟君は怖いよねぇ顔。でも嫌いじゃないから」
困惑している俺をサクラは不機嫌そうにこっちを見つめる。
兄貴が彼女は!とちょっと声を張り、説明を始めた。
「ここは一応、学校なんて名乗っているが、政府が機能しているか、そもそもここはどこの国の土地なんて今はもうわからないだろ?だから普通にスポンサーがいて、その人のお陰で人を守る人材を集める場所として、人材育成の場として機能できているんだよ。で、スポンサー様のご息女がリーミエ様なんだ」
「そうそう、社会勉強ってやつ?そして、スザクは私の護衛なの」
「護衛だと思ってるなら、今日も僕の頼み通り学校内で大人しくしててほしかったんだが」
へー、てっきり兄貴の趣味なのかと。
そんな意志を込めてリーミエを見て兄貴に視線を送ると、鋭い睨みとゴホン!というわざとらしい咳払いをしたので口に出すのはやめておいた。
サクラは苦笑しながら、
「一応、保健室の先生もやっているんですけどね」
と付け足してくれた。
「でも、勘違いしないでね。治療魔法が得意なのではなく、みんなが治せない人を治せる可能性を持っているだけだから、普段から当てにはしないでね」
ウインクされるが、言葉を理解はしきれない。
治療ではない治療なのか?分からない。
人が悩んでいるのも気にしないでじゃあねーと彼女は満足して出て行ってしまった。
再び三人になり、わずかな沈黙の後、兄貴が真っ直ぐな瞳でこちらを見て、
「本当にハツガなのか?女神による蘇生だなんて正直混乱しているが、クローブ先生の手紙、サクラの話と報告の資料、僕を知っているお前の言動、どれも本物だと示してくれるが……弟を一目みて分からない情けない兄ですまない」
「仕方ないって、経験しないと自分でも信じられない状況だから。ただ、俺は兄貴とサクラは無条件で信用してるし、必要ならいつでも力を貸す。だから、二人がどういった結論でも構わない」
師匠との約束を果たすため仲間は欲しい、強敵に勝つためには背中を預けられる人が欲しい。
この二人がダメだったら代わりはいないだろなぁ。
「分かった、僕も腹を括ろう。お前がどんな成長をしたか見させてもらうよ。サクラは、自分のペースで決めればいいよ。その迷いはたぶん君とハツガにとって必要な物なんだろう」
兄は、苦しそうなサクラを気遣う。
結果的に彼女を苦しめているのは、耐えがたく、俺自身を殴りたくなった。
しかし、サクラは意を決したかの様に、顔を上げ俺の手を取り、緑色の瞳で見つめてくる。
「ハツガさん……いえハツガは……。村からこの町までの旅だけでは短いかもしれないけど、やっぱりあなたは変わってなくて。優しいままで、人のために動くあなたのままだったから。……私も信じます、あなたのこと」
泣きそうでも力強く言ってくれて嬉しかった。
他の誰でもない彼女からの言葉だったから。
そうだ、珍しい花をもらってたんだっけ。貴重な薬草と言っていたがサクラなら有効に使ってくれるだろう。
蓋をされたビンに入った水面の上に綺麗な花を咲かせている植物をサクラに差し出す。
昔、彼女を泣かせてしまった時に、彼女が好きな花を渡した様に。
「仲直りの印ってのは子供すぎるか。まぁ、受け取ってくれ」
「え?これって……ナガレボシスイレン?こんな貴重な物を?」
大事そうに手で包み、目を閉じる。
「ありがとう。……ハツガ、睡蓮の花言葉……って知ってるわけないか。何でもない」
スザクは、二人を眺めながら、五年前の後悔を思い出す。
自分がこの学校へ来て、村を空けてしまったことで、家族を失い、村を危険にさらしてしまった後悔。
間が悪かったと言えばそれだけだが、重要な時にに立ち会えなかった自分の運の無さを呪った。
だが奇跡的に、再び家族に会えた。
そして共に過ごした守るべき存在。
スザクは必ずこの二人を守ると胸に誓った。
「懐かしいものを見たようなそうでもないような?とりあえず、いい雰囲気のところ申し訳ないが僕の部屋で僕がいるからね、二人とも」
手を叩き、寝ている人を起こすみたいに兄貴が呼びかけてきた。
顔を赤らめ、サクラがパッと離れる。
場の空気を変えるよう、明るく話す兄貴を眺める。
「さて、そろそろいい時間だ、解散しよう。ハツガもしばらくこの町にいるつもりだろう?それなら、慌てなくても話す時間はまだあるさ。サクラ、明日クラスの部屋で集合ね。ハツガをそこに誘ってみようと思うんだけど、どう?」
「私は協力してくれたら、ありがたいですけど他の方がどう言うかですね……」
「ま、言ってみるしかないか。実績もあるし認めてくれると思うんだけどねぇ、でも難しい子達だからなぁ」
二人で何か話しているが、今日はもう限界だ、明日になれば分かるならそれでいい。
なんだかんだ言って家族と話せたのは俺にとっても、ありがたいことだった。そんなことを考えていると、
「じゃ、二人ともおやすみ」
という言葉にそれぞれ応えながら、兄貴の部屋から二人で出て行く。
しばらく歩いていると、
「明日は起きたら、スザクさんのとこにちゃんと行ってね。そういえば、ハツガはどこに泊まる予定?」
「え?一緒の部屋で寝泊まりするんじゃないの?」
サクラはさっきと違う理由で顔を赤くし、
「このデリカシー無し無神経男!」
不機嫌そうな顔で言い残して、早足で行ってしまった。
うーむ、からかったつもりだったが、怒らせてしまったか。
折り返し、兄貴の部屋をノックする。
めんどくさそうに出てきながら、
「何だ、デリカシー無し無神経甲斐性無しクソダメ男」
「増やしてんじゃねーよ。……お兄ちゃん(かわいく)泊めて?(もっとかわいく)」
人生の中で見た扉の動き、最速の速さで閉められる。
「冗談だって!泊めてくれって!」
「バカなことやるなよ、吐くかと思った。ううえ、気持ち悪」
くだらない話、くだらないやり取りだったが、俺にとってはどれも懐かしく、大切なものだった。
死んで気付いた何気ない日常の光。
もう二度と失わないようにと、星に願いを、己に誓いを。
スザク
・ハツガの兄
・黒髪、長身、イケメン、青い瞳
・火属性
・貧乳好き?
リーミエ
・金髪、不自然なくらい美しい外見
・ただし胸部は絶壁




