クマのパンツと牛の涙 7
「これがね、食堂。広いでしょー。」
僕が連れて来させられた食堂は、深夜であるにもかかわらず、人で埋め尽くされていた。
先ほどまで、僕はゼノンにPETO内部を説明してもらいながら歩いていた。
とてつもなく広い。2時間経った今でも、5分の1しか見学が終わっていないようだ。
未来っぽい部屋もあれば、いかにも古い部屋など、多種多様だった。
その混沌さにも、驚かされる。
マジでここは一体なんなんであろう。
特に、散策して一番驚いたことは、”動物”であろうか。
僕たちが思い浮かべるようなただの動物ではなかった。容姿に関していうとほとんど変わらないが、なんと<会話>をするのだ。動物がだ。そして直立二足歩行をするのだ。これはたまげた。
ゼノンの説明によると、動物の会話といったものは、魔法は関係ないらしい。
もともと、この世界の動物はそうであるらしい。
それどころか、動物の中にも魔法を使えるものがいるようだ。
なんて羨ましい。
「おーい。空。ぼーっとせずに早く昼食決めろよ。」
そう言いながら、ゼノンは僕の顔を覗き込んだ。
「お!?」
僕はそれにびっくりして、足が不安定になり、倒れてしまった。
ガシャーン。
あちゃあ、やらかしてしまった。
後ろの女の子に当たってしまい、その女の子が尻餅をついてしまったようだ。
「あ。大丈夫ですか?」
僕は彼女にそっと手を差しのばした。
あ。
僕は目を奪われた。その女性の美しさに。綺麗な黒色のポニーテール。長い足。身長はざっと180cmはあるだろうか。(ちなみに僕は172cm)服は純白の服装。
「かわいい……。」
僕はやらかしてしまったようだ。咄嗟に本音が溢れてしまった。
可愛い女の子の目つきが変わった。悪い意味で。はい、人生終了。侮蔑の目が向けられている。
「あなた、何よ。気持ち悪いわね。人にぶつかったクソ野郎の上に、変態なわけ?二度と会いたくはないわね。」
「ごめんなさい。」
僕はそうとしか言えなかった。
「あら、謝ることなんてナンスでもできるわ。もしかして、あなたナンスかしら?」
美女はそう挑発してきた。
「やめろ、白無。そういうことは言うべきじゃない。ここは食堂だぞ。場をわきまえろ。空にもナンスの方にも失礼だ。」
ゼノンが仲介に入った。
珍しいことに(今日あったばかりだが)真剣な顔をしている。
「あら、ゼノンもいたのね。あなたとはさすがに争いたくはないわ。じゃあね。」
そう吐き捨てて、その場から手を振りながら、去っていった。
僕たちはそれから二人ともサバ定食をカウンターで注文して、窓際のテーブルに移った。
「あの女なんなんすか。」
椅子に腰を下ろした瞬間、僕の語尾が荒ぶる。
「あー、白無のことね。彼女、いつも、あんな感じなんだよ。誰かに喧嘩でも売らないと気が済まないタイプなんだと思う。黙ってたら、かわいいのに。」
ゼノンはため息をついた。
「そう!そう!まさにそう!まじで美人。黙ってたら、白無ちゃんまじ天使。って言われるレベルなのに……。あの言葉遣い、本当にイライラする。何者なんなんすか!?」
「え?俺の彼女だけど。」
ゼノンは平気と言ってのけた。
は?
僕は心底、驚いた。