クマのパンツと牛の涙 2
「にーちゃん、今日は猿の歯を見つけた!」
桃色の髪の毛の女の子が叫んでる。
「あんちゃん、今日は雲の上からダイビングしたよ」
紫髮の少年が鳥のモノマネをしている。
「隊長、第4王子が行方不明になったと言う知らせが」
真面目そうな黒髪美少女が深刻そうに報告している。
周りの音があまりにも騒然としている。しかも、髪の毛が奇抜な子が多い。
なんなんだろう。ここはファンタジー世界か?あああ。僕もとうとう、あの世に招待されたのか。道理でよくわからない人たちが・・・。死んでしまったかぁぁ。死にたくなかったなぁ。あの黄色い野郎、天国で見つけたら、絶対、雲から突き落としてやる。
そう思いながら、うっすら目を開けて周りを見つめていた。
近代的な機械もあれば、古典的な扉もある。ごちゃ混ぜだなと感じた。
次に、ここが何だと、確かめたいという思いから目をしっかり開けた。
そしたら、目の前に目があった。
そう、そこに目があった。
「あ。」
その瞬間、その目の持ち主はジャンプした。
「あ!変態野郎、目が覚めたか!」
そう叫んだ。
「あぁ。今度は黄色い子か・・・。」
ぼんやりと黄色い女の子を見た。
ホントにこの世界の子の髪の毛はカラフルだ。
「黄色いねぇ。」
そう僕はつぶやいた。
「はっ!」
僕は咄嗟に頭を上げ、指をさした。もちろん、黄色い髪の子に向けて。
「お、お前!黄色野郎!」
「なんだ!?この変態野郎が!レディに対して、野郎はないだろ!!」
「いやっ!野郎だね、人に矢を刺すやつのどこがレディだ!豚メスキングゴリラだよ!」
「意味のわからない名前つけてんじゃねーよ。このパンツ野郎!」
「豚メスキングゴリラは言葉遣いもきたねーのかよ。何がパンツ野郎だ!メスキングゴリラが!」
僕は、罵詈雑言が止まらなかった。いつもはボーっとしているが、こういう時に限って頭がフル回転していたのだ。
「パンツ盗んだやつに、なんでパンツ野郎って言ったらいけないんだよ?パンツ野郎!」
そう彼女も罵った。お互いに白熱した。
「オメーのパンツなんか誰が盗むかよ。金もらってもいらねーわ。」
「ここにきて、往生際が悪いやつだな。お前がパンツ盗んだと言う証拠はあるんだよ!」
「ん?」
少し違和感を感じた。パンツ泥棒っていうのはてっきり、冗談で言っているものだと思っていたのだが、本気で言っているようだ。
「俺がパンツを盗んだだと?」
「そうだよ!記憶喪失のフリか?ん?絶対逃がさねーよ。」
黄色い女の子は興奮した顔つきで言い張った。
僕は焦った。さすがに焦った。流石の僕もパンツ泥棒というレッテルはごめんだ。
「いや、マジで盗んでない!冗談抜きで!」
「あ?そこまで言い張るか。じゃあ、バックの中、体の隅々まで調べるぞ。」
「あぁ。身の潔白が証明できるならどうぞご自由に。」
負けじと言い張った。僕は自信があった。女の子のパンツに興味がないとはさすがに言い切れないが、犯罪に手を染める気なんてさらさらない。しかも、こんな気性の荒い女のものなんか、特に。
「じゃあ、調べるぞ。」
彼女は勝ち誇った顔で近づいてきた。
僕も自信満々に、斜め下げのバックを提出した。
彼女は勢いよくバックを開けた。
そして、バックの中身を見るや否や、僕の目は点になった。
その中にはクマの絵柄のパンツと赤色の巾着が入っていた。
そう、パンツが。全く身に覚えのないパンツが。
そっと顔を上げると、そこには不敵の笑みを浮かべた彼女の顔があったのだ。