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第十六話  決戦へのカウントダウン③



 ――此処に勇者の伝説がある。


 遥か昔、大陸において人在らざるものたちに信仰される、大いなる脅威があった。

 

 魔王と称されし邪悪なる竜フルゾール。その吐息は業火となりてあらゆるものを燃やし、世界を地獄へと叩き落とした。人間たちにこの災厄に刃向かう術はなく、人々はいつ終わるとも知れぬ恐怖と絶望に眠れる夜を過ごした。


 北方の地、レオニオスに神の声を聞く聖女があった。名をクィリア。人々を哀れんだ神は、彼女を通じて救世主召喚の秘術を伝えた。


 同時に神は約束させる。救世主には召喚を執り行った王家の姫を与え、神の名の下に両者を伴侶とすること。即ち、祝福の巫女姫との断ちがたい絆をもって、この世界への楔とするように、と。


 クィリアがこの聖約を誓うと、神は此処とは異なる世界において、勇敢なる死を迎えた者に二度目の生を与え、この世界に使わした。


 救世主は聖女クィリアを伴侶とし、彼女の助けをかりて、魔王フルゾールを聖なる力で討ち果たした。


 人々は大いに喜び、勇敢なる彼を『勇者』と呼びこの偉業を讃えた。

 時のレオニオス王は彼の勇者に王位を譲り、勇者は王として長く平和な国を築き上げた。


 神はこれを大いに喜び、勇者の子孫たるレオニオスの者に、救世主召喚の秘技を継承することを許した。いずれ邪悪なる王が蘇ったとき、再び世界が地獄の中で消えてしまわないように、と。


 だが努々忘れぬように。救世主の力を私利私欲に使うべからず。そして救世主には必ず王家の姫を与えるように。


 なぜならば、勇者の命が失われたとき、姫の命もまた失われるように。

 姫の命の灯火がなければ、勇者もまたその命を保つことができないのだから……。






 驚きの真実を知った日の翌日、マルフ砦内の自室で、カナリアより貸りた勇者伝承の本を読み終えたショウマは、そこに書かれていた数々の事実に驚きを隠せなかった。


「つまり勇者というのは召喚したお姫様と命が繋がっていて、どちらかが死ぬともう片方も死ぬ?」


「そういう設定になってるね」


「いやそういう設定になってるじゃねえよ! 初耳ですよ!?」


 軽く肯定土下座神に、ショウマは勢いよく詰め寄る。


「つまり俺が死んだらフリージアも死ぬっていうことだろ? なんだよその鬼畜仕様!?」


「仕方がないんだよ。よく思い出して欲しいんだけれど、君は一度死んだ人間だろ? 二度目の生を与えて新生させるだけならともかく、まったく別次元の異世界へと移動させて、なおかつ存在を保たせるというのはなかなか面倒もとい大変でね。その一部をこの世界の住人に補ってもらっているのさ」


「やっぱり復活させる上で問題があったんじゃないか!」


「いやいや、だから君が異世界へ行きたいって言わなければ本当に問題はなかったんだよ?」


「先に言えってことだよ!」


「先に言ってたらやめてた?」


「いや来てましたけどね。間違いなく」


「でしょう? それで今更責められる謂われはないよ。それに、文字通り一蓮托生の身になる勇者と姫を伴侶とするように、って形に言い含めてあげたボクの功績は大きいんじゃないの? いわば、ボクは君のあのババァの愛のキューピッドになってるじゃないかボクの馬鹿ァ!」


 カナリアたんごめんよ~、とカナリアがいるであろう方角に向かって土下座する神様。まだカナリアをメインヒロインにする計画を諦めてなかったらしい。


「くっ、なにをついでに変な設定ぶちこんでるんだボク! まあ、ぶっちゃけボクも今の話を聞くまで完全に忘れてたんだけどね!」


「だろうな」


 恐らく、この伝説に描かれていることはすべて事実なのだろうが、土下座神はこれまで言わなかったのではなく純粋に忘れていたのだろう。


「しかし、俺が死ぬとフリージアも死んじまうのか。これは絶対に死ねないな」


「逆もしかりだけどね。まあ、死んでもどうせ回帰できるからいいんじゃないの? あ~あ、なんでこんな変な設定にしちゃったかなぁ。そんなにこの聖女とかいう子がかわいかったのかなぁ。さすがに覚えてないや。図書館のどのあたりにこの辺の物語はしまってあったかなぁ」


 自分の頭に指を向けて、みょんみょんみょんみょん、と変な呪文をつぶやき虚ろな目をし始めた土下座神は無視して、ショウマは改めて考える。


「回帰、か」


 死んでも召喚時点に戻ってやり直せる。それがショウマに与えられた特典だ。それは忘れていない。


 けれど――そんなことをしてなるものか、と今は思う。


「カナリアに満面の笑顔を見せてもらえたのは今の俺だけだし、グローリエにお兄様って呼んでもらえるようになったのも今の俺だけだ。そして、フリージアと一緒に過ごして、笑いあって、支え合って、それできっと恋してもらえたのも今ここにいる俺だけなんだ。死ぬなんて嫌だ。戻るなんて考えられない。俺の新しい人生は、この一回きりでいい」


 死んだら終わり。それは当たり前のことで、きっと忘れてはいけないことなのだ。次の人生があるから大丈夫なんて、そんなのは……。


 不意に、ショウマの右腕が啼いた気がした。


「ん? 今天……」


 右腕を見る。だが特におかしな様子は見られない。けれど、かすかに今、誰かの泣き声が聞こえたような。


 ショウマは土下座神を見る。彼はまだ、思索の中に沈んでいるようだった。


 ショウマはおもむろに右腕を押さえると、


「まさか魔王に感化されて! くっ、鎮まれ俺の右腕! まだ、まだそのときじゃない!」


「ショウマ様! 右腕がどうかされましたか!?」


「いやぁああああああああああ――――ッ!?」


 土下座神とは反対側から心配そうにフリージアに覗き込まれ、ショウマは悲鳴をあげてベッドに飛び込んだ。毛布をかぶって全力ガード。


「ショウマ様? どうされましたか? そんなにその右腕が疼くんですか?!」


「疼かないから! これはその、なんというか、昔の病がですね」


「再発したんですか!? ああ、なんてこと! すぐにお医者様を!」


「大丈夫! 大丈夫だから! 俺はもう完治してるんだ!」


 慌てて医者を呼びに行こうとするフリージアを、ショウマは腕をつかんで引き留めた。


「きゃっ!」


 そんなに力を入れたつもりはないが、特典によって強化されていたため、勢いあまってフリージアをベッドの中に引っ張り込んでしまう。すっぽりと、胸の中に入り込むフリージアの小さな身体。


「わ、悪い!」


「い、いえ。私も、早とちりしてしまったみたいで」


 至近距離で見つめ合って、お互いに顔を真っ赤にしてそらす。けれど、不思議と離れようとはお互いに思わなかった。


(うわっ、すごいいい匂いがする)


 朝風呂にでも入ったのか、フリージアのラベンダー色の髪からは花のようないい匂いがした。女の子の匂い。


(俺、この子と結婚……してるんだよな?)


 昨夜そうと知るまでまったく自覚はなかったが、ショウマはフリージアとはすでに大陸法では夫婦の仲だ。


 今更だが、名前だけでこれまで名字を求められたことがないのは、すでにショウマがシャトリア王家に婿入りして家名がシャトリアになっているのをみんな知っていたからか。


 それにフリージアといちゃいちゃしていても、羨ましそうな顔を向けられることはあっても、文句をつけられることはなかった。カナリアもグローリエに近付くとあまりいい顔はしなかったが、フリージアに対してなにも言わなかった。


(夫婦。俺とフリージアが夫婦?)


 はっきり言って、ショウマはフリージアのことが好きだ。魔王を倒したらお付き合いとかできないかなぁといつも考えていた。たぶん、フリージアも自分のことを好いてくれていると思うし、そうなる可能性は高いかな、とも妄想していた。


 けれど――一足飛びで夫婦とは。喜んでいいのか、恋人の段階を飛び越えてしまったことを嘆いていいのか、いやでもこんな美少女が奥さんとか勝ち組決定だ、と色々な考えがごちゃごちゃしていてまとまらない。


 一応、明日には魔王城へと決戦のために移動を始めないといけないのだが、そのことを考える余裕がないほどに、ショウマの頭の中はフリージアとのことでいっぱいになっていた。


「ショウマ様? なにか?」


 じっと見つめてしまっていたからだろう。あるいは後ろから抱きしめるようになってしまっているこの体勢が原因か、フリージアは照れくさそうに聞いた。


 ……言うべきなのだろうか? 昨晩まで、自分はフリージアと結婚していることを知らなかったと。


 グローリエとカナリアは、黙っていた方がいいと言っていたが。


「……フリージア、実は聞いて欲しい大事な話があるんだ」


「はい。なんでしょうか?」


 色々と考えた結果、ショウマは話すことにした。さすがにずっと言わないわけにはいかないだろう。


「実は俺――昨日までフリージアと夫婦になっていたこと知らなかったんだ」




 


 フリージアはショウマに抱きしめられ、大事な話があると聞いても期待しなかった。


 本当はすごく期待していたのだが、これまで二度も同じ顔をしていたショウマに裏切られているので、自己防衛本能に従って期待していないことにした。もしかしたら今回もおっぱいかも知れない。いやでも、会議のときは違ったし。もしかしたら……。


 おっぱいとそうではない確率は半分半分くらいか。期待と不安がない混ぜになった顔で、フリージアはショウマの告白を聞いた。


「実は俺――昨日までフリージアと夫婦になっていたこと知らなかったんだ」


「…………え?」


 おっぱいではなかった。

 だがそれと同じくらい、あるいはそれ以上に衝撃的な言葉だった。


 夫婦になっていたことを知らない? それはつまり、大陸法にある記述を知らないということ? けど伝説によれば、勇者はすべてを理解した上で召喚されるということで、それはつまり了承してくれているのではなかったのか、もしかして神にだまされてそれじゃあもしかして自分のことを好きでもなんでも……。


「えっ? えっ?」


 フリージアは狼狽える。頭の中を色々なことがぐるぐる回る。


 ショウマがなにも知らなかったということは、これまでの自分の発言は妻からの言葉という意味で聞いていたわけではなく、自分を召喚しただけの一週間もつきあいのないよくわからないお姫様からの言葉というわけで、つまり自分は頭がお花畑のちょっと行き遅れ気味の女が必死になってモーションをかけてきてると思われて――


「あ……あああ……」


「そう、だから俺は――って、あの? フリージア? 俺の話を聞いてる?」


 頭から湯気をあげる勢いで顔どころか全身を真っ赤にするフリージアは、もちろんショウマの話は聞こえていなかった。


「いやぁあああ――――ッ!!」


「のわっ!」


 悲鳴を上げてショウマを突き飛ばすと、毛布を奪い取り、それを頭からすっぽりかぶってくるまる。


「……死にたい。恥ずかしくて死にたい」


 もしもこの身の命がショウマの命と繋がっていなければ、恐らく自分は舌を噛み切って死んでいた――後にフリージアは妹たちにそう語ったという。






ベッドから叩き落とされたショウマは、起きあがってベッドの上のフリージアを見る。


 完全に引きこもってしまっているフリージアは、ぷるぷると震えていた。恥ずかしがっているのだろうか。きっと、恥ずかしがっているのだろう。


 ショウマも昔、幼馴染みが自分のことを好きだと信じ切って色々と恥ずかしい言動をしたあげく、あとで幼馴染みに彼氏がいることを知って中学生活が終わるまで家に引きこもっていたという過去を持つ男だ。今のフリージアの気持ちはよくわかる。


 だからこういうとき、どんな言葉をかけても無駄だということは理解していた。

 フリージアに背中を向けてベッドに腰掛けたまま、なにも言わずにそのまま待ち続けた。


 それがどれだけの時間続いただろうか?


 何度か心配して部屋を見に来たグローリエやカナリアに任せろと親指を立てること約七回分の時間、気を利かせてか、いつのまにか土下座神も部屋からいなくなっていたので、ショウマとフリージアはずっと部屋で二人きりだった。


 いつのまにか、窓の向こうでは陽が暮れようとしていた。いつかフリージアと一緒に見た、綺麗な夕焼けが見えた。


「俺さ、この世界に来てよかったと本当に思うよ」


フリージアを元気づけようと思ったわけでもなんでもなく、言葉は自然とこぼれ落ちた。


「何度も神様ぶっ殺しやると思ったくらい、俺が想像してた異世界生活とは違ったけど、それでもやっぱりこの世界に来てよかった」


「……本当、ですか?」


 毛布の中から、フリージアのかすれた涙声が響いた。


「本当に、そう思ってくれていますか?」


「もちろんだ。俺の返事はあのときとなにも変わってない。――俺は、フリージアに笑ってもらうために来たんだよ」


 ショウマは毛布の中に右手を入れた。


 最初は小指に指先が触れ、怯えたように離れた。

 そのあと恐る恐るもう一度指先が触れ、ゆっくりと、少しずつ手が握られた。


 ショウマは離さないと握り返して言った。


「好きだよ、フリージア。順番は逆になったけど、どうか俺と結婚してくれ」


 返事は聞こえなかった。ただ、握った手が震えている。


 ショウマは毛布をめくりあげた。


 フリージアはこぼれ落ちる涙を必死にぬぐいながら、はい、はいっ、と嗚咽混じりに何度も何度も返事を口にしていた。


「わたしも、わたしも好きです。ショウマ様のことが、大好きです。どうしてこんなに好きなのか不思議なくらい、あなたのことが大好きになったんです」


 涙は止まらない。きっと、止める必要もない。

 だって、彼女は本当に嬉しそうに、幸せそうに笑っていたから。


「どうか私をあなたのお嫁さんにしてください。愛してます、ショウマ様」


 まぶたを閉じ、顔を上げるお姫様。

 ショウマは毛布を純白のベールをめくるように持ち上げ、そして――……





 

       ◇◆◇






 一日を無為に過ごさせてしまったことを詫びて、フリージアは部屋から去っていた。


 その足取りは軽やかで、口元には笑みが浮かんでいる。


 もちろん、それを見送るショウマの口元にも笑みが浮かんでいた。だらしない笑みが。本当ならこの勢いで突っ走って最後まで行きたいところなのだが、それは魔王を倒すまで取っておこう。


「よし。今なら魔王だろうがなんだろうが絶対に倒してやれるぜ!」


「すごい自信だね。魔王攻略の糸口は見えたのかい?」


「それは今から聞くんじゃないか。お前の口からな」


 フリージアと入れ替わるように部屋へとやってきた土下座神。


「待ってたぞ。さあ、教えてくれ。魔王の弱点をな」


 いつもどおりの神々しいまでの端正な顔立ちは、恍惚の笑みと鼻血の所為で台無しになっていた。






 そうして――魔王との決戦の時は訪れた。






 魔王城へと向かうマルフ砦の兵士たちを見送ったあと、ショウマたちも魔王城を目指して移動を開始することにした。


 メンバーはショウマとグローリエ、カナリア。そして兵の中でも精鋭七人。計十人のパーティーで本隊とは別ルートで魔王城を目指す。


 そのメンバーの中にフリージアはいない。


 彼女は他の非戦闘員と一緒にマルフ砦を離れ、まだ安全な王都に向かうことになった。無論、勇者の命と直結するその身は警護の兵士たちによって、確実に王都まで送り届けられるように配慮されている。


「ショウマ様。ご武運を」


 最後の見送りにやってきたフリージアは、胸の前で祈るように手を組んで言った。


「ああ、祈っていてくれ。俺の、旦那様の勝利を!」


「見てください、グぅちゃん。一昨日まで知らなかったというのに、今では一丁前に旦那ぶっていますよ」


「そうですわね、カナちゃん。お兄様、昨日はよほどいいことがあったのかしら?」


 親友二人はひそひそと会話すると、息ぴったりに二人に声をかけた。


「「昨夜はお楽しみでしたね」」


「してないからね!?」


 くすくす笑う二人に真っ赤な顔で怒鳴るショウマ。もしかしたらこれが今生の別れになるかも知れないというのに、二人には緊張感というものがなかった。もしくは、そんなことは絶対にならないと信用してくれているのか。


「まったく」


 最後にグローリエとカナリアもそれぞれフリージアにあいさつを告げて、別働隊も魔王城に向けて移動を始めた。


「ショウマ様!」


「フリージア?」


 その背をフリージアが追いかけて、ショウマの服の裾をつかんで呼び止めると、背伸びをしてそっと耳元に囁いた。


「帰ったらいっぱい楽しいことしましょうね」


「ほぅわっ!?」


 耳を赤くするショウマに、彼女も負けないくらい頬を赤くして。


「私、子供は最低三人は欲しいですから!」


 信じてる。と、フリージアは言ってくれたのだ。戻ってきてくれると信じてる、と。


 だからショウマもやはりこう言うのだ。

 何度だって好きな女の子に、男らしく精一杯に格好をつけて。


「ああ。あとは俺に任せとけ! 魔王なんざ、一撃でぶちのめしてやるぜ!」






「――言ってくれるな、勇者ショウマよ」


 遠く、高らかに宣言された勝利を耳にし、黒い玉座で魔王が笑う。


 なんと勇敢なのか。なんと雄々しいのか。勇者たるにふさわしいその言葉に、魔王は久しく忘れていた胸の高揚を思い出す。熱い血潮が身体を巡り、凍り付いていた心の臓が脈を刻み始める。


「生ある喜び、今、ここに思い出したり」


 そうだ。魔王はずっとこの時を待ちわびていた。

 かの勇者こそが、魔王がずっと待ち望んでいた救世主。彼の命に価値を与えてくれるものなのだ。


「いいだろう。早く来い。早く来い。我は待ちわびているぞ。幾星霜もこのときを!」


 その全身よりみなぎる魔力。

 邪な波動は天に雷雲を呼び、大地に黒々とした毒の障気を放って歓喜を露わにする。


「しくじりはしない。勝利は我のものだ!」






「――始まるね」


 二人の声を共に聞き届けたのは天上の神のみ。


 すべてが漂白された純白の世界で、この世の神は近く始まる最後の対決を待ちわびている。そう、すでに地上の勇者の傍に神の姿はなかった。


「さあ、我が勇者よ。君の真価を示すときだ。どうか見せてくれ。ボクを魅せてくれ」


 無論、神が願うのはただひとつの結末のみ。そうなると心から信じている。それでも、これより先の介入はあまりにも無粋。神の奇跡は必要ない。神はただ観客となり、最後の演目を観覧するのみ。その後に、神は勝者に万雷の拍手を贈るだろう。


「君の物語の結末を。さあ、今こそ!」


 神は両手を広げ、高らかに勇者に最後の祝福を贈る。


「ボクに君をこそを救ってよかったと、そう思えるような結末を謳い上げてくれ!」






 そして勇者と魔王は、示し合わせたわけでもなく、運命のように、まるで同じタイミングで同じ言葉を口にした。


 神の御許で、高らかに。



「「――勝負だ!!」」






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