アドル=ブレイブ‐Loser‐
戸ががたんと音を立てて開く。
アドルとドイメが中に入ると、地面から小さな振動が発生した。
イベントシーン。すでに死んだヒドラが復活し、床を勝ち抜いて書き込まれる内容だった。
「Kraaaaaa――!」
肉が溶け骨が明らかになり、ぞっとするいやらしい姿。。ヒドラの大声に合わせて戦闘が始まる。
「話したとおりに動くぞ!」
「はい~」
ヒドラの咆哮に合わせて骨だけで構成された縄ヒドラが三匹生成する。 アドルは短剣を投げ、子らのターゲティングを自分で固定して隅に移動した。
「行きます!」
ドイメが自分の体より大きい弓を取り出した。彼女が弓にかけるのは投擲用に作られた槍。
「マグナムショット!」
ドイメの体が点滅して、槍が赤い色に染まっていく。彼女の手を離れた槍は正確にヒドラの目の方を貫通して爆発した。
「Grrrrr…」
衝撃に少し下がったヒドラが硬直に陥る。 ドイメは止まらず、アビリティを発動させた。
「ターゲットオン!マルチショット!」
打ち上げられた槍が5つに分裂しながら方向を変え、ヒドラに連続して刺される。怒りに満ちたヒドラが巨大な体を回して尻尾を振りかざした。
アドルはしっぽを避けるため、子の頭を踏みつけて上昇した。 ところでドイメは回避行動を取っていなかった。
「おい、おま―?!」
基本パターンだから即死は避けるだろうが、それでも弓が主武器の彼女が攻撃を受けた場合、被害はけっこ大きいはず。
そんなアドルの心配に答えてるようににっこりと笑ったドイメは後ろに背負っている盾を正面に押し出した。驚いたことにも、ヒドラのしっぽが盾に阻まれた。ドイメが少し後ろに押し流されたけどヒドラは完全に硬直に陥ってしまった。 その瞬間を逃さず、スナッチ。
(パリイング、だと?)
カウンターシステムの一種で、相手の攻撃を弾き返す硬直に落ちさせる高度の技術である。 特に盾を利用したパリイングは獣型モンスターにも通じるので活用範囲が広いが、難易度が難しいせいで使用する人が少ない。なのにドイメが背の巨大な盾にパリイングを成功させたのだ。
「受けろ!」
弓の利点、長距離での連続攻撃を利用してヒドラの全身を見抜いておくドイメ。
しばらく悩んでいたアドル。決心したのか目の前の子をすべて切った後、ドイメに合流した。
「アドルさん?」
急に計画と違う行動を取った彼を見ながらドイメがいぶかしさを表する。アドルは彼女に近づいて話した。
「君の実力は十分分かった。 一気に片付く。」
アドルは認めた。 彼女が強いということを。
「あ――はい!」
自分を認めてくれたという事実にうれしい気持ちを隠せないドイメ。彼女は明るい顔で槍を切り出した。
「Krarararararararararara!!」
ヒドラのフェーズ2.赤い眼光が生じ、口の方で酸性のつばが流れ始める。下には五匹の子が復活。大声を出し、アドルとドイメに向かって駆けて来た。
「戦力展開、行きます!」
アビリティの発動エフェクト。弦にかけた槍が徐々に増大し始めた。人の体より巨大な槍を指して、ヒドラの船を向かって撃つ。その隣をアドルがかかってヒドラとの距離を縮めた。
爆発とともに広がる黒い煙。その中に入り込みヒドラの体を踏んで上がったアドルは首を剣で振る。三度の攻撃に反応したヒドラがアドルを過度にしようとすると、ドイメの槍が飛んできて首を打ち抜くし動きを止めた。
アドルが無事に着地、ドイメは子どもたちを避けながら移動した。
「来る」
ヒドラが体をプルプルさせて大きく咆哮した。賛成よだれが流れて自分の体を解け始まり、地面に赤いエフェクトが生じた。アドルとドイメはすぐにエフェクトがないところに身をかわした。
「Graaaaaaaaaaaa!」
天井に向けて打ち上げられた賛成よだれの塊。 水風船が爆発するようによだれが広がって全てを溶かした。
地面を半分以上抑えてしまったよだれの沼。踏むのだけで靴のないぐどう耐久性が減って、一定以上の時間が経てばダメージまで受ける恐ろしいパターンだ。しかし、それだけヒドラにも反動が来る。
口からよだれが流れない。そこに体が溶けたせいでHPバーも減って動きも鈍くなっていた。
このタイミングを逃さず、ドイメが矢を3発取り出した。それを弓にかけなく上にぽんと投げた。
「ホライズンアロー!」
三発の矢が左右に増え、一つの赤い刃になってヒドラの骨に亀裂を作る。 ヒドラが首を挙げ、子に召喚するようなモーションを取ったが、アドルがチャージ攻撃をさして防いだ。
彼と交代するように、もしかしすると、がひび割れた部分を継続して打撃する。 すぐヒドラの体力が底に近づき、唾が口元から流れ始めた。
「ドイメ、後ろ!」
その瞬間、予想できない変化要因が発生した。
ぜんぶ涎に溶けたと思っていた縄一匹がドイメの後をつかんだのだった。
「キャ―!」
硬直状態に陥ったのも危険だが、ヒドラが顎をあげ、紙面にはエフェクトが敷かれ始めた。
「ちくしょう!」
悪いことは連続に起きると誰か言ったか、ドイメの周辺には避けるべき場所がなかった。硬直から脱して走ったとしても時間がない。
アドルは目を見開いて、必死に思った。
(やるしかない……!)
ヒドラが酸性を上に撃った時、アドルがアビリティーを使用して剣を投げつけた。
酸性風船が空中に上がる前に爆発する。涎がヒドラの全身を覆って溶かし始め、その間、アドルはドイメを攻撃した縄を殺した。
「おい、大丈夫か?」
「は、はい。 それより、アドルさんの剣が……」
「それは気を使うな。 ドイメ、最後は任せる。」
「――はい!」
ドイメがいままでとは別の槍を取り出した。
大きさは普通。別に尖って見えるでもない。 ただし、矛先の色がエメラルド色だった。
「貫きなさい、朱雀!」
弦から手を離した瞬間、エメラルド色から巨大な火があがって弓を包み込んだ。それは一匹の炎の鳥になってヒドラを襲う。
残ったHPがすべて消滅、ヒドラは完全に溶けて消える。
ドイメが汗を拭く真似をしてアドルを見た。
「へへ。」
明るく笑う彼女の姿を見ながら、アドルは苦笑を浮かべて話した。
「よろしくな。」