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酒場のマスター

さて俺たち(ラメアは別件で動いていてくれているため、セリーナさんが同行している)は今、街にある酒場に来ている。この酒場はテーブル席とカウンター席があり、テーブル席では仲間と、カウンター席ではこの店のマスターと会話や酒を楽しめる場所だ。今は朝10時(どうやらこの世界でも1日は24時間、一年も365日らしい)、勿論俺たちは朝から酒を飲みに来た訳では無い。


「おう、ラメアさんの所の坊主じゃ無いか。やっと仕事が来たって感じか?」

「まぁな。というかその坊主ってのやめてくれないか?」


そう、ここのマスターに用があるのだ。ここのマスターであるコークという男性、見た感じ40代ぐらいで穏やかな雰囲気だが筋肉質な身体つきだ。


この男性はラメアの知り合いの1人で酒場をやってる為か、かなりの情報通でこの地域の情報は網羅する程だとか。探偵業をする事になった次の日に、ラメアから教えて貰い、ラメアと一緒に会いに来たのだが、その時から俺を坊主と呼ぶのだ。性格は人当たりが良く、嫌う人の方が少ない感じで、仕事の時に情報提供してくれないかと聞くと、


「暫く見なかったけど、ラメアさんが探偵業をするって聞いた時は驚いたな。ま、坊主はラメアさんがやっと始めた仕事の仲間だからな。良いぜ、情報が欲しくなったらここに来な。あ、別に酒飲みに来てもいいけどな」


と了承してくれたのだ。後はその坊主って呼ぶのを止めてくれればなぁ……。俺は坊主って歳でも無いのに。


「俺から見ればお前は坊主何だから坊主で良いじゃないか。それより何の情報が欲しいんだ?」

「はぁ、もう気にするのは止めるか。この依頼人がこんな魔物を探しているんだ。何か知らないか?」


俺は胸ポケットからラメアが書いた絵を取り出す。


「おお、ラメアさんが書いた絵か。やっぱ上手いな。しかし魔物の捜索か……」

「何か問題でもあるのか?」

「いや、そうじゃない。だが、最近飼い魔物を狙って襲い、売り裁く奴らがこの街の近くにいるって話を聞いてな。ちょと心配になったんだ」

「物騒な世の中だな」

「そう、だな」


しかし飼い魔物を襲って売りさばく、か。聞いた話だとこの世界には奴隷制度もあるらしいからな。本当に気をつけないと。


「で、話を戻すと猫の魔物か。昨日の話ではあるが猫の魔物が泣きながら屋根を伝ってピンクに近い赤の猫っぽいのが一匹歩いていたって話を客から聞いたな。確かこの店より南の方角にある聖堂の近くで見たらしい」

「そのシャーナって毛はどんな色何ですか?」

「さっきこの方が言っていた色と同じです」


この世界でも猫で通じるのか。まぁそれはさて置きその猫がシャーナである可能性があるな。調査してみるか。


「すまねえ、他に関係有りそうな情報はねぇな。あまり力になれなかったな。もっとちゃんと情報に耳を傾けていればな……」

「いや、おかげで取り敢えず捜査の目処は立った。その聖堂近くを中心に探してみる」

「シャーナ、大丈夫かな」


セリーナさんが凄く心配そうに声を漏らしている。


「大丈夫です!必ず見つけます!」


女性を泣かせるのは俺の趣味じゃ無いし、師匠も怒ってくるだろう。よし!此処からが俺の本領、足での捜査開始だ!



この街(ガルーニアという街らしい)の北側にある聖堂、此処はある種の神社とかそれに近い施設だ。崇める対象は知恵を持ち、普通では考えられないほどのとても大きな力を持つ存在で、世界の危機を救い平和を保つ者、聖獣と呼ばれる魔物達を崇め、そして人々が彼に祈る場所なのだそうだ。聖獣は4体おり、朱雀、玄武、白虎、そして青龍の4体だ。元の世界で言う四神、又は四獣などと呼ばれる存在だな。そして各地に聖堂はあり場所によって祀られる聖獣は違い此処では朱雀を崇めているらしい。また、お金を払えば少し特殊な魔法で怪我なども直してくれる様だ。その為、冒険者の人達も多く訪れるのだという。


と、此処までが聖堂の近くにいた人達から聞いた話だ。聖堂の事は分かったとは言え目的はあくまでもシャーナ探しだ。しかし肝心なシャーナの目撃証言は中々聞けない。


「情報、集まりませんね」

「やはり元々の情報がら1日経ってるのが痛いですね」


あの酒場で聞いた話は昨日の夜の話だ。シャーナもそんなに長時間此処にいるとは考えられないとは思っていたが、足取りが全く掴めないとは困ったな。


「おや?あんたら魔物を探してるのかい?」

「は、はい。そうですけど」


俺達が困っていると1人のお婆さんが話しかけて来た。


「もしかしたらその子、森の方に行っちゃたんじゃ無いのかい?」

「森、ですか」

「元々あまり人の入らない森でねぇ、一度入っちまうと中々出る事が出来ねぇ森だ。神隠し見たいな事も起きたせいか、一時期は神隠しの森なんて呼ばれていたんだべ。それが本当かは分からねえがそこで迷子になってるかもって話だ」


神隠しの森か。そんなのがあるのか。


「どうします?行ってみますか、その森に」

「ここで探しても見つかりそうも無いですし、行ってみましょう。お婆さん、その森は何処にあるんですか?」

「この先にある角を曲がって、それから………」



さて、お婆さんから森の場所を聞いて、森に来たのはいいが、なんというか薄気味悪い場所だ。確かに普通は立ち寄りたがらない場所だな。


「あんまり深く潜らないで、浅めに行きましょう。どうやらこの辺りは、野生の魔物も生息している見たいですし」

「分かりました」


中に入ると、なんか変な植物があったりして驚きながら、(セリーナさんも一緒に驚いていた。珍しいのだろうか)進んでいく。するとカサカサと物音が聞こえてきた。


「野生の魔物でしょうか、右からです!」

「シャーー!!!」

「うぉ!なんだ?!」


言われた方向を見ると、少し大きめのイタチの様な生物がこちらを威嚇している。


「なんか戦闘になりそうだな。『魔力k…』」

「ちょと寝てて貰います!『スリープクロー』!!」


セリーナさんの右手が青白い光に包まれて爪を形成し、それはイタチを切り裂いた。すると力が抜けた様にイタチは倒れてしまった。


「あんまり殺傷はしたくないですからね。眠って貰いました」

「今のはスキルですか?」


スキル、魔法が使えない人族である獣人が、魔法とは少し違う概念で出すことの出来る技。話は軽く聞いてはいたが、見るのは初めてだ。


「そうですよ。私は他にも幾つか使えるのですけど、敵を殺さずに力を削ぐにはこれが一番です」

「そ、そうですか」


しかし魔物の言葉までは理解できないんだな。なんか集中して聞けば出来なくもなさそうだが……まぁやる必要はないか。


ん?そんな事を考えていると突然セリーナさんの頭の耳がピクピクしだした。


「ん、これは?もしかしてシャーナの声!?」

「あ、ちょっと。落ち着いてください!」


いきなりセリーナさんが走り出してしまった。シャーナの声とか言っていたが、俺には聞こえなかった。獣人って耳がいいんだろうか?


「いました!彼処です!」


セリーナさんが指差す方向を見るとそこには檻に入った猫の魔物がいたのであった。


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