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はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です  作者: 日野 祐希@既刊8冊発売中
最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。
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作戦会議です。

「それでは、第一回対策会議を始めます」


 商議員会の翌日、私は早速関係者を集め、今後の活動方針を決めるための会議を開きました。

 地獄分館の閲覧席にはいつものメンバー――とまとさん、ちーずさん、ばじるさん、兼定さん、閻魔様、聖良布夢(せらふぃむ)さん、タカシさんが円陣を組むように着席しています。

 本当は事務室のミーティングスペースでやるつもりだったのですが、無駄にでかいゴリラがいる所為で閲覧席での会議となりました。


「では皆さん、商議員共を『ギャフン』と言わせるアイデアをバンバン出してください。なお、つまらないアイデアを出した場合はティラさん・ダイナさんのご飯になってもらいますので、覚悟してくださいね」


「ハイハーイ! 姐さん、オレにいいアイデアがあるっスよ!」


「おや? 聖良布夢さん、自信ありげですね。では、どうぞ」


「ぶっちゃけ考えるの面倒なんで、手っ取り早くシメちまったらどうッスか!」


「はい! クソ頭悪いですけど、これ以上ない程に超魅力的なアイデアをありがとうございます。でも、それは最終手段なので、とりあえず却下です」


 輝かんばかりの笑顔で×のフリップを出したら、聖良布夢さんが「ええ~っ!」と大袈裟な叫び声を上げました。

 当人としては、絶対採用される自信があったのでしょうね。とても残念そうです。


「聖良布夢さん、そんな顔しないでください。私だって本当は、今すぐ閻魔様をダイナマイトといっしょに人間大砲へ装填して、商議員会のど真ん中に打ち込んでやりたいところなのです。ですが――」


「えっ! 儂? ていうか、儂ごと打ち込む意味はどこ!」


「閻魔様! また私を差し置いて、一人でおいしい思いをするつもりですか! 何と羨ましい……」


 ヒゲと変態執事がうるさいですけど、放置しておきましょう。


「――ですが、今回はできる限り正攻法で戦いたいと思っています。真正面から、目にもの見せてやるのです」


「……なるほど、相手の土俵で鼻っ面に一発ブチ込むってことですか。さすが姐さん! 痺れるほどかっこいいッス!」


「いえいえ、それほどでも」


 目をキラキラ輝かせた聖良布夢さんが、崇拝するように私を仰ぎ見ます。

 純粋な尊敬の眼差しというものは、何度浴びても気持ちの良いものですね。


「けれど、正攻法で届けた我々の気持ちを、彼らが受け取り拒否する可能性は否めません。その場合は速やかに、思いを拳に乗せて語り合う方面へ作戦をシフトする予定です。なので……()()()の時は期待していますよ、聖良布夢さん」


「ウッス、任せてください! オレ、全力で語り合うッス!」


 最後は直立不動でビシッと敬礼です。

 まったく素晴らしいですね。商議員のクソオヤジ共もこれくらい私を敬うべきです。


「では皆さん、他にアイデアはありませんか」


「正攻法って言うなら、やっぱり署名活動辺りがベターじゃないか?」


「はい、タカシさん。真っ当過ぎてこれっぽっちも面白くない、質実剛健なアイデアをありがとうございます。ものすごくつまらないです」


「てめえが『正攻法で』って言ったんだろうが! バカにしてんのか、コラァ!」


 タカシさんは不良をやめても、相変わらずのツッコミキャラですね。


「別にバカにしてはいないですよ。署名活動なら、私も真っ先に考えたアイデアです。ただ、おかげでまったくインパクトがなかったですね。いっその事、聖良布夢さんくらいノリの良い回答なら会話が弾むのですが……」


「ちくしょう……。正しいことを言ったはずなのに……。オレは正しいことを言ったはずなのに……」


「安心しなさい、タカシ君。君は間違っていない、間違っていないから……」


 袖で涙を拭うタカシさんを、閻魔様が優しく慰めます。

 何でしょう。すごくホモホモしいですね。

 しかも、ゴリラと元不良のカップリングって、めちゃくちゃ気色悪いです。


「そうは言いますが宏美さん、正攻法でということでしたら、私も署名活動もしくはデモ活動くらいしかないと思いますよ。昨日の商議員会の話を聞く限り、もはや宏美さん一人で状況を覆せないのは明白ですし、数に訴えることも必要かと」


「署名活動とか、地味な上に面倒くさいのであまり気乗りはしないのですが……」


 変態モードから有能執事モードに戻った兼定さんも、署名活動に一票ですか。 基本的に超優秀なこのドMがこうまで言うということは、やはりそれしかないですかね。

 はあ……。だるいなぁ……。


「しょめ~、しょめ~!」


「いっぱいあつめる~!」


「おなまえたくさ~ん」


「署名活動とは、誠に素晴らしいアイデアですね。ここは一つ、みんなで力を合わせてたくさん署名を集めましょう!」


 やる気一杯の子鬼三兄弟を愛でていると、こちらまでやる気が出てきますね。もう署名活動の一つや二つ、どんと来いという感じです。

 何やらタカシさんが「態度違い過ぎだろ!」とか叫んでいますが、一体何のことでしょうか? キレやすい若者、怖い。


「そうと決まれば、善は急げです。次の商議員会は二月の十日。期間は実質四週間ほどしかありません。ここは役割分担をして、効率良く署名を集めましょう」


 そう言って、私は会議用に持ってきたホワイトボードに、それぞれが受け持つ担当区域を書き記していきました。


「ではまず、聖良布夢さんとタカシさん。お二人は、地獄の一般人方面に声を掛けてくださいな。学校とかで一気に票数を稼いでもらえると嬉しいです。不良時代に築いたコネなんかも総動員して頑張ってください」


「ウッス! オレ、姐さんのために頑張るッス!」


「何だかんだ言ってここは居心地いいからな。できる範囲で手伝ってやるよ」


 早速仕事に取り掛かってくれるつもりなのか、二人が席を立ちます。

 これまでの経験上、この二人はなかなか良い仕事をしてくれますからね。成果に期待するとしましょう。


「では次、閻魔様と兼定さんです。お二人は今すぐあの寒い方の地獄――ええと、八寒地獄でしたっけ? あちらへ向かってください。八寒地獄中の獄卒から署名をもらってくるのが、あなた方の仕事です。――あ、全員の署名をもらうまで、戻ってきてはいけませんよ。凍え死んでも署名をもらってきてください」


「あ~、宏美君」


 自分の割り振りを聞いた閻魔様が、遠慮がちに手を上げました。この忙しい時に、一体何でしょう。

 くだらない用件だったら顔の形を男前に変形させてあげますよ、閻魔様♪


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