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はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です  作者: 日野 祐希@既刊8冊発売中
最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。
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商議員長は傍若無人なインケンオヤジでした。

「…………。まあいい。ところで、仮にここで図書館の閉鎖を取り止めたとしても、君達の解雇が取り止めになるわけではない。それとこれとはまた別の問題だからね。この点についてはどうお考えかな?」


「新人研修の時の件については、すでにお叱りを受けて手打ちとなっております。今更持ち出してくる方がどうかしています」


 意見を求めてくる久延毘古(くえびこ)氏に、ピシャリと言って聞かせます。


 まったくここの神様共は、心を砕いて合法非合法問わずに火消しした私の苦労を、一体何だと思っているのでしょうか。

 無辜(むこ)の民の努力を無に帰そうなんて、神様のする所業とは思えません。

 商議員共は、頭の辞書に『一事不再理』という項目を追加すべきですね。


「ふむ。その点については確かに報告を受けている。我々も当初は館長の下した処分を持ってこの件は不問に付すつもりでいた。――だが、時を置かずして、君達はアメリカ天国議会図書館からの抗議という、さらなる問題を起こしてくれた。こうなっては、新人研修での件も過去のことと流すわけにはいかないな」


 おっと、そうきますか。ウフフ。本当に嫌なところを嫌な論理でついてくる人――いえ、神様ですね。ガチで最悪です。

 このオヤジ、きっと陰で「性格悪い」とか「いっしょにいると疲れる」とか言われていますよ。確実に友達がいないタイプですね、これは。


「アメリカからの抗議の件ですけど、私は『抗議が来た』ということしか聞いていないのですよ。――具体的には、どのような抗議だったのですか?」


「平たく言ってしまえば、アメリカ天国議会図書館を通したダンタリオン氏の抗議です。先日、当館の司書がアポイントメントもなしに来館した上、脅迫紛いの方法で無茶な要求を突き付けてきた。これは大変遺憾なことであり、黄泉国立図書館からの謝罪および当該職員の処分を求めるものである。――以上が、今回の抗議の内容です」


 私の質問に、石上(いそのかみ)さんが淀みなく答えてくれました。石上さん、わかりやすい説明をありがとうございます。

 にしても、あのアニオタ悪魔め、よもやそのような手段に出てくるとは……。次会った時は覚えているといいのです。今度はゲイバーにでも放り込んでやりましょうか? ウフフ……。


 ですが……あんちくしょうへの復讐方法を考えるのはまたの機会にしましょう。今はこの場を切り抜ける言い訳――もとい、私が思い描く真実を神様方に披露せねばなりません。


「それは大いなる誤解です。私は自分のツテを頼り、日本の伝統文化であるザ・手土産を持って平和的に交渉を行っただけです。――ね、脅迫的なことなんて、これっぽっちもしていないでしょ?」


「その手土産とは一体何だね?」


「ダンタリオン氏が日本に滞在していた際の思い出の品です」


 嘘は言っていませんよ、嘘は。


「それにほら、私も何だかんだ言ってまだ新人であることは否めませんからね。もしかしたら、気づかない内に何かしらの粗相をしてしまったかもしれません。三度目の正直ということで、もう大きな問題は起こさないだろうと、広い心で水に流していただけるとうれしいです」


「ふむ、三度目の正直か……。だがこうも言うはずだね。二度あることは三度ある。三度目の芽を摘むために、危険因子を取り除くという考え方もできないかな?」


 チッ! ああ言えばこう言う。

 私、こいつ嫌いです。何だか生理的に受け付けません。清廉潔白を地で行く私の対極にいますよ、この外道。陰険にして傍若無人。さらにナチュラル上から目線で、本当にいけ好かないです。

 このオヤジ、本当に天国にいるべき神様なんでしょうか。

 なんか、うちの無能ゴリラな筆頭裁判官の代わりに地獄裁判所でネチネチ死者をいじめている方が似合っている気がします。


 まあ、本当にそうなってしまうとこのインケン神が私の上司になってしまいますので、確実に願い下げですが……。これならまだ、そこでのびているヒゲの方がマシです。


 ――と、私が目の前に座るボス猿に敵愾心を燃やしていた時でした。

 ボス猿が、とんでもないことを言い始めたのです。


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