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はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です  作者: 日野 祐希@既刊8冊発売中
最終話 ~冬~ え? 神様方が地獄分館を取り潰そうとしている? ウフフ……。ならば私が、彼らに身の程というものを教えてあげるとしましょう。
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戦いの幕が切って落とされました。

 閻魔様の話によると、地獄分館が閉館になり、私達がクビになった理由――というか罪状は次の三つとのことでした。




 一つ、昨年末の地獄分館破壊の件。

 酒に酔って図書館を破壊するなど言語道断。斯様(かよう)なことをする獄卒達に、図書館は必要ない。また、元々地獄の住人に本を読む習慣がないことを鑑みても、無駄な予算をつぎ込む必要はない。


 二つ、七月の新人研修の件。

 例えどのような理由があろうと、利用者に手を上げることなどあってはならない。また、天国本館にも少なくない損害を与えた件も見逃せない。問題を起こした地獄分館の司書・司書補を放っておくべきではないだろう。


 三つ、先月の読書週間の件。

 アメリカ天国議会図書館から抗議が来ている。アメリカとの友好関係を保つためにも、当事者及び関係者を処罰するものとする。




 ――と、こんな感じですね。


 なるほど、なるほど。これはつまり……。


「つまり、何もかも地獄裁判所のバカ共が原因というわけですね。連中が本も読まず、地獄分館をピタゴラ装置にしたばっかりに……」


「いや、君達がクビになったのは自業自得な気が――」


「おのれ、あの社蓄共め……。地獄分館がなくなって私達がクビになったら、閻魔様に水爆をくくりつけて、地獄裁判所を木っ端みじんにしてやります!」


「人の話を聞こう! あと、いい加減ここから下ろして! た~べ~ら~れ~る~!」


 簀巻き状態でティラさん・ダイナさんのお家の上に吊るされた閻魔様が、またもやピーチクパーチク騒いでいます。

 毎度のことながら情けないですね。このヒゲはもっとどっしり構えていることができないのでしょうか。


「大体ですね、閻魔様も閻魔様です。商議員会の決定をろくに反論もせずに受け入れてくるなんて……。ガキの使いじゃないんですから、もっとしっかりしてください。無駄にもっさい強面が泣きますよ」


「いや、そうは言ってもさ、どの理由も反論の余地がなく――って、無言でロープを緩めるの止めてーッ!」


 とりあえず、役立たずの分館長は放っておくとして……。これは、何らかの対抗措置を取らないといけないですね。でないと、本当に私の城がなくなってしまいます。

 閻魔様が持ってきた通知によれば、地獄分館の閉館と私達の解雇は来年の三月末日。つまり、私達に残された時間は三カ月しかありません。


「閻魔様、お楽しみのところ申し訳ありませんが、一つ教えてくださいな」


「楽しくない! 食べられる、牙がかすってるーっ!」


「年度末までに商議員会はあと何回ありますか?」


「それどころじゃなーい! あ、靴食べられた! た~す~け~て~!」


 …………。はぁ……。

 これじゃあ話になりませんね。仕方ありません。


「とまとさん、ちーずさん、ばじるさん、お願いします」


「「「あいさ~!」」」


 子鬼三兄弟が、閻魔様を吊るしているロープをポーンッと引っ張ります。閻魔様の一本釣りですね。


「た、助かった……」


「で、あと何回あるのですか?」


「へ? あ~、あと三回かな。商議員会は毎月中旬に行われるから、今年度はあと三回だ」


 なるほど。ということは、チャンスも残り三回というわけですか。

 月一で商議員会とか、どれだけ商議員共は暇なのだとも思いますが、チャンスが多いならそれに越したことはありません。


「わかりました。三回ですね。――準備しておきます」


「あのさ、宏美君。聞かなくてもわかる気がするけど、何する気?」


「安心してください、閻魔様。極力平和的な方法で解決を図るようにしますから。――とまとさん、ちーずさん、ばじるさん、新型の人間大砲を準備しておいてください。口径のサイズはこれで」


「「「お~!」」」


「全然安心できないよ! 主に儂の身の安全が!」


 閻魔様を指さしながら指示を出していたら、当人から怒られてしまいました。

 一体何が気に入らないのでしょうか、このでくの坊。これが兼定さんなら、飛び跳ねて喜ぶところですのに。


「はぁ……。まあ、当事者として商議員会に参加することは止めないけど、抗議をするなら正攻法で頼むよ。ルールを守らない人間の言葉は、誰にも届かないからね」


 おやおや? 意外とまともな正論を出してきましたね。エテ公のくせにインテリぶって生意気な……。

 ですが、閻魔様の言うことも一理あります。現状において、下手な示威行為はマイナス要因にしかなりません。


「承知いたしました。まずは正攻法でいくことにします」


「うん。よろしく頼むよ。儂もできる限りのフォローはするから」


「ええ。期待していますよ、分館長」


 こうして、私達地獄分館勢と商議員の神々による戦いの幕が切って落とされたのでした。


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