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はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です  作者: 日野 祐希@既刊9冊発売中
第三話 ~秋~ 獄卒方、読書の秋って知っていますか? ――え? 知らない? なら、私がその身に叩き込んで差し上げます。
36/63

小休止です。

 11月2日。

 順調な滑り出しを見せた読書週間は予定調和的に進み、五日目までのスケジュール――つまりはおはなし会の全行程が終了しました。


 おそらく初日におはなし会に参加した面々から、うわさが広がったのでしょうね。二日目以降の参加者はすごく従順――いえ、積極的におはなし会に参加してくださいました。

 おはなしの前後には、訓練された兵士の動きで拍手喝采。おはなしの最中は、まるで命懸けのロシアンルーレットでもしているかのような緊張感で聞き入っていました。

 素直で大人しい社蓄共、最高ですね!


 さらに、こちらも別のうわさが広がったのか、子鬼タイプの鬼さん達は二日目以降の方々もバッチコーイ! のウェルカム体勢。軍人じみてきた他の社蓄共とは別の意味で、彼らも積極的におはなしを聞いて下さいました。

 彼らは全員、私の心の癒しです。おかげで私も、気分よく読み聞かせを行うことができました。本当に引き抜きを検討し始めた方が良いかもしれませんね。


 で、読書週間六日目と七日目である昨日今日は、最終日の準備もあるので小休止です。参加者の皆さんには、配った童話集を読みながら、明日のイベントに備えて英気を養ってもらっています。


 参加者の心と体に安らぎの一時を御提供――。

 ああ、私って超優しいです。もう天使そのものですね。ここ、地獄ですが。

 地獄の鬼達は、私に感謝してひれ伏せば――おっと、いけない。『ひれ伏せ』なんて、花も恥じらう大和撫子が言うべきではないですね。

 では言い直して……地獄の鬼共は、私に感謝して跪けばいいのです。

 ……何だか、あまり変わりませんね。まあいいです。


 ともあれ、今日は私、兼定さん、子鬼三兄弟、聖良布夢(せらふぃむ)さん、タカシさん、閻魔様で明日の読書マラソンの準備に勤しんでいます。

 と言っても、私と子鬼三兄弟がおはなし会に励んでいる間に、主な準備は兼定さんや元不良コンビが済ませてくれてありますけどね。


 今日やることは、イベントで使うコースの最終点検(主にコースの強度など)と、アメリカ天国から輸送されてくるゲストの引き取りです。コースの確認は子鬼三兄弟と元不良二人に任せて、私、兼定さん、閻魔様は天国の港へゲストを受け取りに行きました。


「ああ、あれですね。閻魔様、あそこにあるコンテナ二つが、私達宛てのものです」


「ほう。これはまた、ずいぶんと大きなコンテナだね」


 私達が港に着いた時には、すでに目的のコンテナは港に下ろされていました。 どうやら貨物船が予定より早く着いたようです。

 二つ並んだ超特大サイズのコンテナを、三人でもの珍し気に見上げます。このサイズ、なかなかに期待が持てそうですね。ウフフ♪


 ――さて、いつまでもここに突っ立って、コンテナを見上げているわけにはいきません。

 私達はさっさと受取り手続きを済ませ、コンテナをレンタルのトレーラー二台に乗せてもらいました。


「それじゃあ閻魔様、兼定さん、トレーラーの運転の方、よろしくお願いしますね」


「ねえ、宏美君。今更聞くのもなんだけど、このコンテナの中身って何なの? 中から『グルルル……』とか、不吉な感じで腹に響く唸り声が聞こえるんだけど……」


「それは秘密です。まあ、今は麻酔で眠っているはずなので中を見てもいいですが……命の保証はしませんよ」


「…………。……人間知らない方がいいこともあるよね。さあ、行こうか」


「あ、私は覗いてきてもいいですか?」


 私の笑顔から何がしかの危険を感じ取ったらしい閻魔様が、キリッとした表情で逃げるようにトレーラーの運転席へ乗り込みました。

 対して兼定さんは、M心を爆発させてコンテナの中を覗きに行きます。ただ、ゲストがぐっすりお休み中だったため、すぐに残念そうな顔をして戻ってきました。


「では、地獄へ帰りましょうか。出発進行!」


 私も兼定さんと一緒にもう一台のトレーラーへ乗り込み、地獄へ出発です。

 さあ、これで準備は整いました。

 本年度読書週間のメインイベント、さてはてどうなることやら。

 明日が実に楽しみです。ウフフ……。

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