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はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です  作者: 日野 祐希@既刊8冊発売中
第二話 ~夏~ 地獄にも研修はあるようです。――え? 行き先は、天国?
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ちょっと遊んでやりました。リターンズ

「おう、そこのアマとチビ共! てめえらに恨みはないが……」


「かっこいいセリフを吐こうとしているところ申し訳ないですが、あなた先程、思いっきり恨み辛みをもらしていましたよ」


「むぐっ! う、うるせぇよ!」


 何となく茶々を入れてみたら、鬼Bさん改めタカシさんが顔を真っ赤にして喚き散らしました。

 あらあら♪ タカシさん、地団太も踏んでいますね。

 アハハ。愉快、愉快♪


「とにかくだ! オレらの名を地獄に轟かせるため、てめえらには人身御供になってもらうぜ!」


「おお! 不良のくせに、『人身御供』なんて難しい言葉を良く知っていましたね。お姉さん、驚きですよ。偉い、偉い!」


「むがーっ! バカにしやがってーっ!」


 おや? おかしいですね。

 感心したので素直に褒めてあげたら、すごい勢いでキレ始めましたよ、この不良。

 最近のキレやすい若者、怖い。


「もういい! てめえと話していると、頭がおかしくなる」


「安心してください。元々会話になっていませんから。私、猿語は介していませんので♪」


「誰が猿だ、クソアマ! とことんバカにしてくれやがって……! ――ケンジ、マサシ! やっちまってくれ!」


「その言葉を待ってたぜ! いくぞ、マサシ」


「おう!」


 タカシさんが言うと、獰猛な笑みを浮かべたケンジさんとマサシさんが、待っていましたとばかりに私へ突っ込んできました。

 真っ先にこの中で一番人畜無害そうな私を狙うとは、これ如何に。私が一体何をしたというのでしょうか。まったく解せません。


(……ハッ! もしや私があまりに可愛いくて、二人とも溢れんばかりのリビドーを抑え切れなくなってしまったのでしょうか……)


 向かってくる二人を尻目に、コンマ一秒で「ほう……」と溜息をつきます。

 ごめんなさい、ケンジさんとマサシさん。不可抗力とはいえ、あなた方の気持ちを弄んでしまって……。

 ただ、お気持ち自体も大変迷惑で気色悪いですが、加えてその厳つい外見もタイプではないので、大人しく諦めてください。

 ああ……。美し過ぎるとは、罪なことですね……。


 ――まあ、冗談はこのくらいにしておきましょう。


 ともあれ実のところ、誰を狙っても同じなんですよ。

 だって……。


「ハハハ。さあ、来なさい!」


 こちらには嬉々して勝手に拳へ飛び込んでいく、最強の盾がいますからね。

 結局彼らの攻撃は、この肉盾(にくじゅん)が一つもらさず集めてくれます。


「チッ! こいつが噂に聞く『Mの壁』か!」


「大丈夫だ、ケンジ。オレとお前のコンビネーションがあれば、こんなひょろいヤツ、簡単にのせるはずだ!」


 おお、麗しき友情かな。

 不良というのは、意外と仲間意識だけはしっかりしていることが多いですよね。彼らもその例に漏れず、固い友情で結ばれているようです。若干BL臭いですが、そっとしておいてあげましょう。


「フッ! その程度の打撃力では、私を倒すことはできませんよ!」


 けれども、今回は相手が悪かったですね。

 あの変態執事、サブミッションはもちろん、大砲(の弾になる)に鈍器、果ては雷でも耐えきります。不良二人の徒手空拳くらいでは、ビクともしないでしょう。


 ん? よく見たらあのドM、受けなくていい攻撃まできっちりと受けていますよ。

 あ、今チラッと見えた顔、すごく幸せそう。


「おい、マジかよ……」


「ま、まさか『狂犬のケンジ』と『鉄拳のマサシ』の拳を、あんだけ受けても立っていられるなんて……」


 後ろで見ていたタカシさんとシゲキさんも、兼定さんの気色悪い不死身性に呆然自失としています。もはや棒立ち状態ですね。隙だらけです。

 にしても、『狂犬のケンジ』に『鉄拳のマサシ』だなんて……。

 ソウルネーム不良一派の次は、二つ名不良一派ですか。

 また、そこはかとない香ばしさを感じますね。地獄の不良って、何でこう中二病をこじらせた人達ばかりなのでしょう。嘆かわしい限りです。


 あっ! もしかしたら聖良布夢さんの『漆黒の堕天使』というのも、彼らが勝手に名付けただけかもしれませんね。

 すみません、聖良布夢さん。私、またあなたがやらかしちゃったのかと思っていました。


 ――まあ、それはどうでもいいや。今は、私のやるべきことをやりましょう。


 不良コンビと兼定さんの一戦を尻目に、私と子鬼三兄弟は鼻歌を歌いながら準備(﹅﹅)を進めます。


「ハア……ハア……。くそっ! びくともしねえ……」


「嘘だろ……。オレとマサシがこんなヤツに……」


 私たちの準備があらかた終わった、ちょうどその頃。

 ついに体力が尽きたのか、ケンジさんとマサシさんが膝をつきました。


「フフフ。口ほどにもありませんね」


 対して兼定さんは、血色に髪の艶、その他もろもろが見違える程良くなっていますね。殴られる度に、二人から生気でも奪い取っているのでしょうか。どんな新種妖怪でしょうね、この変態執事。

 こんなのの相手をさせられているケンジさんとマサシさんが、少しだけ憐れに思えてきました。


「くっ! こうなったら、オレ達の友情ツープラトンで一気にケリをつけてやる! ――やるぞ、マサシ!」


「おう、ケンジ!」


 この二人、もはや不良というより少年漫画の主人公のようになってきましたね。

 ですが、私は不良達の麗しき友情物語が見たいわけではないのですよ。

 というわけで……。


「はいは~い。二人とも、ご苦労様です。もう休んでいいですよ~」


「「あがががががっ!」」


 いつかの閻魔様よろしく、私流裁きの雷(改造スタンガン)でマサシさんとケンジさんを襲撃――おっと、違う。二人にお仕置きを加えました。

 ちなみにどこから私流裁きの雷(改造スタンガン)を出したかは、乙女の秘密です。気にしてはいけません。


 さて……、鬼らしいパンチパーマとなったケンジさんとマサシさんは、黒煙を吐きながら床と熱烈な口づけを交わしました。


 これで三人。残るはリーダー格っぽい二人だけです。

 一体、どうやって料理してあげましょうかね。ウフフフフ……。


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