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はい、こちら黄泉国立図書館地獄分館です  作者: 日野 祐希@既刊8冊発売中
第一話 ~春~ 再就職先は地獄でした。――いえ、比喩ではなく本当に。
13/63

リニューアルオープンです。

 閻魔様の執務室へお邪魔した日から三日。

 地獄分館のリニューアルオープンの日は、あっという間にやってきました。


「――それでは菅原道真館長並びに閻魔分館長、テープカットをお願いいたします」


 およそ一年ぶりの完全開館ということで、今日は朝から簡単なセレモニーが行われています。

 と言っても、急なセレモニーであるため、来賓は本館の館長さんだけですけどね。


 それにしても、まさか本館の館長が菅原道真(すがわらのみちざね)公とは思いませんでした。

 まあ、道真公といえば学問の神様ですから、ある意味ピッタリとも言えますけどね。

 今後のことを考えて、ぜひ弱みを握り――ではなく、ぜひお近づきになっておきたいものです。コネは大事ですからね。


 ――あ、そうそう。要修理になっていた大量の本ですけど、なんとこの三日間で半分近く片付いてしまいました。

 なぜかと言えば、例によって兼定さんが無駄にハッスルしてくれたからなんですけどね。

 閻魔様の執務室に行ったあの日……、


「兼定さん、五分以内にここに書かれた修理道具を買ってきなさい。そしたらご褒美に、終業後、徹夜で本の修理をさせてあげます。休憩なしのぶっ通しですよ。まあ楽しい♪」


 と言ってあげたら、彼は「喜んで!」と満面の笑顔で修理に協力してくれました。

 おかげで、書架も随分とマシな感じになりましたね。これならば、十分に見られるレベルです。

 残りの修理も、あの迸るMパワーがあれば、それほど時間を掛けることなく終わらせることができるでしょう。まずは上々の滑り出しです。


 ――って、あら?


「では、これにて地獄分館会館セレモニーを終わります。皆様、お忙しいところお越しいただき、誠にありがとうございました」


 どうやらセレモニーの方も終わったようですね。セレモニーを見に来て下さった獄卒達も、それぞれ職場へ戻っていきます。

 私も分館の司書として、子鬼三兄弟と共に帰って行く方々を見送りました。お見送りとか正直(だる)いことこの上ないですが、これも仕事です。至高の営業スマイルで、我慢、我慢!


「おーい、宏美君」


「あら、閻魔様。お疲れ様です。本日はお忙しい中、どうもありがとうございます」


 しばらくすると、道真公との挨拶を終えた閻魔様がこちらへやってきました。

 今日はこのゴリラも、分館長として式典を頑張っていましたからね。労いの言葉くらいはかけてあげます。


「うむ。君もお疲れ様。――さて、君はこれで、名実ともにこの図書館の司書だ。最初は大変なことも多いと思うが、頑張ってくれたまえ」


「はい。お任せ下さい、閻魔分館長」


 分館長としてエールを送ってくださる閻魔様へ、笑顔で会釈を返します。

 本来なら、一カ月前から始まるはずだった憧れの司書生活。

 死んでしまった上、就職先がなぜか地獄に変わってしまいましたが、これでようやくスタートを切ることができました。


「さあ、始めましょうか――私の図書館を」


「うむ。期待しているよ!」


 高らかに靴の踵を鳴らし、私は司書として初めの一歩を踏み出したのでした。


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