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暗殺者の憂鬱  作者: 犬猫モフ
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一目惚れ

仕事があり更新が遅いですけど、楽しんでもらえると嬉しいです。


 俺の名前はシン=フォルカス、暗殺者一族の一員としてこの世に生まれ落ちた。まだ幼い頃から殺しの英才教育を受け続け、十五歳になる頃には一族内に敵うものが居ない程の暗殺者になっていた。


 そして五年後の現在、二十歳になった俺は何故か今、勇者と呼ばれる存在と共にいる。


 俺自身にもどうしてこうなったのか理解出来ない、途方に暮れ、勇者に自分の腹を抱えられ夕日を眺めていた。



 時は少し遡る。



『カナリファ聖王国で古代儀式魔法が執り行われ勇者が召喚された』との噂を耳にしたとある大貴族の依頼により、俺はカナリファ聖王国の城に忍び込んでいた。




「カナリファ聖王国で、本当に勇者が召喚されたのか、それをお前の眼で確かめて来てもらいたい。可能であればその勇者を暗殺するのが依頼の内容だ」


 眼鏡を掛けた厳めしい顔の齢四十過ぎの男。

 アロガント帝国の大貴族《マグナート公爵》ヴィレム=マグナートとは彼の事だ。


 彼は俺にとってはお得意様とも言える人で、まだ俺が未熟者の暗殺者である頃から贔屓にしてくれている人物でもある。


 今回の報酬は前金で白銀貨一枚、暗殺が成功すれば追加で一枚貰える事になっている。白銀貨一枚は金貨にして百枚の価値を持つ。報酬に釣られた俺は深く考えもせずに、その依頼を引き受けたのだった。





「くっ!、・・・何故俺はこの依頼を受けたんだっ!」


 疲れきった様に溜め息を吐きながら俺はその場に座り込む。


 報酬は確かに良かったがよく考えずに依頼を受けたのは失敗だった。城中の至る所に兵士が配置されており、城に忍び込んだは良いが苦労は並大抵ではなかった。


「ふぅ、何だあの兵士の人数は、厄介な聖騎士も嫌になる程居やがる」


勇者召喚の噂は真実だったらしく、城内の至る所に騎士が立っており、普段はカナリファ聖王国中に散らばって活動している筈の聖騎士が、確認しただけで5人もいた。聖騎士一人の力は一般兵士百人に匹敵すると言われている。仮に見つかりでもすれば、俺の命は儚くも散ってしまうだろう。


「どうするかな・・・」


少し考えるとしよう。今俺が居るのはカナリファ聖王国、ヴィーゾフ城一階にある中庭の倉庫の陰だ。中庭は城で保護している珍しい生き物が数匹いる為、ストレスを与えないようにかなり広く造られている。倉庫の陰から中庭を覗くと小さなドラゴンやユニコーン等が穏やかな表情で暮らしているのが見える。


「・・・・・・」


ハッ!こんな所で和んでいては駄目だな、早く勇者を探さなければ!!


重い腰を上げてもう一度中庭を覗くと、先程は居なかった金髪の少女が中庭に入ってきた。



・・・・・・綺麗だ。


俺は見惚れてしまった。長い金髪は彼女に良く映え、太陽の光を照らし返す。顔は今まで見たどの女性より美しい。歳はまだ十代後半になった頃だと思われる。


中庭のベンチに彼女が座ると、周りの生き物達も気がつき駆け寄った。


「ああ、カワイイなお前達は」


彼女はベンチに座ったまま、膝に乗った小さなドラゴンの頭を左手で撫で、近くに寄ってきたユニコーンの頬に右手で優しく触れた。



暫くの間、彼女とドラゴン達の触れ合いを見ていると、一人の聖騎手が中庭に入ってきた。


「ティアラ様、やはり此処にいらしたのですね。ドラッケン隊長も捜していましたよ」


彼女の名前はティアラと言うらしい。カナリファ聖王国の重要人物には載っていなかった名前だ。


(まさか彼女が召喚された勇者なのか?なら俺は彼女を殺さなければいけない事に・・・)





「セリオス、ドラッケンは酒の飲み過ぎで二日酔いみたいだったぞ?酒臭い奴を此処に連れてくる訳にはいかないだろ」


「まあ、そうですが・・・行き先ぐらいは隊長に伝えても良かったのではないですか?」



「私はドラッケンの奴に中庭に行くと伝えた筈だが?私が此処に来る前も、『頭が痛い・・・薬を持って来てくれネリス』と言っていたぐらいだから、忘れていても仕方ないだろうな」


「・・・ネリスがドラッケン隊長の近くに居なかったのは隊長の薬を貰ってくる為だったのですね。酒の飲み過ぎには注意して下さいといつも言っているのに!ネリスも隊長を甘やかし過ぎなんです!!」


「私に言っても仕方ないだろ?それで、何故私を捜していたんだ?」


「そうでした・・・、ティアラ様、聖王様がお呼びです。旅立ちの準備は済んでいますか?」


「ああ、準備は済んでいる。それでは行こうか、セリオス」



俺が少し考え込んでいる間に話が終わったようだ。彼女がベンチから立ち上がり指笛を鳴らすと、小さなドラゴンやユニコーン達が彼女の周りに集まった。


「お前達は此処で待っててくれ。また後で会おう」


彼女はそう言うと、聖騎士セリオスと共に中庭を去って行く。


俺はその姿を倉庫の陰から見送った。








主人公が少し空気になっているような・・・・・・

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