第七話 前途多難な二人
沙紀たちは近場のゲームセンターへと向かいました――。
学校から10分ほど歩いた所にゲームセンターはあるのです。
まぁ…なんといいますか学生たちの溜まり場ですね。
遊びに来ている人が沢山いる。
沙紀は口をパコーンと開けていた。
こ…こ…こんなの―――見たこと無いです…っ!
ピコッ…ティッティティー…♪
広いゲームセンターの中に沢山あります!
あのウィンウィンは何ですか?!
ぬいぐるみが入ってますよ?!
瞳をキラキラさせて喜んでいた沙紀を見て愁が問いかけた。
「もしかしてお前…ゲーセン初めてなのか?」
「はいっ!」
素直過ぎる………ゝ
可哀想な奴…
「あのウィンウィンはなんですか?!」
「ウィンウィン…?あぁクレーンゲーム」
「クレーンゲーム…」
やりたいやりたい…。
何かやりたい!!!!
そんな目をしていたのか愁さんは私に百円玉を渡してくれました。
私何をすれば…?
「だから…教えてやるからどれが欲しいんだ?」
「え―っと…あれです!!」
沙紀が指指したのは熊のぬいぐるみ。
少女が好みそうな顔をしていた
百円を入れて愁はお手本を見せた。
初めて見るクレーンゲームが余程楽しいのか沙紀は目を見開いていた。
ボトッ
チーチチチチチチ〜♪
「愁さん凄いです!!わぁ本当に凄い!」
「……やる」
「え?!本当ですか?!わーいありがとう!!」
沙紀は幼い少女のように喜んでいた。
………私もやらなきゃ!
「やるぞぉ!」
えっと…百円入れて…あっ動いた…。
これを動かすのかな?
あの熊さんが良いですねっ!!
………愁さん喜びますかねえ?
いや…喜ばない確率の方が高いですね!
でも頑張ろうっ!
私はその熊に狙いを決めた。
か…可愛い…///
「右」
「え?」
「熊取りたいんだろ?」
愁さんは腕を組みながら教えてくれた。
私は右に動かして熊さんの近くに寄せた。
つ…次は何をすれば良いんですか?
という目で愁さんに聞いてみた
「前に少し…ぐらい」
「はいっ」
熊さんに合わせるように前に動かした。
クレーンが動きだした。
(これは…楽しいです)
ウィーン………
あっ降りていってます。
どんどんどんどん近付いていきました。
熊さん…取れます様に!
目を閉じて手を重ねた。
お願いします…。
お願いします…。
取れます様に…。
ガタンッ
チーチチチチチチ〜♪
「と…取れたっ!取れましたよっ愁さん!」
「やったな」
嬉しすぎてピョンピョン跳ねている沙紀を愁は嬉しそうに見ていた。
クレーンゲームの下から熊のぬいぐるみを取り出した沙紀は愁に近付いていった。
「どうかしたのか?」
「あの…熊…好き…ですか?」
「?」
「これっ…愁さんに…」
真っ赤な顔をして俺にぬいぐるみを差し出して来た沙紀は子供の様だった。
何というか…?
俺はぬいぐるみは飾らない主義てか男だし…。
でもこいつから貰うものは嬉しいかもしれない。
俺はそれを受け取った。
その時のアイツの顔すっごく嬉しそうに照れて。
「ありがと////」なんて言うから笑えた。
普通だったらこっちのセリフなんだけど(笑)
「ありがとさん」
「!!!」
「なんだよ…行くぞ」
「あ…はいっ///」
俺はコイツの笑顔が好きだ…と思う。
出会って二日しか経っていないが…何故だろう。
"嫌い"だった筈の女の事を愛しく思う。
守ってやりたい。
コイツを苦しめる全てのものから…って歌あったよな…苦笑
でもそれは俺の本当の気持ちかもしれない。
「ふったりとも〜ホッケーやろうよ〜」
「じゃあアスカと僕が…」
「敵だろ……?」
「ひぃ?!はひっ!そです!」
いつも通りに夏樹が鏡を睨みつけた。
夏樹は鏡に対しては有り得ない程怖いキャラで通ってる。
コントみたいに見えるが現実に見てみろ。
俺でも怖いと感じた。
顔は笑ってんのに目は鬼の形相
人間じゃねえから…〆
結局俺と鏡,沙紀と夏樹のチームになった。
沙紀は少し悲しそうに俺を見ていた。
う…………っ。
そんな目で見るな…。
抱きしめるぞこの野郎。
///////
何言ってんだ俺は。
沙紀は男が嫌いなんだぞ…俺も嫌われてる。
今のままでいいんだ。
「いくよぉっ!」
「頑張りましょう!夏樹くん」
「アスカぁぁぁっ」
「………死」
「ひぃぃぃぃ!!」
ウケる…。この二人まじウケる
沙紀は天然で二人を無視してるし…何か楽しいわコイツらといると。
「はっじめ〜」
意外と燃えたホッケー勝負。
結果は俺らの勝ち。
沙紀なりに頑張ってはいたんだが…慣れだな。
悲しそうにうなだれていたから俺は頭を撫でた。
「またやろうな」
「はいっ!今度は愁さんとお仲間に!」
ニッコリと笑った。
そんな顔の変化に俺はびっくりしながらも可笑しくなって爆笑してしまった。
「負けたのに笑ってたら意味ねえじゃんっ!」
「え?」
「どんだけだよっ!」
俺の爆笑に一番びっくりしていたのは沙紀だった…と思う。
俺は滅多に笑わないし顔怖いしな…
でも今のはウケた!
沙紀は
「何がおかしいんですかぁ」と俺に聞いてきた。
お前の顔だよ…(笑)
「次何やりたい?」
「え―っとですね…」
沙紀が探してると後ろから甲高い声がした。
振り返るとびっくり。
沢山の女子がいたのだ。
う"………………↓
女…かよ(汗)
「キャアアア!超カッコイーんだけど!」
「まじ―?!」
「本当だ〜!いやぁん〜カッコイい〜」
ウザイウザイウザイ…
てか逃げようぜ…
俺は逃避行を試みた、がそれは打ち切られた。
何故かというと…
「カワイい〜ちっこいの〜」
「眼鏡くん萌〜」
約一名を除いて男子全員捕まっていたからだ。
沙紀はどうしたら良いのか迷っていた。
一人の女子が沙紀を見て唖然としていた。
沙紀もびっくりしていたようだ
「さーちゃん?!」
「凜ちゃん?!」
「何でさーちゃんがここにいるの?!もしかして連れ?!」
「高校の友達です」
「…あんた男の子苦手じゃなかった…?」
「うん。でも私の高校が男の子の皆さんばかりで女子私だけなんです」
普通に喋ってるよ…。
沙紀が女の子と喋ってるよ…。
中学の友達か………?
しかし…嬉しそうな顔してんだな沙紀は。
てか腕離してくれ!!!
「あの人超ハンサム!」
「愁さんですか?って…皆さんストップです!」
「え?」
沙紀が女の子に言った。
みんな沙紀を見ていた。
「愁さんはダメですよ?」
ときめかせるなぁ!!
ダメですよってなんだよ沙紀!!
俺の腕に引っ付いていた女子は諦めないとでも言うように俺の腕を離さない。
沙紀は友達にも言った。
「愁さんは…ダメなんです…」
「アイツら聞かないよ?」
「でも………」
「彼氏なの?」
彼氏っていう言葉に凄く反応していた沙紀の顔が笑えた。
今の状況は笑えないが。
俺はコイツらを無理やり離して沙紀の方へ向かっていった。
沙紀は俺には気付かない。
ポンっ
「え?あれ?愁さん」
「ごめん。コイツ俺のだから」
「ふぅん…やっぱりね。
ちゃんとさーちゃん守ってやれよ」
男勝りな口調の女は沙紀を大切に思ってる。
俺は頷いた。
沙紀はゆっくりと俺の方を向いてきた。
耳朶まで真っ赤だ。
初めて会った時は真っ青だったのにな。
トマトみたいになってる沙紀を持ち上げた。
「えっ?!ちょ…愁さん?!」
「お前さ…その気にさせんなバカやろう」
「????」
俺の照れた顔に一番驚いていたのは夏樹と鏡であった。
「愁くん…ありゃ惚れてるね」
「アス…」
「てめえは死ぬか?」
「いやぁ!!」
沙紀ちゃんも愁くんも…前途多難って感じだね。
これじゃあ両想いだって事気付くか分からないね………。
どっちが言うのかな…?
一番この二人を理解していたのは夏樹かも。




