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第六話 溜め息の理由

キーンコーン…


四時間目終了の鐘が保健室にも鳴り響いた。

さっき熱を計った沙紀は今は静かに眠りについていた。

その隣のベッドにはクラスの男子が全員座って眺めていた。


「寝顔…可愛いな」

「さーちゃん熱あるんだよな」

「辛いよね…」

「てか…愁さんズルいっすよ」

「あ?」


クラスの一人山本克が話しかけてきた。

俺は不機嫌そうに聞いてみた。

ズルいってなんだよ。


「だってさーちゃんと仲良いじゃないっすか!」

「………」

「僕らも仲良くしたいんすよ」

「すれば…?」


なんかムカつくな。

俺は別に仲良くしようとして一緒にいるんじゃねえし…。

仲良くしたいんならすれば良いじゃねえか。

沙紀は友達がたくさんいれば幸せなんだよ。

アイツの笑顔は何回見ても飽きねえし…。


可愛いし?

俺女嫌いだよな…?

はぁ…分かんねえ。


「仲良くしたいんなら、してやれよ」

「え?」

「お前ら良い奴らなんだから」

「愁さん////」


うわ―…何かキラキラした瞳で見てきた…。

俺昔から男にモテるんだよな…

ホモ疑惑が出たぐらい。

ホモじゃねえからな…。


沙紀が寝返りをうった。

綺麗な黒髪が赤いリボンで二つに結ばれていて、睫が長い。

やっぱり女の子なんだなって思わせる。

抱き上げた時細くて折れちゃうかと思った程だ。

………心配?

違う。

ただ顔を見ていたかっただけだ

………変だよな俺。

女嫌い治ったかもな。


「ん―…にゃ」

「可愛い!」

「し―沙紀ちゃん起きちゃうじゃん!」

「ごめんごめん」

「アス…」

「黙れヲタク」


鏡は静まった。

時々ぼそりと

「僕今日全く話してない…」と悲しそうに言っていた。

ヲタク…ね。


「あれ…ここは…」


沙紀がゆっくりと起き上がった

周りを見渡して俺を見つけたのか一瞬嬉しそうな顔をしたが次にはっとした顔をして目を逸らした。

耳朶が赤い。

何照れてんだ…?

コイツおかしいんじゃ?


「おはよ!沙紀ちゃん!」

「あ…夏樹くん」

「熱どお?」

「大分下がりました」

「良かった!」

「ご心配おかけしました…」


ペコリと頭を下げた。

その照れ笑いが可愛かったらしく男子はキャーキャー言っていた。

………皆さん元気ですね…。

ではそろそろ授業に出なくてはいけませんね。

って…運動会シーズンだから授業ないんでした!

はぁ…


「今日は休むか?」

「え?」

「お前完全には治ってないんだから休めよ」

「愁さん…でも…大丈夫です」


愁さんがなんか優しい!

ていうか…さっき目を逸らしてしまいました…。

愁さんを見ると顔が赤くなってしまうんです。

………どうしても…。


「アスカ!元気にな…」

私をアスカと呼ぶのはもう止めてください…。

鏡さんは言葉の途中で固まった

男子全員に睨み付けられたからでしょうか…?


「死にたいの?」


ぼそりと夏樹くんが呟いた。私にも聞こえた…。

何かキャラが違う…。

面白い人たちだなぁ…何て思いました。


「ねえさーちゃん」

「はい?」

「僕らと友達になってくれませんか?」

「え?」


そんな質問されても…。

まだ慣れてないんです。

―――――でも。


「はい////」


慣れていけたら嬉しいです。

皆さんと友達になれたらきっと幸せです。

皆さんよろしくお願いしますね


「じゃあ更衣させるから男子は外!」

「え〜〜〜〜〜!」

「え〜じゃないの!ほらさっさと行く!」


男子はブーッと頬を膨らまして残念そうにしていた。

流石に更衣は見ないで下さいね


十分後―――


「も―良いですよ?」


ダダダダダダダッ


保健室の前で待っていた男子が一斉に入ってきた。

うわぁ…怖い…

ビビっていると愁さんが私の腕を引っ張った。

ストンと立った私を連れて校庭へ向かった。


横顔…格好いいなぁ…

は?!

私男の人苦手なはずですよね?

あう〜何だか分からないよぅ〜


「今年の優勝は我がクラスが貰った!」


内田先生が大きな旗を作りながら叫んでいた。

き…気合い入ってますね…汗

男子は

「うぃっす!!」と元気良く返事をしてた。


あのう…私は何をすれば良いんでしょう…?


オドオドしている私を見つけた愁さんは話しかけてきた。


「何やってんの?」

「え?!あ―私何をすれば良いんでしょう?」

「走る?」

「運動苦手なんです…」

「特訓するか?」

「え?」


私は苦笑した。

運動苦手なんですっ!

走るの…。

愁さんはそんな顔をした私の頭を優しく撫でた。

あったかい…。


「どーすんの?」

「…………くれるなら」

「え?」

「愁さんが一緒に走ってくれるならっ!」


顔を真っ赤にさせて。

そんな沙紀を愁は優しく見つめていた。


―――照れてんのか?

変な奴………ゝ

こっちが誘ってんだから良いに決まってんのに…苦笑い…


「ああ…良いよ」


目を輝かせていた。

犬…

いや…なんでもない。

ただ可愛いなぁっと軽く思っただけだ。

………何か文句ある?


「じゃあ走るぞ」

「はい!」


今日の日程は校庭十周。

女子もである。

てか女子は沙紀しかいないのであるが…。

男子は

「おいっちに〜」と元気良く叫んでいる。


沙紀は一周目でへたれていた。


つ…疲れましたぁ…ゝ

マラソン嫌いです〜(泣)

愁さん元気ですね…


「沙紀大丈夫か?」

「ちょっと疲れました…あ、でも大丈夫ですよ」

「………んなよ」

「え?」

「無理…すんなよ?」


愁さんはニコッと笑って私を見た。

その笑顔にキュンとしてしまいました!

え〜あ―…私どうしたんでしょう…?

さっきからずっとずっと愁さんの事気になってしょうがないです…。

胸がドキドキしてます。


よく…分からないです。


三周目―――


「ひぃっ…ふぉ―」


変な声が出た。

汗がダラダラと出て止まりません…っっ!

はぁ―はぁ―………!


「後七周だ。頑張れ」

「ふぃ…!」


四周…五周…六周…七周…八周…九周…


「じゅ…十周…!!!!」


私は万歳をしながらゴールへ突っ走った。

何だか泣けてきました!

ああ―私ここまで頑張れるんですね…(´ー`)


バタンッ


勢い余って地面に突っ込んだ沙紀は動かない。

し…死んだ?

愁が急いで駆け込むと顔を擦りむいた沙紀がへにゃあっと笑っていた。


ふぅ…………


安心したのか愁は小さく溜め息をついた。

そっと沙紀を抱き上げてベンチに連れて行った。

沙紀は

「ど…どうも…」と少し照れ気味にお礼を言った。


「あれ…どこ行くんですか?」


愁はとことこと歩いていってしまった。

沙紀は首を傾げて空を見上げた


「さーちゃん!大丈夫?」

「え…っ?」

「あ―僕克スグル。克って呼んでね」

「は…はぁ」


克くんは笑った。

マラソンをしていたのか汗がびっしょりです。

私はタオルを差し出してみました…。


「まじ?優しいね」

「いや…」

「男の子早く慣れるといいね」


と言って私にタオルを返してもう一度校庭に向かっていってしまいました…。

忙しい人だなぁ…。


ヒヤッ


「うきゃあ?!」


突然頬に冷たさを感じた沙紀は変な声を上げた。

振り返る前にクククッという小さな笑い声が聞こえた。


「どんな声上げてんの…はいスポーツドリンクでいいか?」

「………愁さん」

「何だよ?急に俺がいなくなって悲しかった?」

「っっっ!」


図星です////

そうですよ!愁さんがいなくなって悲しかったんです…。

ずっと側にいて欲しかったんです!!


これが言えたら良かったのですがねえ…。

ごめんなさい…。


「あり…がとう」

「素直素直」

「愁さんは飲まないんですか」

「俺は大丈夫」


でも水分取らなきゃ倒れちゃいますよ…?

私の飲むかなぁ…?

はっ?!間接キスじゃ?!

自分でやらしい事を一瞬考えた事について沙紀は悩んでいた。

う――――――?

いつの間にか顔が赤くなっていた。


「何くれんの?」


今日愁さんキャラが違いますッ

何か―何か―…………

――格好いい…………

あう〜ゝゝ

いつもなら

「早く飲め」とか

「何だよ」とか冷たい感じですよね…?

………どうして…?


混乱させないで下さいよぉ…

またまたぽぉっと赤くなる顔を押さえた。


「変な奴…どうかしたのか」

「あれ……?」

「大丈夫か?」

「はぁ…」


キーンコーン…


終わった…………。

何か夢が覚めたような気もしますね…?

お家に帰ろう〜♪


「沙紀ちゃん!明日!学校お休みでしょ〜?」

「はい♪」

「遊びにいこーよ」

「遊び…ですか?」


遊び…遊び?

男の子はどの様に遊ぶのですか

カラオケ?

パチンコ?

け…競馬?

え?だんだん親父の遊ぶものになってる?

………そういえば……

そうですね。


「ゲームセンター!」

「ああ…」

「じゃあレッツゴー」


私は夏樹くんに連れられて街のゲームセンターへと向かいました………。

はぁ………………。

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