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第三十一話 愛しの人

おはようございます!

お早い投稿の桜木です(笑)


今回で菜川光一シリーズは終了です。もうすぐ完結に近付いて参りました。

早いなぁ...。


三人称ばっかなので沙紀は私、愁は俺、光一は僕、俺の二つです。


ではでは。




どうしてそんな顔をするんだい?


菜川光一に耳元で囁かれた。

あなたがいるからです。


沙紀side



契約書を見せられて固まった。

コイツは頭がおかしい。

どうしてここまで人を陥れるんだろう。何が楽しい?

私は奴に聞かれた質問にずっと目を伏せていた。


自分が幸せになるのか

みんなの幸せを願うのか


そんなの…決まってます…


だから私は頷いた。

あなたの手駒だとしても。踊らされるピエロだとしても。


そして今に至る。


「……沙紀様、お飲み物は?」

「いりません」

「かしこまりました」


かなり機嫌悪いです。

でも…何だかやるせない。

何も話す気も興味も無くてただボーっとこの過ぎてく時間に流されていくだけ。


「ァハハ。そうですね」


奴の笑い声を聞いてチラリと目を向けた。

菜川はパーティーに来ていたお客様と楽しそうに話していた。

随分、豹変するもんですね。


ヒマ…ですね。

ただ座っているだけ。


私はパーティーに来ている人たちを見渡してみた。

ひぃ―ふぅ―み―やぁ―...


「多すぎです…」


しかしそんな中に一人来ている人たちの中で自分の学校の制服を来た女の子がいた事に気付いた沙紀は椅子から無意識に立ち上がっていた。


あの子...確か隣のクラスの…

井上 佳世さん…?


「沙紀様?」

「ちょっと…見てきます」

「ダメです。あなた様にはこの席についていて頂かなくては」


沙紀はにっこり笑って腕を掴む姶良の腹に足蹴りを食わした。

もちろん見えない場所で。


「グハッ」

「すみません。こういう事慣れてないんです」


沙紀は……怖い。

意外に……怖い。

腹を押さえながら姶良は見えない沙紀の姿を見ていた。


「元気な…お方だ…」




「えっと…さっきの女の子はこの辺りにいたような…」


頭をフル回転させて探した。

う―ん...どこにいるのかなぁ。


「おい」


誰かに腕を掴まれた。

振り返ると菜川光一だった。


邪魔しに来たんですか?

そんな眼で睨みつけた。


「お前いちいち探させん…」


菜川光一が言いかけた時だった


「光一…?」


女の子の声が聞こえた。

私も菜川光一も振り返った。


あれ…さっきの女の子…?

えっと…


「お知り合い…デスカ?」

「……佳世…」

「光一…婚約パーティーって…本当なんですか…?」


悲しそうな顔をする佳世さん。

私は逃げた方が…。

はい!逃げましょう!


「じゃあ私は行きまー…」

「ああ。俺はコイツと婚約する。それぐらい分かるだろ」


そう言って掴まれていた腕を引っ張られて菜川光一の胸に飛び込んだ。

いったぁ…


「……嘘ですよね」

「嘘じゃねえ。証拠なら見せるぜ?なぁ沙紀?」

「はい?証拠ってなん…」


体を引き離され上を向いた瞬間、菜川光一の顔が間近にあった。

唇には妙な違和感が。

こ…これは....


「ンンンンッ?!」


私は唇を塞がれていた。

そう、菜川光一の唇で。

つまり…キス……


タッタッタッ...


20秒ぐらいのキスが終わり息を切らしているといつの間にか佳世さんはいませんでした。


「あなた何をしたか分かって」

「分かってる。あいつは俺を見捨てたんだよ…」


そう言って菜川光一は私を置いて戻っていってしまった。

その場に残ったのは放心状態な沙紀と耳障りな話し声だった。


菜川光一の悲しい顔。

初めて見た。


どうしてそんな顔をするの?

あなたの答え聞かせて…?




「なんであいつ…いんだよ…」


呼んだはずはないのに…。

忘れた…はずなのに…。

胸が締め付けられる…。


あの時の光景が蘇る。

五年前の夏。

真っ暗な空には金色の星がポツポツと輝いていた。


どうしてそんな顔をするの?

また会えるよ?


真っ暗な空の下、二人きりで肩を並べたあの日。

急に告げられた別れの言葉。


会えるよ…

きっと…


彼女は理由を言ってくれなかったんだ。どうして僕から離れたのかを…。守ってやりたかっただけなのに…。


まだ…諦めが付かないのか。

親父に言われた言葉。


頷く事を許されなかった。

助けてやりたかった。


本当は、まだ愛おしい。

彼女が…愛おしい。

でも…沙紀を…巻き込んでしまった事は後にも先にも変わらないんだ…。


弱虫なんだよ…。


「菜川光一!!」


その呼び方…。

俺は少しだけ流れた涙を拭いて振り向いた。


「あなたは…はぁ…まだ…好きなんですね…?」

「なんの話だよ」

「佳世さん、泣いてましたよ」


ビクッ

..

佳世という言葉に反応してしまう自分が馬鹿らしい。

いつだって俺は…


「弱虫なんていませんよ」

「な…」


見透かされたように沙紀に言われてやっぱり涙腺が緩む。

弱虫なんていませんよ…


「弱虫って自分が思ってる人は弱虫じゃないんですよ」

「……」

「私はあなたが優しい人だって気付きましたよ。愛おしい人が待ってますよ」


沙紀はにっこり笑った。

どうしてだろう。彼女の言葉が胸に刺さる棘を抜いてくれた。


愛おしい人。

俺の愛おしい人は...


「佳世…ッ!!!」


いつの間にか俺はまた走り出して佳世を追いかけていた。

もういないかもしれないけど俺は嫌いな運動をしている。


走り走り走り走り走り。

そして信号で止まっている懐かしい背中を見つけた。


まだ泣いてるかな。

俺は後ろから抱きしめた。


「わっ…?………」

「佳世…」


懐かしい香り。

暖かい背中。


全て…全てが愛おしい。


「光一…?」

「俺な…お前が好きだ…。世界中の誰よりも…好きだ…」

「こう…ぃ…」


途中から背中が揺れていた。

泣いてる。

バカだなぁ…。

やっぱり沙紀はすげえよ。


そしてごめんな。


俺は泣いている佳世にそっとキスをした。

懐かしい愛おしい人と。




「え?なんだと?高校の売却は中止にしろ?水野家との契約もナシだと?!」


―――親父。俺は沙紀に教わったんだよ。愛しい人がいる事。

幸せは自分が幸せじゃなきゃ幸せじゃないって事。


「バカを言うな!」


―――もう決めた事だ。

それに親父だってそうだろ…?


「………」


―――母さんとの結婚。

反対されたけど幸せだったろ。

それと同じだよ。

俺も今幸せだよ。


「………そう…だな」


―――じゃあ俺パーティーに戻って終わらせてくるから。


そう言って息子は電話を切った

息子は昔の俺に似ていた。

好きになる人まで似て。

まぁ…成長したな。


なぁ…桜?

お前は幸せだったか?

俺は…幸せだったよ。


きっと笑ってるよな。

桜…




その頃一方変わってパーティー会場は呆れるかと思っていたが、何故か皆さん喜んでました。


「……沙紀」

「あ、愁さん。どうしてここにいるんですか?」

「……俺まだ理解不能なんだけど…。何コレ?ドッキリ?」


目の前の現状(光一と佳世が何故か胴上げされている)に驚く(実際には固まる)愁に優しく笑いかける沙紀。


ドッキリじゃないですよ。


「終わったんですよ。婚約事件はもう。学校もなくなりませんし…私も父も大丈夫です」


沙紀はん―ッと伸びをしていた

なんつう呑気な。


「沙紀ちゃん」

「あ、佳世さん!と光一...」


呼び捨て?!

え?!俺まだ愁さんだし?!


「沙紀、ありがとう」

「ううん。光一が頑張ったからですよ。お幸せに♪」

「それから…愁くん」

「お…ぉぉ」

「ごめんね。キスしちゃった」


………………へ?

ごめんね。の後なんつった?

キスしちゃった?

誰と誰が?


「じゃあ後は君らの番だよ」

「幸せは見つけるんじゃない。そう掴むものなんだよ♪」


そう言ってあいつらはパーティー会場の中に消えていった。

残された俺と沙紀はかなり気まずい状況であった。


「キスはしましたが…心は渡してませんよ////」


耳まで真っ赤。

なん…ちゅう可愛さ…///

手を繋いで家を出た。




もう外は真っ暗で。

夜空に輝く星が綺麗だった。


繋いだ手は温かくて

優しくて

恥ずかしくて

嬉しくて


でも嬉しかったんだ。

愁さんが来てくれた事。


ありがとう…愁さん....





後少し、頑張ります!!!

では、行ってきます(笑)


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