驚愕(sideヴェルメリオ)
「何としてでも奴等の情報を集めろ。」
先ほど言われた陛下の言葉を思い出して、内心溜め息をつきたくなった。
何としてでもってアンタの宰相でもろくに調べられなかった情報をどうやって調べろっていうんだよ・・・。俺は騎士団団長であって情報屋じゃないんだっつーの。しかし、情報屋と言う言葉ではた、と気づく。
そういえば最近、ちまたで噂になっている情報屋がいたな。名前なんだっけなぁ。ル・・・。ル、ルー・・・。駄目だ、まったく思い出せない。
思考を打ち切るように自身の銀髪をガシガシ掻いて、今度こそ溜め息をつく。
「また後で考えればいいか・・・。」
そう呟いて、ついこないだ知り合って意気投合した友人が待っているだろう酒場へと足を進めた。
酒場の扉を開くと、すぐに友の姿が見つかった。
「ルー・・・」
が、声をかけようとしたとき聞こえてきた言葉に耳を疑った。
「はい!情報屋のルースでございます!何か御用でしょうか?」
・・・・・。
意味を理解するのに、数秒はかかった。
え、何。俺が最近知り合った彼女―――ルースは、噂の凄腕情報屋サマだったワケでしたか。
それをようやっと理解して、彼女が声をかけた相手を確認する。そいつらが男なのを知ると、無意識に体が動いていた。
座っているルースの隣に立ち、肩に手を置く。そして俺ができる最高の笑みを浮かべて男たちに向かって声を発した。
「俺の連れに、何か御用で?」
少し彼女の言葉が移ってしまったようだけれど、気にしない。
「あ、ヴェル。来るの遅かったね。」
怒った様子のなく俺を見上げてくる友人。相変わらず見事な目の色だ。引き込まれるような深紅。
というか何でお前その歳で上目使いが似合うんだよ、と突っ込みたくなるがグっと呑み込んで変わりの言葉を言う。
「ごめんごめん。何か急に陛下に呼び出されてさー。」
陛下、と言う言葉を強調して、男たちをチラっと見る。思った通り奴等は青ざめていた。俺が国王の関係者だと言うことを察したのだろう。
「ふーん。それはまた何で?」
ルースがこちらを見ていない間に、男たちに向かって手をシッシッと振る。すると彼らは一目散に酒場を出て行く。それを確認した俺はようやくルースの隣に座ることができたのだった。
やっと登場できた騎士団団長。
ちなみに逃げて行った男達は後々関わってきます。
ではまた次回。