don't find me
見方によってはホラーっぽい表現が入っています。
苦手な方は気を付けてください。
一昔前、まだ私が小学校2年生だった頃の話だ。友達が、先生に内緒で通学路とは違う道を使って帰るのを見た。その時、何故か私の足はその子を追いかけて行ったのを覚えてる。今思えば、私は何か特別なことをしたかたのかもしれない。
その子と他愛もない話をして、分かれ道まで来た。彼女の家は残念ながら私の家と正反対の道を通って行かなければならない。だから、また明日ね、と言って彼女は名残惜しそうに去って行った。彼女が見えなくなった頃、私も帰ろうと思って足を進めようとした、その時だった。
キィーキィーと、ブランコをこぐような音がしたのだ。
その瞬間、私は道の反対側に公園があったことに気付いた。そしてその公園を見た瞬間、言い様のない恐怖に襲われた。ゾっと何かが私の中這い上がってくるような感覚。
私が見た公園は、もう公衆の場などではなくなっていた。草は手入れされることもなく、ボーボーに荒れ果て、唯一確認できた遊具は、鎖が錆びついて耳障りな音しか立てないブランコだった。そのブランコが、風に揺れながら前後にゆっくりと動いている。この世の果てのような荒地に、ぽつんと建っている、寂れたブランコ。もう誰にも使われることのない、可哀想な遊具。前後に揺れながら、まるで助けてと言っているようだった。
その光景を見て、たまらず泣き出してしまったのを覚えてる。
私がこの世界に来て初めて見た町。マリスガは、まさにあの時の公園で感じた感覚と同じだった。人っ子一人いない。聞こえる音は赤茶色の砂を巻き上げては通り過ぎていく風の音だけ。何より一番衝撃的だったのは、私の目の前に広がる景色だった。
何も、ない。
ただ地平線の先まで赤茶色の地面が続いている。愕然とした。しかしそこではた、と気づく。私がいたのは路地裏だ。つまり、建物と建物の間のに挟まれていた。私は慌ててもつれそうになる足を動かして路地裏から距離をとる。振り返り、私が挟まれていた建物を見上げる。
そしてまたもやショックを受けた。
今にも崩れそうな家が二つ、支えあうようにして建っていた。人が住んでいる気配はまるでない。風がふくたびに薄っぺらい屋根がピラピラとめくれる。しかも片方の家は半壊していた。まるで家を縦に真っ二つに割ったように。
不気味だった。果てしなく、不気味だった。
どこか遠いところで鳥の鳴き声が聞こえる。生ぬるい風が足の間をすり抜けていく。もう、限界だった。
私の右目からつうっと流れていく、雫。それが合図だったかのように、両目から止めどなく涙が溢れてきた。あの時と、同じように。これがもし、地球だったら。もし私が地球で、学校で、家で、こんな風に泣いていたら。友達や家族が、まっさきに心配し、慰めてくれるだろう。でもここには。だれもいない。私を知っている人も、私が知っている人も。一人として、いないのだ。絶望に飲み込まれそうだった。喪失感に狂いそうだった。
私は死んだのだ。家族にも、友達にも看取られることなく。私以外誰もいない、交差点で。
孤独。それがぴったりと馴染んだ。あぁ、私は孤独なのか。意味の分からない能力を与えられて、身一つで異世界に投げ出されてしまった、私は。
理不尽だと、いやだと思った。こんな思いをするのも、あの時のように泣いてしまう自分も。結局、私は何も成長していないのだ。
全てから、逃げ出したくなった。こんな現実からも、これからの生活からも。
逃げたって、いいじゃないか。またこんな思いをするのなら、もう自分を隠してしまえばいい。最初から、孤独でいれば「独り」に怯えることはないだろう。馬鹿らしい考えだ、と自分でも思う。でもこうでもしないと、何かが自分の中で壊れそうだった。
「私」を知るのは私だけでいい。
無理があったかな?ギリセーだと信じたい。
自分を隠してしまいました、シュリちゃん。
ちょっと中二臭です。
でも仕方ない。誰だって一人で突然異世界に飛ばされれば精神崩壊するでしょ!
いや、まだ崩壊してませんが。
ちなみに題名の意味は「私を探さないで」です。
次回から話めっちゃ飛びます。