王道的序章
まぁアレだ。
私の死因は確かに交通事故だが、別に猫や子供を助けたワケじゃない。というか、チキンな私に車やトラックと激突寸前な生物を、助けに飛び出していく勇気なんてミジンコもない。せいぜいキャーッと悲鳴を上げるくらいか。・・・今想像したら鳥肌立ったけど。しかし非情と思うなかれ、これが「普通」の反応だと私は思っている。つまり、だ。自ら危険に突っ込んでいける人こそが、今流行りの「異世界に召喚」されるにふさわしい人なのだと思う。
さて、話しが逸れたが、私は信号無視をした異常にスピーディーな車にはねられ、見事に宙を舞ったあと、地面に叩き付けられ即死した。頭の打ち所が悪かったらしい。まぁ別に変わった死に方ではない。・・・変わった死に方ではないハズだ。なのに。なのに、なんで私、見渡すかぎり真っ白な空間にいるんですか。
まさに「王道」。画面の向こう側の皆様は在り来たりな展開に飽き飽きしているだろう。けど仕方がない。来ちゃったんだから。やばい、やばいよこれ。神様ちょっと飛ばす人間違えちゃったんじゃないの。私の頭の中はパニック状態だったりする。
すると突然私から2mくらい離れた場所が光出した。ピカーってか。あばばば。やばい、やばいよこれ。アレだ、これもう自称神が現れるパターンだ。どうしたらいい?とりあえず、後ずさりしてみる。
そして案の定、光の中から現れたのは、立派な白いお髭をはやしたサンタクロース、ではなく老人だった。当たり前だよね。お約束パターンキタコレ。
「うむ。わしはか「神様ですね、わかります。分かったんで早く元の世界に返してください。・・・あ、私死んでるか。んじゃあ早く天国に送ってください。」・・・・。」
一気に捲くし立てたのがいけなかったのか、神様は黙っている。
「えーと・・・、その、実はの。お主は死ぬはずじゃなかったんじゃよ。」
やっと喋りだしたかと思えば、これまた在り来たりな・・・。
「言っておきますけど、別に異世界で人生やり直すとか、いいんで。そのまま天国に送ってくれたら満足なんで。」
とりあえず、最初に言っておく。異世界とか、別に読む分には問題ないんだけど、自分が行くと思うと本気でイヤだ。なんでわざわざ自分から危険に突っ込んでいかないといけないんだ。
「その、じゃな。言ってしまうとお主は今天国には行けないんじゃよ。」
「は?」
おいおい、待ってくれよジョニー。あれ、ジョニーって誰だ。思った以上に私は混乱しているらしい。
「お主は先ほども言った通り、死ぬはずじゃなかった。そして本来、まだ寿命が残っているやつは天国には行けん。地獄もしかりじゃ。その寿命を迎えるまで、生き続けなければならないのじゃよ。まぁ、寿命を迎えても生き続けるやつもいるがのう。」
たぶん今の私の顔は間抜けだろう。と、いうか寿命を迎えても生き続けるって。化け物か。寿命の意味ないじゃん。
「が、しかしじゃ。極稀に手違いで死んでしまうやつもおるんじゃよ。そいつは天国や地獄にも行けん。もちろん元の世界に戻るのも無理じゃ。だからそういうやつは強制的に異世界に渡るしかないのじゃよ。」
「・・・で、その極稀なやつが・・・、私、だと。」
目の前の老人はゆっくり頷いた。
なんてこったい。やばい。これはガチで危険だ。運悪すぎだろう、私。どうしたらいいんだ。この普通な女子高校生がたった一人で異世界で死なずに済むにはどうしたらいいんだァ!
「安心せい。何もそのまま送るつもりはない。」
パニくってる私を見かねてか、神様はきりだした。
「お主には、翻訳能力はもちろん、ランダムで生き残れるような能力が与えられる。」
クソッ!ランダムかよッッ!私は膝をついて拳を地面に叩き付けてみた。・・・が、効果はなかったようだ。
「・・・悪かったのう。これが決まりなんじゃ。」
「いえ、いいんです・・・。」
仕方のないことだろう。そう、仕方ない・・・フッ。
「随分暗い顔をしてるが・・・。そろそろ時間のようじゃ。お主には行ってもらう。」
「はい。」
もうヤケクソだ。こうなったら、何がなんでも生き抜いてやる。
「じゃあのう。お主が、今度こそ、寿命まで生き残れることを祈っておるよ。」
光が私を包む。なんだ、最後まで王道なのか。・・・ん?ちょっと待てよ、
「あ、忘れておった!お主の寿命は87歳までじゃ!」
87!?なにその中途半端!でもまぁ30とかじゃくてよかったか・・・。
そこで私の意識は途切れた。
初めまして。
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