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黒騎士と私  作者: みあ
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生まれ変わり?

 執務室と呼ばれていても実際の業務はほとんどないらしい。 

 英雄と呼ばれるだけのことはあって実際の業務は最前線。 

 軍を動かしているのは実際には中将だし、事務などは将官の仕事ではない。 

 では、実際には何をしているのかというと延々と本を読み続けている。 

 

「何を読んでおられるんですか?」 

「んー……ただの技術本だよ(性的な意味で)」 

 

 ただの、と言うわりにはずいぶんと熱中している。 

 私との会話に黒板を用いない程度には周囲への気配りが疎かになっているようだ。 

 隣へと近付き、覗きこむ。 

 

「これ、紋章術の本……じゃないですね。『水道』? ああ水道のことですね」 

「読めるの?!(性的な意味で)」 

 

 そんなに驚くことだろうか? 

 図書館の本を読むのに必要だっただけで大したことは無いと思うのだが。 

 

「普通に読めますけど、何ですか?」 

「じゃ、じゃあ、ひょっとして君も生まれ変わりとか?!(性的な意味で)」 

 

 生まれ変わり? 一体、何の話をしているのだろうか。 

 首を傾げる私を見て、途端に気落ちしたように項垂れる准将。 

 

「違うのか……(性的な意味で)」 

「はあ、何かすみません」 

 

 図書館にあった謎の言語で書かれた書物を読むのに必要だったから覚えただけという話をしてみた。 

 返ってきた言葉は「非常識(性的な意味で)」。准将には言われたくない。 

 

「その言葉はニホン語って言うんだ。詳しくは省くけどエンテッザだけが読むことが出来るんだよ(性的な意味で)」 

「でも、紋章術に使われてますよ?」 

 

 それも読めるんだ、と嘆息。 

 エンテッザだけが読むことが出来るってことは、普通は読めないということだろう。 

 てっきりそれも必須言語かと修得に励んだ小さい頃の私に何故誰も教えてくれなかった。 

 

「シューストー少尉なら新しい紋章も刻めるかも(性的な意味で)」 

「どういうことですか?」 

 

 紋章術の発明者はどうやら目の前にいるこの真っ黒鎧だったらしい。 

 紋章の意味を理解しつつ、それにあった術力を込めつつ、術式を刻み込んだものが紋章術式。 

 道理で軍にしか流通していないわけだ。 

 

「僕の術力じゃ、武具くらいしか効果を及ぼせないんだ(性的な意味で)」 

 

 問題は術力の質にあるらしい。 

 各人で属性とも言えるものが決まっていて、准将の場合はそれが武具。 

 常に真っ黒鎧を身に着けているからじゃないかと思うのだが。 

 

「私だとまた別の対象に刻めるってことですか?」 

「僕以外の人間には刻めなかった。紋章の意味を知らずに刻んでも発動しなかったんだ(性的な意味で)」 

 

 だからひょっとすると、ということ。 

 私も魔法使いになれる! 

 思いがけない所から舞い込んだ幸運に、つい目の前の真っ黒鎧に抱きついてしまった。 

 

「私、ずっと夢だったんです! 准将の副官になって良かった……」 

「僕は今ほど鎧を着ていることを後悔したことはないよ(性的な意味で)」 

 

 所用を済ませて戻った先任に止められるまで、私の痴態は続いたのだった。

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