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第5話 またね

私は残りの数日を噛み締めるように過ごした。


ある日私は次の授業が外だったので校舎を歩いていた。


体育教官室の前を通る。


もしかしたら先生いるかな。


そんな期待をしながら、そっと窓を覗いてみた。


すると、そこに先生がいた。


嬉しくなって思わず窓をノックする。


「成澤先生。」


私が声をかけると、先生は気づいて笑顔で窓を開けてくれた。


私は下から先生を見上げる。


「次、外で授業なの?遅れないようにね。」


そう声をかけてくれた。


たったそれだけなのに嬉しかった。


嫌いな授業のはずなのに、先生と一言話せただけでなんだかワクワクした。


私は足取り軽く授業へ向かった。



そんな日々も終わりを迎える。


ついに教育実習最終日になった。


部活が終わった頃、先生はちょうど帰ろうとしていた。


私はその姿を目で追っていた。


だけど先生は私に気づいていない。


このまま体育館を出て行ってしまう。


そう思った瞬間、胸がぎゅっと締め付けられた。


私は思わず走り出した。


「先生!」


先生が振り返る。


「あれ、おっ、つっちー。部活終わったの?」


私は頷いた。


「はい。もう帰っちゃうんですか?」


すると先生は少し笑って言った。


「うん。今日で最後だからさ。他の先生たちが送別会してくれるみたいで」


最後。


その言葉が胸に刺さった。


もっと話せると思っていた。


もっと一緒にいられると思っていた。


だけど本当に今日で終わりなんだ。


私は勇気を振り絞って聞いた。


「先生、連絡先教えてもらえませんか?」


先生は少し困ったような顔をした。


そして少しだけ黙った後、口を開いた。


「そういうの、本当はダメって言われてるんだよね」


やっぱり無理なんだ。


そう思った。


だけど先生は続けた。


「……でも、教育実習の間、つっちーが一番たくさん話しかけてくれて嬉しかったし、楽しかった」


先生は紙を取り出した。


「これ、連絡先。他の人には渡してないから内緒だよ」


そう言って私に手渡してくれた。


私はもう我慢できなかった。


気づけば涙が溢れていた。


先生の前で泣いてしまった。


先生は少し困ったように笑いながら、それでも最後まで優しい顔をしてくれた。


「つっちー、ありがとね。またね」


そう言って先生は歩き出した。


私はその背中を見送ることしかできなかった。


私はどんな生徒だったんだろう。


先生は、この二週間の私をどんなふうに見ていたんだろう。


聞きたいことはたくさんあった。


だけど、もう聞くことはできなかった。


気づけば玄関は薄暗くなっていた。


ついさっきまで先生はここにいたのに。


もうその姿はどこにもない。


明日からは、この学校で先生を探すことも、先生と話すこともできない。


もう「また明日」って言えないんだ。


その事がたまらなく寂しくて、私は一人泣いた。


先生、戻ってきて。


心の中でそう呟いた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


この話を書いている間、当時の気持ちをたくさん思い出しました。


終わりがあると分かっている時間は、どうしてあんなに特別だったのでしょう。


たった二週間だったのに、とても長くて、とても短かった気がします。


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