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お前、捨てられたんだってな。  作者: 悠介


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2/13

涙を流す理由

「ふあぁ……。」

「おはよう、浩介。」

「んー……。悠介、おはよう。」

 次の日の朝、浩介が目を覚ますと、悠介は軽い朝食用にと買ってあったパンを焼いていた。

 コーヒーの香りもする、インスタントではなくドリップのコーヒーだ。

「朝飯、これだけしか無かったけど、大丈夫か?」

「うん、僕そんなに食べないから。」

「取り合えずさ、シャワー浴びておいで。昨日、風呂入らずに寝ちゃっただろ?」

「ありがとう、悠介。」

 浩介はそう言うと、ユニットバスに向かっていった。

 悠介は、朝食を用意しながら、コーヒーを淹れて一呼吸置く。

「ふー……。」

 まだ肌寒い季節、エアコンを入れずに寝ていたから、暖かいコーヒーが体に染みる。

 自分が仕事を始めるまでは三週間程度ある、その間に浩介のバイトが見つかれば良いが、と少し考え、取り合えずの生活費を計算していた。


「浩介、スマホの代金なんだけどさ、取り合えず俺が契約するから、後で行くか。」

「良いの?」

「無いと困るだろ?それに、お父さんに払ってもらってたんだから、多分契約切られてるだろ。二十歳未満だから親の同意必要な所も多いけど、まあ格安系なら大丈夫だろうしな。さて、飯食べようか。」

「うん、いただきます。」

 浩介が風呂から上がってきて、着替えを渡して飯の時間だ。

 俺の身長と浩介の身長は十五センチ位違う、それに体型が全然違うから、結構だぼっとした装いになっちゃってるけど、取り合えず仕方がない。

 浩介の洋服も、ブレザー以外は所在不明、多分捨てられてるだろうし、まだ昨日の今日で買い物にも行けてない。

「んで、今日の予定だけど。」

「僕は仕事探しだよね?」

「それもなんだけど、取り合えず洋服だな。ブレザー以外無いわけだし、ずっと俺の服着せてるのも不格好だし。」

「でも、僕バイトとかしてなかったから、お金ないよ……?」

「任せなさいな、ある程度手持ちに余裕はある。」

 浩介はバイトの経験がない、今までの出費は小遣いとお年玉でやりくりしてた。

 野球部だったって言うのもあるけど、結構忙しい身だったから、バイトする余裕もなかっただろう。

 それに対して、俺はバイト三昧の日々、扶養控除ぎりぎりまでバイトしてて、年末になるとシフトを減らされる位だった。

「でも……。」

「良いんだよ、浩介。気にするな、面倒見るって決めたのは俺なんだから、俺がやるさ。」

「……、ありがとう、悠介。」

 半年間仕事をしなくても良い位には貯蓄はある、だから浩介の洋服を買う程度、問題ない。

 逆に、もっと必要な物を言ってくれても良い位だ。

「悠介ってさ、なんでそんなに優しいの?」

「ん?なんだ藪から棒に。」

「普通、ここまでしてくれないと思うんだ。お互い好き合ってたって言っても、なんだか不思議な位、悠介ってさ。」

「好きだから、だろ。それだけ浩介の事が好きで、たまらなく愛おしいと思ってるからだよ。」

 浩介は照れる、俺がこんな事を言うのは珍しい、ちょっと俺も照れる。

 でも、家族に捨てられたばっかりな浩介には、これ位言っとかないといけないかなって、そう思うんだ。


「洋服とか買いに行くか。」

「うん、ありがとう、悠介。」

 朝飯を食べ終わって、準備をして出かける。

 スーツなんかも仕立てなきゃ、面接とかに苦労しそうだなって思ってるから、行く所が多い。

「あれ、車?」

「この前納車されたんだよ。まだ乗った事ないけど、まあ免許取ってからすぐだし、大丈夫だとは思う。」

 アパートの駐車場には、俺が買った新車のワンボックスカーがある。

 独り暮らしに合わせて買ったんだけど、まだ乗った事はない。

「凄いね、悠介。ずっとお金貯めてるのは知ってたけど、車まで買ってたんだ。」

「ちょっと安くして貰ったけどな。」

「そうなの?」

「昌のお父さんがディーラーなんだよ、それの伝手でな。」

 車に乗って、新車の匂いにちょっと辟易しながら、キーを回す。

 人を乗せて車に乗る、教習所の先生は別とすると、初めての経験だ。

 ちょっと緊張しながら、安全運転で、って考えながら、車を発進した。


「これも良いんじゃないか?」

「うん、ありがとう。」

 近所のショッピングモールに来て、取り合えずメンズの洋服屋に来た。

 浩介の取り合えずの洋服、って言っても数日分の服は必要だし、寒いからコートとかジャケットも必要だし、買い物が大きくなりそうだ。

「あれも必要で、こっちも……。」

「ねぇ悠介、そんなに買って大丈夫……?」

「ん?大丈夫だよ。貯蓄だけはたっぷりある、半年働かなくても苦労しない様に、って稼いできたんだ、こういう時に使わなきゃ意味がないだろ?」

「悠介って、凄いね。僕、絶対お金稼ぐ様になったら返すからね。」

「良いんだよ、別に。俺がしたくてしてるんだ、これ位なんともない、だから良いんだ。」

 籠に大量の洋服を入れながら、ちょっとした押し問答と言うか、払いたい浩介と払わせたくない俺の、ちょっとした言い合いだ。

「でも……。」

「なら、浩介が就職したら、良い店連れてってくれよ。一回で良い、ちょっとしたフレンチでも行ってさ。」

「……。わかった、本当にありがとう、悠介。」

 この話はこれでお終い、俺が頑固なのはよく知ってるだろうし、浩介が頑固なのも知ってる。

 だから、ある程度の妥協点を見つける、それが俺達なりの鉾の納め方だ。

「良し、これ位あれば春先までは大丈夫だろ。」

「うん、そうだね。」

「じゃ、後はスーツを仕立てに行きますか。」

「スーツ?でも、僕大学だからスーツ使わないよ?」

「バイトの面接、って言ってもスーツの方が

印象良いだろ?それに、大学の進学祝いって思ってくれればそれで良いよ。」

 買い物籠をレジまで持って行って、会計。

 しながら、浩介はスーツは高いんじゃないかって悩んでるんだと思う。

 でも、必要な物ではあるし、個人的にお祝いもまだしてなかったし、丁度良いかなって。


「お客様のサイズですと、丁度在庫がございますので、本日お受け取りになられますか?」

「はい、お願いします。」

「革靴も忘れない様にな。」

「うん。」

 スーツの店舗に来て、浩介が採寸をしてる間、ちょっと暇だ。

 待機用の椅子に座りながら、浩介が採寸を終えるまで待ち時間。

 って言いながら、昌とか他の友達から、浩介の様子を聞いてくるラインが飛んできてるから、それに軽く答えながら、皆が安心出来る様にって、返事をしてる。

「悠介、終わったよー。」

「お、わかった。」

 浩介が採寸を終えて、会計を済ませる。

 浩介は、数万円するスーツに驚いてたけど、スーツって軽いのからそれ位はするし、構いやしない。

「昼飯でもどっかで食べるか。帰りにスーパー寄って、食材買わないと殆どなんもないからな。」

「僕、作ろうか?料理ってした事ないけど……。」

「一緒にやろうか。家庭科の授業の時の包丁さばき見てたからな、不安だよ。」

「あはは……。」

 浩介は恥ずかしそうにしてる、でも、あの包丁の扱いの知らなさを知ってると、最初っから任せるって言う選択肢は持てない、っていうのが俺の感想だ。

「取り合えず飯食べよう、腹が減ったよ。」

「うん。」

 気が付けば昼時、まだ平日だからフードコートは空いてるかな。

 ラーメンでも食べるか、って思いながら、浩介の荷物を一旦車に置いて、俺達は飯を食べに行った。


「あ!悠介!坂崎!心配したんだぞ!」

「昌君?」

「ほんっとによ!悠介がよ、いきなり坂崎が死のうとしてる、なんて言うからよ!気が気じゃなかったぜ!?」

「ご、ごめんね……。」

 二人がアパートに戻ってくると、玄関先で昌が待っていて、浩介に怒ったかと思えば、ぽろぽろと涙を流し始める。

「そりゃつれぇのはわかるけどよ……!俺達だって、ダチだろ……!心配するに、決まってんだろ!」

「本当にごめんね、昌君。僕、悠介がいなかったら……。ううん、僕は大丈夫。もう、死のうとなんて思わないよ。」

「ホントか!?」

「うん。悠介が傍にいてくれるから、大丈夫。昌君達にも、心配かけて本当にごめんね。」

 昌は心底ホッとした様子を見せ、同時に少し妬いている様な顔を一瞬見せた。

 浩介は気づかなかったが、悠介はその理由を知っているから、何も言わなかった。

「昌、取り合えず上がってけよ。まだ汚い部屋だけど、まあ一人入る位なら出来るだろ。」

「おうよ!話聞くまで帰らねぇって思ってた!」

 涙をひっこめ、笑う昌。

 浩介が無事だった事が嬉しかったのだろう、安心した顔を見せ、部屋に入った。


「そんで、結局坂崎の両親ってどこ行ったんだ?」

「わかんないんだ、お父さんもお母さんも、おじいちゃんも……。」

「そっか、つれぇな。」

 部屋に入って、取り合えず三人座る場所を確保して、昌と浩介が話をしてる間にコーヒーを淹れる。

 昌は噂通りだった事に驚いてて、浩介はちょっと辛そうだ。

「でもよ、悠介がいてくれて良かったな!別れるって聞いた時よ、むっちゃびっくりしたんだぜ?」

「うん。悠介がいてくれなかったら、今頃僕は死んでたと思う。でも、悠介が見つけてくれたんだ。」

「なぁ悠介、なんでわかったんだ?坂崎の居場所、ヒントとかあったんか?」

「ん?あったな。思い出の場所、初めて自転車で行った場所だったんだよ、ちょっと遠い場所だったから、印象に残ってるかなって。」

 昌に話を振られて、答える。

 昌はそれに凄い驚いてる見たいで、浩介も、未だになんでそれだけの情報で見つかったのか、なんて顔してる。

「浩介の思いつきそうな事、って考えたらそこだった、ってだけだよ。一種の賭けでもあった、あれが間違ってたら、浩介は今頃いなかったと思う。我ながら、予想の立て方にあっぱれだよ。」

「ほーん……。勘って言うか、すげぇんだな、悠介。」

「そうか?」

「僕もびっくりしたよ?だって、何も書かずに出て行っちゃったから……。だから、探しに来てくれるとも思わなかったし、見つけられるとも思ってなかったよ。」

 コーヒーのマグカップを渡して、俺も座って一息。

 確かに、浩介は情報を一切言わずに出ていった、傍から見れば探す当ても無かったかもしれない。

 でも、なんとなくって言うか、勘って言うか確信って言うか、浩介ならあそこに行くだろう、ってふと思ったんだ。

「坂崎の事、ホントに好きじゃねぇと出来ねぇって、そんな事。だから言ったろ?別れるんじゃ無かったろって。」

「そうだな、別れたのは失敗だと思ってるよ。ただ、それは結果論でしかないだろ?あの時は、本気で別れた方が良いと思ったんだ。別々の道を行く、それの邪魔をしちゃいけないって。」

「ほんっとによ、お似合いのカップルなんだからよ、別れるなんで馬鹿な事しなきゃよかったんだぜ?きっと。」

「昌君、ずっと応援してくれてたもんね。ありがとう、僕達を見てくれてて。」

 昌は照れくさそうに笑って、浩介がいつも通りな事に安心してる。

 俺もそうだ、昨日の今日で不安定になってるかもしれない、と思ってたけど、取り合えず昌にそれを見せる位に不安定ではなさそうだ。

「んで、これからどすんだ?」

「悠介がさ、大学行って欲しいって言ってくれたんだ。奨学金借りて、行こうと思ってるよ。」

「野球続けんのか。そか、そりゃ嬉しいわ。」

 浩介の夢、それは野球選手になる事と、それが出来なかったら、野球選手のサポートをする事だ。

 大学でも野球を続けて、それと並行して色々と学びたい、って話を聞いた事がある。

「悠介はどすんだ?仕事、四月からだろ?」

「そうだな。予定通り、四月頭から就職だよ。」

 俺の仕事は、非営利法人での相談業務、つまるところカウンセラーの卵みたいな感じだ。

 高卒でも出来る作業しか出来ないけど、少し落ち着いたら大学に行って心理士の資格を取ろうと思ってるから、そこからが本番、って感じだ。

「坂崎は野球選手になるのが夢なんだろ?」

「うん。それが叶わなかったら、野球選手をサポートする仕事がしたいなって。」

「二人ともすげぇよなぁ、俺なんて夢とか考えらんねぇぜ?親に取り合えず大学行けって言われたから行くけどよ、見つかっかな?」

「きっと見つかるさ。昌はいいやつだから、いい仕事につけるよ。」

「褒められてもなんも出ねぇぞ?」

 昌は照れながら、頭を掻いてる。

 あれがやってみたい、これがやってみたい、と言う考えはあれはすれど、夢と言えるまではわからないんだろう。

 って言っても、俺達だって最初っから夢があったわけじゃない、生きている中で、一つずつ見つけていったんだ。

「昌ならきっと大丈夫だよ、俺達も応援してる。」

「うん、そうだよ。昌君は良い人だし、きっと沢山いいお仕事出来る様になるよ!」

「そっかなぁ?」

 だいぶ普段の調子に戻ってきた、って印象と言うか、だいぶ二人とも平常心で会話をしてると思う。

 特に浩介は、まだ不安定だろうけど、それを昌に見せる様な事はしなかった。


「そんじゃよ、また遊びくっから!」

「いつでも来い、それまでに部屋は片づけておかないとな。」

「またね、昌君。」

 夕方になって、そろそろ夕飯の時間になるから、って言って昌は帰っていった。

「ふー……。」

「お疲れ様、浩介。」

「え?」

「だいぶ気を張ってただろ?顔に出なくても、なんとなくわかるからな。」

 浩介がため息をつく、俺は浩介の頭を撫でながら、よく頑張ったなって考える。

 ホントは辛いだろう、ずっと苦しい気持ちはあるだろうに、心配かけたくないからって、それを押し殺して。

 昔からそうだ、浩介は自分の気持ちより相手の気持ちを優先する所がある、気づかれずにそれをこなす頭もある。

 俺は付き合いも長いから、それ位は察せるけど、付き合いの短い奴からしたら、わかんないだろうなって。

「悠介はなんでもお見通しなんだね、本当に嬉しいや。」

「怖がるところじゃないか?そこは。」

「ううん、嬉しい。僕の事、それだけ知っててくれてるんだなって思うと、嬉しいんだ。」

「そっか。じゃ、ご飯作ろうか。今日はまだ寒いし、鍋にでもしよう。」

 部屋に戻って、そろそろ夕飯を作らないと。

 あったかいキムチ鍋にでもするか、って思って、冷蔵庫に今日入れたばっかりの食材を出して、料理を始める。


「美味しかった、ありがとう、悠介。」

「あったまるから丁度良かったな。」

「うん。」

 夕食を終えて、浩介は皿洗いをしながら、これからの事を考えていた。

 親に捨てられた、その事実をまだ受け入れ切れていない、しかしそこでまごまごしていたとしても、何も解決はしない。

 だが、辛い事に変わりはない、心が疲弊してしまっている様だ。

「浩介、泣きながら笑うもんじゃないぞ?」

「え……?僕、泣いてる?」

「泣いてる。我慢しなくていいんだ、浩介は頑張ってるんだから。我慢しなくていい、泣いていいんだ。」

 悠介の言葉で、浩介は涙が止まらなくなってしまう。

 ひっぐひっぐと嗚咽を溢し、悠介に抱き着いて涙を流す。

 悠介は、そんな浩介の頭を撫でながら、諭す様に声を掛ける。

「浩介は辛いんだ、それは変えられない事実だ。辛い時は泣いていい、浩介はずっと我慢しがちだったけど、俺の前で位泣いていいんだ。誰に見せたくなかったとしても、誰がそれを否定したとしても、俺は浩介の味方だ。だから、泣いていい。泣いて良いんだよ、浩介。」

「ごめん……、僕……。」

「浩介は何も悪くないじゃないか。どんな理由があったにせよ、浩介が原因じゃないんだ。だから、謝るな。俺は、こうして生きてくれているだけで嬉しい、こうして抱きしめて上げられる事が誇らしい。だから、泣いていいんだ。」

 浩介の涙は止まらない、それは悲しいからであり、嬉しいからであり。

 家族に捨てられた、それはどうしようもない程悲しいだろう。

 そして、こうして傍にいてくれる人がいる、それはどこまでも嬉しいだろう。

 涙が止まらない、泣いてはいけないと思っていたのに、止まってはくれない。

 しかし、それを許してくれる人がいる、悠介はそれでも良いと言ってくれる、それがたまらなく嬉しくて。


「ねぇ、悠介……。聞いても良い?」

「なんだ?」

「あのね……。悠介は、僕の事好きだってい言ってくれたでしょ?僕も、悠介の事大好きだよ。でも、ここまでするって、なんでなんだろうなって……。」

 昨日もそんな話をした気がする、って腕枕しながら思うんだけど、浩介の中では納得出来てない、わからない部分なんだろうな。

 何度だって話すし、何度聞かれても答えは一緒なんだけど、それでも話すのは吝かじゃない。

「浩介の事が大好きだからだよ。この世の誰よりも、いつまで経っても。浩介の事が大好きで、たまらなく愛おしくて、愛しているからだよ。だから、なんだってやってやりたい、浩介が幸せになれるのなら、俺が不幸になったって構わない。一緒に幸せになりたいけどな、でも、最悪の場合そうだって構わないと思ってる。」

「でも……。」

「だから、頑張らないとって思えるんだ。覚えてないかもしれないけどさ、俺も死のうとしてた時期があったんだ。話を出来る友達はいない、家族とも仲が悪い、学校では馴染めない、先生にはいつも怒られて、それで居場所が無くて。そんな時に、浩介は傍にいてくれた。何も言えなかった俺の傍にいてくれて、黙って付き合ってくれた。それが、たまらなく嬉しかったんだよ。だから、今度は俺がお返しをする番だ。」

「悠介……。」

 浩介は覚えてるんだろうか、あの頃の事を。

 俺は学校では変わり者だって言われて馴染めなくて、素行不良で先生には嫌われてて、それでいて家族とも仲が悪くて。

 誰とも馴染めない、誰とも仲良く出来ない、なんて思ってた俺の傍にいてくれて、黙って俺に付き合ってくれて。

 それに気づいた時に、もっと早く心を開けば良かった、って後悔して、それからすぐに俺から告白して。

 浩介がうんって言ってくれたのがたまらなく嬉しくて、それから素行を改めて、友達っていうのを手探りで探して。

 最初は俺の事を怖がってる人が多くて、中々上手くいかなかったけど、浩介が仲介してくれて、それでクラスにも馴染んで、先生達とも和解して。

 家族とは最終的に仲が悪かったけど、それでも、俺の学校生活は大きく変わった。

「浩介がさ、俺にも魅力がいっぱいあるんだ!って周りに言ってくれたから、俺は友達が出来たんだ。あの頃浩介と付き合ってなかったら、それこそ独りっきりで死んでたと思う。だから、今はそのお返しをする番なんだ。俺が独りだった時に浩介は支えてくれた、だから今度は、俺が支えるんだって。」

「そう、なんだ……。僕、悠介の事大好きだったから、皆にも魅力を知ってほしかっただけなんだよね……。」

「それに救われたんだよ、俺は。だから、今度は俺が浩介を助けるんだ。」

 浩介は嬉しそうに笑うと、そのままスースー寝息を立てて寝始めた。

 だいぶ眠かったんだろうな、安心して寝る事なんてなかったんだろうな、と思うと、胸が苦しい。

 でも、これから先は違う、これから先は俺が支える、だからきっと、大丈夫だ。


「お父さん……、お母さん……。」

「ん……?」

「なんで……、なんで……?」

「……。」

 夜中の三時、何かが聞こえて目が覚める。

 浩介は腕枕の中で寝てて、涙を流しながら譫言の様に言葉を繰り返してる。

「浩介……。」

 辛いだろうな、それもそうだ。

 仲睦まじい家族だったんだ、俺みたいに仲が悪くて、別に離れた所でって感じの家族でもないんだ。

 だから、夢に出ちゃう位辛いんだろう。

「浩介、俺はここにいるよ。」

 頭を撫でながら、寝ている浩介に声をかける。

 聞こえてはいないだろう、魘されながら、けど、少し表情が楽になっている気がする。

「浩介……。」

 夢に魘されてる浩介を見て、守らなきゃなって思う。

 ずっと頑張ってきた、俺に生きる意味を与えてくれた、そんな浩介なんだから、今度は俺の番だって。

「んぅ……。」

「大丈夫だよ、浩介。」

 頭を撫でてるうちに、浩介の涙がおさまっていく。

 きっと、少し落ち着いたんだろうな。

「眠い……。」

 まだ夜中の三時、俺もまだまだ眠い。

 明日からまた頑張ろう、きっと大丈夫だ。

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