表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前、捨てられたんだってな。  作者: 悠介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/15

二人の誕生日

「誕生日おめでとう、浩介。」

「そっか、今日僕誕生日だっけ。ありがとう、悠介。」

 季節はあっという間に過ぎて行って、冬になった。

 今の家もだいぶ慣れてきた、広くなったから、昌とか高校時代の友達も呼んだりしてて、時々散らかるけど、綺麗に使ってる。

 そんな中、今日は十二月十二日、浩介の二十歳の誕生日だ。

「今日は一日休みだろ?俺も休みとってあるからさ、デートしようか。」

「ありがとう、悠介。」

 今日は月曜日、本来なら俺は出社なんだけど、有給を貰って休みだ。

 今日は一日浩介と一緒にいる日、って言うのは決めてて、何から始めようか、って感じだ。

「まずはプレゼント買いに行くか。浩介、そろそろグローブ変えなきゃだろ?」

「え?うん、そろそろ傷んできたから、新しくしなきゃなーとは思ってたけど……。良いの?」

「良いんだよ。買いに行こう、スポーツ専門店でいいか?」

 パーカーを着て、上着を着て、取り合えずプレゼントのグローブを買いに出かける。

 浩介は、自分でお金を貯めてグローブを買うつもりだったらしくて、少し驚きながら、俺についてきてくれる。


「こういうのって、どういうのが良いんだ?」

「うーん……。人それぞれだからなぁ。」

 スポーツ用品店に来て、グローブを眺めている悠介と浩介。

 悠介はグローブの差がわからない、と唸っていて、浩介は欲しかったモデルを探していた。

「あ、あった。」

「これ欲しいのか?」

「うん。」

 有名野球選手が使っている!と言う触れ込みのモデルを探した浩介は、本当に買ってもらっていいのか?と言う顔をしている。

 悠介はそれを持つと、値段を見てうんと言って、買う気満々の様だ。

「他に必要な物ないか?練習着とか、ボロボロになってきてないか?」

「うーん……。今は大丈夫、最近買い替えたから。」

「そっか。じゃあ、これ買っていこう。」

 それ以外に買い物はないか、と悠介が確認をして、レジに向かう。

 浩介は、その後ろをついて行きながら、明日は何を買ってあげようか、と考えていた。


「ケーキ、何が良い?」

「えーっとね、チョコケーキが良いかな。」

「じゃあ、このホールの下さい。」

 グローブを買って、ケーキ屋に足を運んだ俺達、浩介はチョコケーキが好きだったな、って一年に一回の思い出を振り返りながら、ホールケーキを買う。

 まだまだ二十歳、に俺は明日なるんだけど、胃袋は若いつもりだ、ホールケーキ位二人で食べきれる。

 夕飯はデパ地下ででも何か良いものを買っていこうか、なんて思いながら、店を出てデパートの中を散策する。

「ねぇ悠介、悠介は何か欲しいもの無いの?」

「ん?俺か?うーん……。思い浮かばないな……。物欲は無い方だとは自覚してるけど、今のままでも十分だからな。」

「でもさ、僕も貰ってばっかりじゃ嫌なんだ。何か、お返しさせてよ。」

 お返し、って言われても、本当に何も思いつかないから困ったもんだ。

 デパートの中をウィンドウショッピングしながら、何か思いつかないかな、って必死担って考える。

「……。お揃いのパーカーが良いな。ペアルック、今着てるやつは、だいぶ古くなって来ただろ?だから、新しくペアルックで欲しいな。」

「わかった、じゃあ、お店行こうよ。」

「今からか?」

「だって、明日は悠介お仕事入れちゃってるでしょ?なら、今日のうちに買っておきたいなって。」

 浩介に手を繋がれて、大きい服が置いてある店まで行く。

 普通の服の店だと、俺のサイズがないから、そういう大きいサイズ専門店に行って、一緒に買うのが俺達の普段だ。


「これ良いんじゃない?」

「こっちのデザインも良いな……。」

「悠介、パーカーはこだわるもんね。」

「あんまり買い替えないからな、長く着る物って悩むんだよ。」

 大きいサイズ専門店に来て、浩介とお揃いのパーカーを選ぶ。

 って言っても、結構店自体が広いし、パーカーも種類が多くて、デザインで悩む。

「これかなぁ……。」

「灰色って良いよね、悠介似合うし、良いんじゃない?」

「そうだな、じゃあこれにしよう。浩介はそれで良いのか?」

「うん。悠介とお揃い、って言うだけで十分だよ。」

 結局、灰色にコーヒーカップのプリントがされたパーカーを選んで、浩介のサイズを探して、俺のサイズを探して、それを浩介がレジに持っていく。

「結構いい値段するな……。」

「良いんだよ。僕だって、お金貯めてるんだよ?」

「そっか。じゃあ、ありがとう。」

 二着で一万五千円くらいしてて、結構高いの選んじゃったな、と思ったんだけど、浩介がそう言うのなら、たまには甘えよう。

 パーカーを買った後、デパ地下に行ってしこたま食べ物買って、家に帰る。


「ふー、お腹いっぱい。」

「美味しかったな。」

「悠介のご飯も美味しいよ?」

「そうか?でも、浩介も少しずつ料理覚えて来たし、そろそろ味で抜かれるかもな。」

 浩介の誕生日を祝って、今はお揃いのパーカーを着て散歩をしてる。

 夜九時過ぎだから、ちょっとパーカー一枚じゃ寒いけど、まだ堪えられるかな。

「ねぇ悠介、僕からのプレゼント、受け取ってくれる?」

「ん?プレゼントって、パーカーだけじゃなくてか?」

「うん。これ、買ってみたんだ。これからの事を考えると、ちょっと安すぎるかもしれないけど、それはまた改めて買えれば良いかなって。」

 そう言って、浩介はポケットから何かを取り出す。

 それは手のひらより小さい小さな箱で、中に何かが入ってるみたいだ。

「開けても良いか?」

「うん。」

 何かな、って思って開ける。

「指輪?」

「うん、ペアリングって言うんだって。晴也先輩が教えてくれたんだ。悠介の指のサイズ図るの、ちょっと大変だったんだよ?」

 飾り気のない、シルバーの指輪。

 内側に俺達の名前が刻印してあって、シンプルだけど付けやすい、と思ったのかな。

「ありがとう、浩介。俺はこういうのに気が回らないから。ホントに、ありがとう。今度は俺が買わないとな。」

「つけてみてよ、ピッタリだと思うから。」

 浩介は、自分の分って言って、左手の薬指に指輪をはめる。

 俺もそれに倣って、左手の薬指に指輪をはめてみる、それはピッタリ合うサイズで、いつの間に浩介は俺の指のサイズを図ってたんだ、って感心する。

「ありがとう、大事にするよ。」

「喜んでもらえて嬉しいよ。悠介、これからもよろしくね。」

「おう。」

 ちょっと照れくさいけど、嬉しい。

 お揃いの指輪、いつかちゃんとした結婚指輪を買いたいなと思うけど、今はこれで良い。

 今はこれが良い、浩介が選んでくれた、浩介が俺の為に買ってくれた、この指輪が良い。


「坂入君、おはよう。」

「おはようございます、高橋さん。」

「今日誕生日なんだって?二十歳になったんだねぇ、おめでとう。」

「あはは、ありがとうございます。」

 十二月十三日、今日は普通に出勤で、いつもの如く朝一番に来てた高橋さんに挨拶をする。

「ん?指輪してるの?」

「はい、浩介が、昨日くれたんです。」

「あらあらまあまあ、良いねぇ、甘酸っぱいねぇ。良いじゃない!ずっと一緒にいようって、そう約束してるんだろう?」

 指輪に気づかれて、ちょっと恥ずかしいと思ったけど、でも、浩介がくれた物なんだから、恥ずかしがる事もないのか。

 堂々としてればいい、と思い直して、高橋さんと話をして始業時間を待つ。


「じゃあ、お疲れさまでした。」

「今日はゆっくり誕生日お祝いするんだよー?お酒飲める様になったからって、羽目を外しすぎない様にねー?」

「わかってますよ、ありがとうございます。」

 あっという間に退勤時間になって、俺は帰り道で浩介に頼まれてた買い物を済ませて、家に帰る。


「誕生日おめでとー!」

「おめでとー!」

「おめでとう。」

「あれ、昌に晴也先輩、悠治先輩まで。」

 家について、疲れたーなんて思って休もうと思ったら、クラッカーの音に驚かされる。

 浩介に始まって、昌に悠治先輩、晴也先輩がクラッカーを鳴らして俺をお祝いしてくれた、って言う事に気づくまで、数秒かかった。

「あ、そっか。ありがとうございます。」

「悠介、やっと一緒に酒飲めるな!」

「悠介が最後だったもんなぁ。晴也先輩に呼ばれた時はびっくりしたけどよ、今でも付き合いあったんだな!俺の事呼んでくれなかったら、拗ねてたぞー?」

「昌……。ありがとう、お祝いしてくれて。」

「さ、悠介、主役なんだから、真ん中に座らないと。」

 浩介に誘われて、リビングのソファの真ん中に座る。

 ケーキは浩介が注文してくれたのを俺が持ってきた、それは渡して冷蔵庫の中だ。

「じゃあ、改めて悠介二十歳の誕生日おめでとう。」

「酒飲むか?シャンパン買ってきたんだぞぉ?」

「ありがとう、皆……。」

 ちょっと泣きそうになる、こんな風に誕生日を祝われた事が今まで無かったから、あったとしても浩介と二人だったから、こんなにたくさんの人に囲まれて誕生日を祝う、っていう経験がなかった。

「悠介君、僕達からのお祝い。受け取ってくれる?」

「ありがとうございます、悠治先輩、晴也先輩。」

 悠治先輩から、何か箱を渡される。

 開けてみてよ、って唆されて、開けてみる。

「万年筆、ですか?」

「浩介にも買ったんだぜ?二十歳の祝いって言ってよ、何がいっかなー、って話してたら、悠治が万年筆が良いんじゃねぇか、って言われてよ。刻印もしてあるんだぜ?」

「ホントだ……。」

 万年筆の持ち手の部分には、俺の名前がローマ字で書いてあって、浩介も同じ様なのを貰ったよー、って見せてくる。

「俺からも誕プレあるぞ?ほれ、これ。」

「ありがとう、昌。」

 昌からの誕生日プレゼントは、ネックレスだった。

 ちょっと洒落たネックレスで、浩介とペアになってるらしい。

「ホントに、こんな風にお祝いしてもらうのなんて、初めてだよ……。ありがとう。」

「飯は浩介お手製だぜ?」

「浩介が?こんなに作れたっけ?」

「練習、してたんだよ?悠介に振舞える様にって、昌君と晴也先輩に特訓してもらってたんだ。」

 今日の夕飯はハンバーグとカレーで、浩介がこれを作ったって言うのが驚きだ。

 まだチャーハンとか、そういう簡単な物しか教えてこなかったから、いつの間にこんなに作れる様になってたのか、って。

「さ、飲もうぜ?初の酒、感想聞かせてくれよ。」

「はい。じゃあ、乾杯。」

「カンパーイ。」

 シャンパンを一口飲んで、ウエーって言う顔になってると思う。

 苦い、って言うか、渋いって言うか、ビールなんかは苦みが良いって話は聞いた事があったから、苦いんだろうなとは思ってたけど、これ多分アルコールが苦いんだな。

「苦いですね……。あんまり味がわからないです。」

「そうか?美味ぇんだけどなぁ。」

「晴也君、無理やり飲ませるのは駄目、って言っておいたでしょ?」

「わかってるよ、悠治。なら悠介、こっちならどうだ?カルーアミルク、甘いから飲めると思うぞ?」

 シャンパンの他にも用意してくれてたらしくて、コーヒーみたいな見た目のお酒を注がれて、それを飲んでみる。

 こっちは甘くて美味しい、アルコールの苦さも感じない、でも飲みすぎたら酔っちゃいそうだな、っていう予感はある。

「美味しいです、こっちなら飲めますね。」

「悠介はアルコールが苦手なんだね。僕はシャンパンが美味しいよ。」

「浩介にそう言われるとちょっとショックだな。俺の方が子供舌って事か。」

 浩介も初めての飲酒だろうけど、ほんのり顔を赤くさせながら、シャンパンを美味しい美味しいって飲んでる。

 昌もそんな感じで、晴也先輩はいつもの調子で飲み始めない様にって、悠治先輩が釘をさしてて、でも悠治先輩もちょっと顔が赤くなってて。

 楽しい、こんなに楽しい誕生日は初めてだ。


「じゃ、俺ら帰るなー。」

「おう、またな。」

 三人が帰って、浩介と二人っきりになる。

「悠介ー。」

「どうした?」

「酔っぱらっちゃったかなぁ。ゆうすけー。」

 二人なったとたん、浩介が甘えてくる。

 酔っぱらったっていうのはホントだろう、顔が真っ赤になってて、少しふにゃっとしてる。

「ぎゅーしてー?」

「はいはい。」

 ハグをして、頭を撫でる。

 俺より幾分か小さい浩介の頭は、撫でるのに丁度良い高さだ。

「えへへー。」

「寝ようか。」

「うんー。」

 寝室に行って、ベッドに入って、抱きしめ合って。

 浩介は甘えたそうにしてたけど、眠気が強かったのか、すぐに寝ちゃって。

「まったく……。」

 可愛い子だとは思ってたけど、酔っぱらうとまた違う可愛さがあるな、とは思った。

 まだまだ守ってやらなきゃな、とも。

 そんな事を考えながら、俺も眠りに落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ