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お前、捨てられたんだってな。  作者: 悠介


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12/14

日常に戻って

「ちゃんと送れて良かったな。宮本のおじいちゃん、明日から店開けるんだって?」

「うん、そう言ってた。僕も頑張らないと、おばあちゃんに安心して貰える様にもね。」

 葬儀が終わって、一日経った。

 浩介は今日からバイト再開だって言ってて、俺はまだ有給期間中だから、ちょっとゆっくりしようかな、勉強でも始めてみようかな、と思ってた。

 宮本のおじいちゃんは、暫く店を閉じてるかなとも思ったんだけど、それじゃ生活出来ないし、それに、おばあちゃんの為にも頑張ろう、って浩介と話したんだろうな。

「行ってらっしゃい、浩介。」

「うん、行ってきます、悠介。」

 玄関まで送って、玄関でキスをして、浩介はバイトに向かった。

「ふー……。」

 葬儀って、思ったより気を遣う、親族に近い立ち回りをしてたから、余計に気を遣った。

 浩介は笑って送りたいって言って、涙を必死に堪えてたけど、やっぱり悲しかったらしくて、葬儀中は泣いてた。

 俺も、少しだけ泣きそうになった、昔とはいえ世話になった人だ、懐かしさもあって、年取るって言うのは残酷な事なんだなって、そう思った。

「さて、勉強勉強。」

 通信制の大学に入学して、そろそろ自宅学習を始めないといけない、浩介がいる時はあんまり勉強ばっかりして構えないのは嫌だし、こういう時に勉強をしておかないとだ。

「えーっと。」

 最初は基礎から、って話だけど、やっぱり今まで心理学に関しては無知識だったし、覚える事が沢山ある。

 基礎中の基礎から始まって、徐々に専門的になっていく、って話だけど、基礎でも躓く人は躓きそうだ。

 俺は幸い、そういった仕事を一年間してるアドバンテージがある、ある程度の問題なら回答もわかる、だからちょっとだけ楽だけど、勉強って言うのが一年ぶりだから、何から始めたもんか、って感じだ。

「……。」

 集中すると周りが見えなくなる、それは変わらない。

 一回勉強にスイッチさえ入ってしまえば、後は流れで出来る。


「浩ちゃん、今日からまたよろしくねぇ。」

「うん。おじいちゃん、よろしくね。」

 店に到着した浩介は、宮本の妻の墓前に手を合わせ、そしていつもの格好になり、準備をする。

「いらっしゃいませー!」

「浩ちゃん、元気?おばあちゃんのご葬儀終わってから、変わった事ない?」

「晶子おばさん。昨日の今日だからね、まだ整理がついてない部分はあるけど……。でも、大丈夫です。おじいちゃんの傍にいてあげたいから、僕は大丈夫です。」

「そう……?でも、無理はしちゃ駄目よ?貴方も辛いんでしょうし、共倒れになれって言う訳じゃないけれど、無理をしたら辛くなってしまうんだから。」

「はい、ありがとうございます。」

 店は少しずつ人が来店していて、いつもの喧騒を見せていた。

 常連達は葬儀にも来てくれていた、皆気を使っているのだろう、しかし、来て食べる事が一番の弔いになるから、と言う宮本の言葉に従って、来てくれているのだろう。

「おじいちゃん!生姜焼き定食一丁!」

「はいよー!」

 いつもの空気、いつものやり取り。

 少しお互いぎこちないが、それでもそれが正しいのだと信じて、二人は店を回す。

 客達もそれに気づいている、気づいた上で、いつも通りに振舞おうとしていた。


「ただいまー。」

「ん、お帰り浩介。」

「勉強してたの?」

「おう、ちょっとずつしないと、通う意味が無いからな。」

 夜十一時、浩介が帰ってくるまで、ずっとスタンドライトだけ点けて勉強してた。

 そうかもうそんな時間か、相変わらず集中すると時間がいつの間にか経っていく。

「バイト、どうだった?」

「いつも通りだよ、悠介。何も変わらないよ。」

「そっか。」

 変わらない、と言いつつも、変わってはいるんだろう。

 浩介は寂しそうに笑ってる、おばあちゃんの死から立ち直るには、もう少し時間がかかるだろうな。

 俺もそうだ、思った以上に蝕まれてると言うか、心の底に澱が溜まってる感じがする、それだけショックだったんだろう。

 でも、浩介はもっとショックを受けてるはずだ、俺よりも近いところにいたんだから。

「お風呂入って来るねー。」

「はいよー。」

 そう言えば、浩介は大学二年になって、後輩が入ってくるのか。

 野球部にも後輩が入ってくるだろうな、でも、浩介なら大丈夫だろうな。

 社交性の塊みたいな子なんだ、どんな相手だろうと上手くやれる、それは俺がよく知ってる。

「そうだ、飯食って無いか。」

 勉強に集中しすぎて、飯を食べるのをすっかり忘れてた。

 何か作るにもこんな時間だし、コンビニ弁当にでもするかな。

「ふー、明日から後輩来るし、頑張らなきゃ。」

「浩介、俺コンビニ行くけど、行くか?」

「こんな時間に?」

「飯食べるの忘れてたんだよ。今からご飯炊いていうのもめんどくさいし、コンビニで弁当でも買おうと思ってな。」

「わかった、着替えるね。」

 浩介が風呂から上がって、コンビニに行くかどうかを誘うと、浩介は一緒に行くみたいだ。

 今は春先、ちょっと夜は寒いから、パーカーを羽織って行かないとだな。


「そうだ、引っ越しどうしようか。」

「引っ越し?」

「今の家、手狭だろ?そろそろ金も貯まってきたし、もうちょっと広い家に引っ越そうかなって。勿論、バイトに行きやすい様にこのあたりで、だけどな。」

「でも、家賃高くなっちゃうんじゃない?今でも僕は払ってないけど……。悠介の負担が増えるって、ちょっとなって思うよ?」

「大丈夫だよ。それなりには貰ってる、もう少し広くなる位なら問題ないよ。」

 今のアパートは手狭、って言うか、当たり前のごとく一部屋しかないんだから、二人分の物を収納するだけの広さはないし、ちょっと狭い。

 だから、今は物件を探してて、大学を卒業した当たりで家を買おうかな、なんて考えてた。

「一人一部屋、とまでは行かないけどさ、1LDK位の家が見つかったら、って思ってるんだ。勿論、浩介は今まで通りで大丈夫だぞ?法人から家賃の補助も出るし、問題ない。」

「そうなの?うーん、なら、賛成、かな。」

 浩介は、俺の負担が増えるんじゃいかって心配してる。

 でも、今の部屋のままだと、そのうち物が入らなくなりそうな勢いだし、結局引っ越しをしなきゃならないと思う。

 だから、身軽な今のうちに、と思ってた。

「良い物件あるの?」

「実はな、ここから徒歩五分の所に、丁度良い感じの家があってさ。浩介に相談しようと思った矢先に、おばあちゃんの事があったから。タイミングを見てたんだ。」

「そっか……。わかった、ありがとうね、悠介。」

「良いんだよ。」

 コンビニまで話しながら歩いて、コンビニで俺は弁当を買って、浩介は飲み物を買って、帰って。

 今日は寝て、明日からまた忙しくなるな、なんて思いながら、一緒にベッドに入った。

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