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カップ麺横丁

作者: じゅラン椿
掲載日:2025/11/03

カップ麺、落としました。


・・・・・いや、正確には、会社の帰りに買ったカップ麺を、疲れすぎて落としてしまったのさ。

袋が破け、スープの粉が少しこぼけた。

 あぁ、もう今日は、そーゆう日。


 コンビニの明かりが滲んで見える。ため息をついた。その時、うす暗い小さな光?灯りも見えた。こんなところに、明かりなんていつもあったけ?瞬きを何度もしてみた。確かに見える。


近くに寄ってみた、提灯には金色の文字で、"カップ麺横丁"と書いてある。



そんな横丁聞いたことないよ・・・

気が付いたら、足が勝手に動いていた。


のれんをくぐると、湯気の街が広がっていた。

十軒ほどの屋台が並び、それぞれ「しょうゆ」「味噌」「謎味研究所」なんて、看板があった。

 どの屋台からも、こころをくすぐる匂いがする。


 「ちょいと、お客さん、落し物の味、食べてみるかい?」

店主は、微笑みながら、言った。

年齢不詳で、どこか懐かしい雰囲気。私は思わずうなずいた。


 「落とし物の味って・・・?」

 「心が落ち着いた時に出る味ですよ、ちゃんと、拾っておかないとね」


差し出されたのは湯気の立つカップ麺、香りは懐かしいのに、味は初めて。

優しい塩味のスープにほろりと涙がこぼれ落ちた。


 「なんで、泣いているのだろう」

 「スープがあったかいからですよ」おじさんは笑って応えた。


湯気の向こうに子供の頃の夕飯の風景が、見えた気がした。誰かが、自分のために作ってくれた一杯のうどん。

その湯気の中に"大丈夫"という言葉が隠れている気がした。


 「また来てくださいね、待ってますぜぃ」



のれんをくぐり、ふと振り返ると、さっきの通りはただの駐車場に戻っていた。


夢?


翌朝、机の上には昨日落としたはずのカップ麺が、ちゃんと置かれている。

フタの裏に湯気のような文字で、

 『湯気の先に、もう一歩』

私はクスッと、笑った。それだけで心が軽くなっていた。

心が冷えてくる夜に、湯気のように寄り添ってくれる場所があったら・・・

 そんな気持ちで「カップ麺横丁」を描きました。

 最後まで拝読、ありがとうございました。


      じゅラン椿

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