カップ麺横丁
カップ麺、落としました。
・・・・・いや、正確には、会社の帰りに買ったカップ麺を、疲れすぎて落としてしまったのさ。
袋が破け、スープの粉が少しこぼけた。
あぁ、もう今日は、そーゆう日。
コンビニの明かりが滲んで見える。ため息をついた。その時、うす暗い小さな光?灯りも見えた。こんなところに、明かりなんていつもあったけ?瞬きを何度もしてみた。確かに見える。
近くに寄ってみた、提灯には金色の文字で、"カップ麺横丁"と書いてある。
そんな横丁聞いたことないよ・・・
気が付いたら、足が勝手に動いていた。
のれんをくぐると、湯気の街が広がっていた。
十軒ほどの屋台が並び、それぞれ「しょうゆ」「味噌」「謎味研究所」なんて、看板があった。
どの屋台からも、こころをくすぐる匂いがする。
「ちょいと、お客さん、落し物の味、食べてみるかい?」
店主は、微笑みながら、言った。
年齢不詳で、どこか懐かしい雰囲気。私は思わずうなずいた。
「落とし物の味って・・・?」
「心が落ち着いた時に出る味ですよ、ちゃんと、拾っておかないとね」
差し出されたのは湯気の立つカップ麺、香りは懐かしいのに、味は初めて。
優しい塩味のスープにほろりと涙がこぼれ落ちた。
「なんで、泣いているのだろう」
「スープがあったかいからですよ」おじさんは笑って応えた。
湯気の向こうに子供の頃の夕飯の風景が、見えた気がした。誰かが、自分のために作ってくれた一杯のうどん。
その湯気の中に"大丈夫"という言葉が隠れている気がした。
「また来てくださいね、待ってますぜぃ」
のれんをくぐり、ふと振り返ると、さっきの通りはただの駐車場に戻っていた。
夢?
翌朝、机の上には昨日落としたはずのカップ麺が、ちゃんと置かれている。
フタの裏に湯気のような文字で、
『湯気の先に、もう一歩』
私はクスッと、笑った。それだけで心が軽くなっていた。
心が冷えてくる夜に、湯気のように寄り添ってくれる場所があったら・・・
そんな気持ちで「カップ麺横丁」を描きました。
最後まで拝読、ありがとうございました。
じゅラン椿




