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第4章:操縦という幻想

 ―レバーを握る手と、ロボットの指先のズレ―


 特撮「ドラマ」としての記憶


 ここまでの章で取り上げてきたように、1970年代前後の巨大ロボットたちは、特撮ドラマとして我々の前に登場してきた。「特撮ヒーロー」ではない、「特撮ドラマ」である。そう、あの頃は間違いなく“ドラマ”だったように思う。


 人間同士の葛藤や友情、裏切りや決断…そういったドラマ的要素もあったにはあった。しかし今回の論考ではあくまで「ロボットという存在の表現進化」に焦点を当てているため、その人間ドラマの話は泣く泣く割愛させていただく。残念ではあるが、ここではロボットの話をしよう。


 とはいえ、一つだけどうしても語っておきたいエピソードがある。



 マッハバロンの挿入歌に見た“兵器否定”


 特撮作品の中で、私に強烈な印象を残したのが、マッハバロンの挿入歌である。具体的にはこんな一節だ。


 ♪ マッハバロン、眠れ眠れ

 お前の使命を終わらせてあげたい

 たたかう機械でなくしてあげたい ♪


 これは、単なる子ども向けヒーローソングではない。ここには、巨大ロボット=兵器として扱うことへの違和感、そしてその存在を「兵器ではなくしたい」という願いが込められている。


 戦車でもなく、戦闘機でもなく、ロボットは心なき存在でありながら、心を宿してしまったかのような存在。そしてそのロボットに対して「眠れ」と語りかけるその視線は、人間が機械に何を投影しているかという、深いテーマをほのめかしていた。


 子どもの頃の私は、哲学者でも評論家でもなかったけれど、「なんだか深いこと言ってるなあ…」という、得体の知れない感動を覚えたことだけは、今でもはっきり覚えている。



 操縦席の“手作り感”


 さて、話をロボット本体に戻そう。特撮ドラマに登場するロボットの操縦席には、必ずと言っていいほど、レバーやハンドル、ボタンやメーターが所狭しと並んでいた。それらは、言ってしまえば、安っぽい。段ボールに銀紙を貼ったようなパネル、ガチャガチャ音が鳴りそうなプラスチック製のスイッチ。だが、それが良かった。


 手作り感満載の操縦席に、メカメカしさというロマンを感じていたのは、きっと私だけではあるまい。レバーを引けばロボットがパンチを繰り出し、ボタンを押せばミサイルが発射される。それが、「アレっ?!先週そのボタンはミサイル発射のボタンだったのでは…?」といった些細な行き違いは御愛嬌…というか、ロマンの前には目をつぶれれる範囲、子ども心には十分すぎるくらいの説得力があった。


 しかし、時を経て、視点が成熟してくると、こんな疑問が浮かんでくる。


 その操作、ほんまにしてるの?


 ミサイル発射は分かる。ボタンを押す、それで飛ぶ、納得できる。だが、逃げ遅れた子犬をそっと拾い上げるような細やかな動作を、あの操縦席のレバーとハンドルでどうやってやるのか? という疑問がふつふつと湧いてくる。


「え? それ、どのレバーで操作してるの?」

「どうやってその指先の繊細な動きを再現してるん?」


 ここに、操縦という表現と、実際の動作とのギャップがある。


 これは、ある意味で「特撮ロボットの限界」であった。あくまで見た目や動作の結果だけが描かれ、操縦のプロセスそのものが省略される。つまり、操縦している“っぽさ”はあっても、本当に操縦している実感までは描ききれていなかったのである。


 もちろん、そこに目くじらを立てるのは野暮だろう。だが、後に登場するアニメ作品、とりわけガンダムが描いた「操縦するとはどういうことか」という描写のリアリズムが、ここでの曖昧さを埋めに来ることになる。


 その意味で、マッハバロンや大鉄人17が生み出した“疑問”こそが、ガンダム登場の土壌だったとも言えるのではないか。


 つづきます…

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