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結城弘子と西野光輝

 美術室のある棟の階段の踊り場で結城弘子は西野光輝から質問攻めにあっていた。


「結城って遠藤の彼女なの?そんな噂を聞いたんだけどどうなの?」

 

 世間話から回りくどく話題をコロコロ変えられ、核心の質問まで10分は要している。いいかげん無駄な時間を使わされた。結城弘子はいつもの無表情に偽物の笑顔をあとから被せて返事をした。


「恋人じゃないわ。全然好きじゃないし、男として全く魅力ないし」


 遠藤、遠藤智和。

 身長160センチ(成長は止まったと思われる)オタクで帰宅部で成績は中の中。運動はしない。マラソン大会は後半歩いていた。女子からは男と扱われていない。ただ、家庭は少し裕福ですこし金回りがいい。


「やっぱりそうだよな。遠藤なんてな。じゃあさ、今度・・・」

「でも多分遠藤智和と結婚するんじゃないかなーー」

「は?」


 美人な結城弘子がフリーだと確信して西野光輝はデートに誘おうとしたところに爆弾発言だった。

 西野光輝には納得できなかった。あらゆる面で優秀で勝ち組確定な結城弘子が一番ダメなやつと結婚するというのだ。しかも恋愛感情はない。

 目の前の芸術品が遠藤智和のものになる?あんな根暗ボッチの?


「ちょっと待った!それどういうことだよ、説明して。じゃないかなってしないんだよね。てか、しないほうがいい!」


「幼児のころの約束ってやつだよ。誓いの指切りまでしたんだ。そうそう無碍にはできないわ」

「忘れてるし無効だよ!」

「あら、私ははっきり記憶してるわ。向こうも覚えてると思う。本人に聞いてないけど」

「無効、無効。結城はもっと他の人が似合うって。まさか親の決めた婚約?」

「親は覚えてると思う。一緒にいたしね。別に結納したわけじゃないし婚約もしてない。そもそも結婚の意味もよく理解してなかったし。ただ指切りしたんだよね。迂闊だったわ」

「結城、マジあいつはやめた方がいい」

「私もそう思う。きっと初夜なんてベロンベロンと気持ち悪い迫り方してくる。下手通り越して痛キモいセックスだわ。きっとおっぱいが腫れるわあそこが痛いわで最悪になる」


 美術作業用の少し汚れたTシャツを着たまま開いた窓に背中を預け、外に顔を出し空を見た結城弘子。西野光輝には結城弘子の形の良い胸が見せつけられている。爆乳でもなく貧乳でもなく丁度いい大きさ、いや、黄金律といってもいい。そのままたっぷり1分も空を見上げる結城弘子。西野光輝が手を前に出しそのまま下ろせば触れる距離。西野光輝にとっては突然始まった苦悩の時間。触りたいが触ってはいけない。触っても触らなくても後悔する。


「ふう」


 結城弘子が背中を起こし戻ってきた。

 西野光輝は欲望の行き場を失った。


「偉いわ。我慢したのね。紳士紳士」

「お、おう。当然だ」


「もったいなかったわね。自慢の胸よ。見せてあげないけど」

「あ、ああ、結城は綺麗だな」

「味も最高よ。井上より真島よりもね」

「お、おう」


 結城弘子は右手で自身の胸を持ち上げて・・・落とした。

 西野光輝は試されてたと直感した。そして結城弘子の胸の質量が結構ありそうだということも目の前で見せられた。

 そして後悔が消え安堵にかわる。

 手を出さなくて良かったと。


「いっそ、西野が何かやらかしてくれれば遠藤智和と結婚しない道もあったんだけどね。きっと色々モメるし、苦労してもらうことになるけど」

「いや、つまり、あの、なんていうか・・」


 西野光輝には1時間前までは欲しかった女が今は危険物にみえる。

 あそこで手を出していたら。自分はどうなっていたのか?

 この女体に辿り着けるが何かを奪われるのでは。

 この女からは手を引いた方がいい。遠くから眺めてるだけで十分だ。この沼は危険だ。


「ふうん。この意気地なし。そんな西野には罰よ。私を生殺しにしたんだから」


 西野光輝には結城弘子が何を言ってどこまでのことを指していたのか分からなくなった。そして何を怒っているのか。

 物凄いことだったのか些細なことだったのかもわからない。手を出して欲しかった?

 そして意味不明な「罰」という言葉。


「せえのっ!」


 ぱあん!

 強烈で美しい平手打ちが西野光輝の頬に炸裂した。

 ぐらりとよろめくも転ばなかった西野光輝は立ったまま意識を手放した。


 細目で俯く西野光輝の耳元に何かを囁く結城弘子。

 そしてうつらうつらした西野光輝と結城弘子は指切りをした。








「帰るわよ」

「はい、結城様」

登場人物

・西野光輝・

クラスで2番目のイケメン クラスで2番目のチャラ男 クラスで2番目の成績 


・遠藤智和・

幼い日に結城弘子と結婚の約束をしたモブ なろう系小説の主人公にありがちなオタク 人生一度も女性に好意を持たれたことがないことを本人は知らない それは結城弘子も含む

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