結城弘子と井上華と他と他
作者生きてます。
「全くセンスないわ」
結城弘子は井上華から取り上げたスマホのフォトギャラリーをスクロールする。他人のスマホを見るなどやってはならないことだが、躊躇わずどんどん下げる。当の井上華は北川みそらに連れられて強制行水させられてるはずだ。
井上華の自撮り画像が大量にあるがどれもみな『ただの自撮り』だ。裸が見れるだけの芸術性も奇抜さもユーモアもなにもない。確かに自撮りで美しさを極めるのは難しい。続けて過去の普通の画像もみるがこれも凡庸。井上華の撮影センスは皆無だ。ついでに言えばこの画像を撮らせて確認してオッケーを出す市川正人も同様だ。過去作なら市川正人自身が撮った写真もあるだろう。だが壊滅的だ。これでは井上華の裸体を確認できるだけで・・確かに見たい人にはそれだけでご褒美だろうが、知らない第三者からみればただの・・・だ。確かに未成年女子の写真としては価値があるだろうが井上華の価値を表していない。
このR18画像を何に使うかの説明は井上華から聞いていないが、結城弘子には全てお見通しである。そして結城弘子はこの美しくない芸術作品に爆発寸前である。
「クレーン!」
突然喉を切り裂くような大声出す結城弘子。
さっきエロ漫画家が呼んでも来なかったクレーンを呼びつける。結城弘子はクレーンの居場所を確認などしていない。確証もなくクレーンを呼んだ。
「お呼びで。総司令」
廊下側のドアからスッと入ってきたクレーン。そんなところにいたのかよ。立ち振る舞いはまるで上級士官のような美しさがあるが着ている服がこの学校の男子用ジャージ(長袖)である。夏なのに。多分誰かの置きっぱなしのものをパクったのだろう。学校の生徒に溶け込むつもりなのだろうが白人顔金髪では無理がある。
「市川を確保しなさい」
結城弘子はクレーンに命令した。この言葉に『命令』という単語は含まれていないが二人の間では命令であり任務であるとの共通認識だ。
「これを」
結城弘子は自身のラフ画用ノートの1ページをクレーンに見せる。それはボールペンの線画。机らしきものの上に仰向けに置かれてる井上華を立っている市川正人が足の間に割り込み腰で押している絵。
市川正人についての手がかりとして見せたのだろう。絵の中の二人は服を着ていない。だからといって裸が細かく描かれているわけでもない。おおまかな下絵といった感じ。しかも顔も髪の毛も省略されている。
だがさすがは、神絵師の結城弘子。ラフ画なのにとんでもないエロさを洪水のように放出させている。
しかしこの絵の資料的情報量があまりにも少ない。
だが。
「この男、さっき校外に居ました。ではすぐに」
「どこかに格納しておいて。まだ連れてこなくていいわ。あと傷はつけないで」
「行きます」
また廊下側のドアから去るクレーン。
一部始終を脇役として結城弘子のやや後ろから見ていた西野光輝は新たな結城弘子の僕に最初は嫉妬したが、あの絵で人物を特定できる謎能力に驚いた。しかも過去の記憶では市川正人は危険人物。それを確保しろ、ではする。という迷いのない二人の認識。このクレーンという女は相当強いのだろう。西野光輝の嫉妬心が一体何に働いているのか。主の結城弘子との関係への嫉妬と本人は思っていたが、それだけではない。クレーンが女性なのにイケメンすぎるのだ。しかも主の役に立つ強さ。
それはさておき、西野光輝は今の所仕事がない。窓際で立ってることにした。
「さてと」
クレーンが去った後、ノートを閉じた結城弘子はこめかみを抑えた。問題が多すぎる。
井上華の現状は問題だらけ。何をしようとしたか、何を企んだか、何をゴールとしたか。だが本人の夢と希望に全然近づいてない。
井上華は失敗をした。
チャンスは有った。とてつもない大きなチャンスと武器。
しかし失敗した。
「説教が必要ね」
結城弘子は確かにそう言った。
それを聞いた西野光輝は結城弘子が井上華に説教するのだろうか?と思ったが違った。
「あのクソババア!」
相手はエロ漫画家だった。
ここで結城弘子が出したのは第4話ででてきた絵です。




