結城弘子と魔女のサービス
夏が終わってしまう
「話は聞かせてもらった。オレの出番だな!」
美術室の窓ががらがらと開き、エロ漫画家がそのアルミの縁につま先でしゃがみ乗りしていた。似合ってない女子用スカートからパンツが見えているが全くありがたくない。なんで窓から来るんだよ。
「来なくていい・・」
心底嫌そうな顔をする結城弘子。
一方、北川みそらの顔がぱあっと明るくなる。北川みそらにとってエロ漫画家と会った時はいいことしか起きていない。ピンチを救ってくれたし、バイト代くれたし(実際に渡したのは結城弘子)、西野光輝のエロ絵くれたし。(有料)
「せんせ〜」
まるで狂信者のようにエロ漫画家に向かう北川みそら。
今の窮状を抜け出すアイデアが聞けるとわくわくしている。
結城弘子が言った西野を一晩貸すというのは絶対にいやだ。
「元気そうだな北川」
「健康だけが取り柄です〜」
「また碌でもないことを」
「何の話です?」
「作戦としてはこうだ、北川の妹を性の頂点に立たせればいい」
自信満々に話し出すエロ漫画家。
結城弘子は聞く前から呆れ返っている。
「どういうこと?」
「この間やったのと同じだ。こんどは妹をモデルにしてエロ漫画を描く。それを中学男子の間にちょろっと放流する。オレと結城が描けば超抜けるぞ。攻撃力凄すぎて中坊なんてひとたまりもないぞ。妹をセックスシンボルにおしあげるのだ。ちょろっと放流といったが、男のエロ情報網と探究心を舐めてもらっては困る。あっという間に拡散されるぞ。そりゃもう凄い勢いだぞ。ぼっちですらたどり着くくらいだ。そして漫画とよく似た女が現実にいたら注目の的だ。モテるぞ!」
「なんか違う」
「違わねーって。男が女に近づくのはエロ目的だしな。エロ要らないなら普通の男友達で充分だし」
「そうかなあ。もっと心と心が・・」
「いやそうだよ。そんでもってエロに独占欲が追加されたら愛だ。その後、性欲切れたら愛から義務になり、さらに進むと残務処理になるんだぞ。ともかく妹をモテさせればそのうち数人は愛にまで発展するだろう。あとはゆっくり妹が選べばいい。これで妹も落ち着くだろう」
身も蓋もない愛情論だ。
「いや、それは・・」
流石にこれには北川みそらもおじけずく。
この二人が描けばとんでもなくハイクオリティな抜き漫画が出来上がる。しかし、モデルは実の妹で中2。これはやばすぎる。完全に法に触れている。(自分のことは棚に上げている)姉として家族としてちょっとこれは。
「それこそ一生の記念にしていいほどの作画にしてやる。なにせ今回は結城に女描かせるからな」
「え?」
北川みそらは驚いた。勿体無い、それは驕りすぎだと。妹ごときにに神絵師結城弘子を起用するのは勿体無い。あんなの4コマ漫画の絵程度でいい。妹が姉より美しく描かれてしまう!
「北川、今、失礼なこと思ったろう」
「えっ、いやあその・・」
「まあ、仕方ない。今回は男をオレが描かなきゃならないんだから。結城はキモオタが描けないんだ」
「描くって・・・受けると言ってないし・・」
どうも話がおかしい。
北川みそらは漫画について嫌な想像をした。
まさか、まさか。
「女子中学生ものならキモオタおっさんに犯されるのが定番だろう」
「ちょ、キモオタって!」
「モデルはこの間の変態トリオで賄おう。脅せばタダだし」
「だめ!だめ!それはだめ!」
流石に北川みそらは大反対。
よりによってレイプモノなんて絶対だめ!相手がキモオタなんてもっとだめ!キモオタと4Pなんて酷すぎる。もしその漫画見たら妹は寝込むに違いない。
一方、エロ漫画家は短期間だけ漫画見せてから放流データ削除し今月分の短編原稿にしようなんて思っている。
そしてエロ漫画家は窓の外にむかって声をかける。
「お〜い、クレーン!仕事だぞ〜」
「いないわよ」
結城弘子が低く答える。
どうやらエロ漫画家はクレーンを外に待機させてたようだったが・・(どうして外?)
「あの野郎遊びに行きやがったな」
「北川の妹の誘拐でもさせる気だったの?やめなさい。私描かないわよ」
「困った居候だぜ」
北川みそらはほっとした。
「クレーン」が何かは知らないが、とにかく作戦は止まったらしい。もし作戦が進んでしまったら妹の裸が世の中に晒されてしまう。それはあんまりだ。そういや妹の裸は2年くらい見てないなあとも思った。案外綺麗なんだろうか。
しかし、事態は別の方向へ動き出す。
がらがらと開く教室のドア。
入ってきたのは井上華だった。